「初音ミク」 を巡る冒険
近頃よく目にする「初音ミク」というのが、昨日あたりようやく、PC にアイドル声で歌を歌わせる「ボーカロイド」ソフトだと知った。
で、ekken さんが「初音ミクに魅力を感じないのは、流布している音のほとんどがカラオケだから」と喝破しておられる。そして、「(それとは)関係ないと思う」との指摘もある。
ekken さんは、"ニコニコの関連動画を見ても、(オリジナルらしい楽曲も数点あるようだけど)その多くは「ミクにhogehogeを歌わせてみた」というものばかりで、それを聴いても「コンピュータが歌うヘタクソなカラオケ」程度にしか感じなかった" と書かれている。
そして、"初音ミクが非オタク層を含む多くの人に「これはすごい!」と思われるようになるためには、ヴァーチャルアイドルカラオケごっこからの脱却、つまり、優れたコンポーザーによる多くのオリジナル作品が必要なんだと思う" と指摘されているわけだ。
それに対して、「それは仕様?」の名鏡恵 さんは、"程度の低い音楽や既存曲のカラオケでミクを『調教』することが、傍から見ていかにくだらなく馬鹿げたことであったとしても、数年後にはその技術は何かの礎になっているはずなわけですよ" と、プログラマらしい見地から反論しておいでだ。
で、ここらで私の考えを書かなければならない順番なのだろうが、残念ながら、私は「初音ミク」というソフトを触ったことがないので、どのようなメソッドでどの程度のことができるのか、よくわからない。それでも、少なくとも、カラオケに合わせて歌わせる程度よりはるか上のレベルのことができるものとは、想像できる。
既に、ekken さんのおっしゃる「優れたコンポーザー」(あるいは、優れたアレンジャー)が出現して、単なるカラオケ以上のオリジナル作品を創造してもいい段階に達しているのだと思う。要するに、「仕組みはできて、コンテンツが足りない」という状況なのだろう。
私は自分のサイトで、出身高校の校歌など(応援歌や旧制中学時代の校歌も含め)をアレンジして、器楽曲として聴けるようにしてある(参照)。旧制中学時代の校歌なんて、ずいぶんダサダサの歌だと思っていたが、弦楽四重奏風にアレンジしたら、結構聞けるので、我ながら驚いている。
この試みで、器楽曲としてあるのは、私の持っている音楽ソフトの限界で、ボーカルまでは入れられないからだ。ボーカルを入れられるソフトがあれば、ぜひ使ってみたいと思っていたが、「初音ミク」ちゃんの声では、申し訳ないけど、興醒めなのである。
せめて、混声四部合唱風のボーカルが入るようなのがあれば、ちょっと高くても使ってみたいものだ。さらに、ロバート・ジョンソン風とか、エラ・フィッツジェラルド風とかの歌ができれば、もろに使ってみたい。
「追憶の荻窪ロフト '75」という記事で告白しちゃったので、古くからの読者はご存知だろうが、私は元、シンガー・ソングライターで、結構評判のよかったオリジナル曲もかなり持っている。で、自分の曲のカラオケを作ってみようとも思っていたのだが、いっそ、ロバート・ジョンソンの声で歌まで吹き込んでしまってもおもしろいだろう。
それだけじゃなく、エラ・フィッツジェラルドの声で、超絶スキャットなんかが作れたら、ものすごく嬉しいかもしれない。だがフェイクを効かせるのは、なかなか大変だろう。そうなると、今の段階ではクラシック風とか、唱歌風とか、グリークラブ風とか、せいぜいアイドル風とかが現実的なところなんだろうなあ。
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コメント
お久しぶりです。エントリを拝見して、オタクとして何か一理屈捏ねたいと思ったのですが、いざ考えてみるとたいしたことは思いつきません(^^;
が、オリジナル曲が少ないことに幻滅を感じる人が多いとしても、それは本質的に「初音ミク」に帰せられる問題ではない、とは私も思います。これは世の中そうそうクリエイティブな人ばかりではない、というだけのことで、従来の MIDI と同じです。
問題はあの声ですよね。
普通に考えたら複数の声質を、それも、ソプラノとかアルトとかテノールとかから自由に選べるようなソフトを作ると思うのです。ところが現状ではそれは不可能なので声は一種類のみ、よーしそれなら開き直ってこれはバーチャルアイドルなのだということにしてしまえ、ということで「初音ミク」が生まれたのでしょう。
単なる「女声」生成ソフトとしてなら全く売れなかったであろうものを、パッケージの絵一枚(これがまたオタクの琴線に触れるのですよ(笑))で大化けさせたのですから実に上手いマーケティングです。
ただ、やっぱり、どれもこれも同じ声というのが、どうもね~。声自体もやや不自然ですし。
将来この辺の技術的課題がクリアされてくると真に魅力的な製品になるのでしょう。
投稿: Adrienne ◆HI8ebVe8lo | 2007年10月23日 02:54
Adrienne ◆HI8ebVe8lo さん:
>単なる「女声」生成ソフトとしてなら全く売れなかったであろうものを、パッケージの絵一枚(これがまたオタクの琴線に触れるのですよ(笑))で大化けさせたのですから実に上手いマーケティングです。
なるほど。
今のところは、ソロの歌声というのが限界なんでしょうね。
コーラスを作ろうとしたら、結構高いものにつく感じですね。
(うまくいけば、そのうちどんどん安くなるかもしれませんが)
どんどん普及して、値段もこなれて、自分専用のバックコーラスなんてのが作れたら、かなりうれしいかも。
(レイ・チャールズの "I Can't Stop Loving You" みたいな)
投稿: tak | 2007年10月23日 13:04