アパレル業界のしがらみ
衣類を購入する消費者は、自分の購入するブランドにしっかりこだわっている層と、それには全然こだわらず、その時々で気に入ったものを買う層に大別される。
ブランドにこだわっている層は、話がそれほど込み入らない。彼らの多くは「プロの消費者」で、ポリシーがしっかりしているからだ。
ところが、その時々で、ぱっと見で買ってしまう消費者というのは、時々話が面倒になることがある。私はアパレル業界の仕事をメシの種にしているので、いろいろな話を耳にする。
衣料品の内側に縫い付けられているケアラベル(洗濯方法などを表示したもの)には、製造メーカー(または、所属する団体)の名前と連絡先(主に電話番号)が明示してある。クリーニング店などで何か問題が発生した場合には、そこに連絡してどちらに責任があるかを確かめたりする。
で、この電話番号を頼りに電話してきて、「とても気に入っているので、同じものを買いたいんですけど、直接送ってください」なんてことをおっしゃる消費者が案外多い。しかし、それは実は無茶な話だ。
無茶だという理由は、2つある。まず、アパレル・メーカーは原則として消費者に直接小売をしないということが挙げられる。消費者だって、メーカーに直接注文するなんておかしいと思わないだろうか。例えば松下電器に「ウチに直接冷蔵庫送って」なんて注文はしないろう。洋服だと平気で注文してみるというのは、なかなか興味深い現象である。
直営店展開を主力にするところを別にすれば、アパレル・メーカーが直接消費者に(おおっぴらに)小売りしてしまったら、主力顧客である小売店の頭越しに商売してしまうことだから、怒られてしまう。それに、消費者からの 1着ずつの注文にいちいち対応していたら、効率が悪くて仕事にならない。
中には「直接だから、安く売ってほしいいんですけど」なんていうあつかましい消費者もおいでだが、いちいち在庫を確認して、1着だけピックアップして、きちんと箱詰めして、宅配便の伝票を書いて、代金回収のリスクを考えたら、逆に、多少高く売っても元が取れない。
無茶であるということの 2番目の理由は、「3年前に買った服がとても気に入っているんだけど、擦り切れちゃったから、同じものを送ってもらいたい」なんていうオファーが多いことだ。
アパレル・メーカー、とくに婦人服メーカーは、毎シーズン新作を展開して、売れ残りはできるだけ早めに処分してしまう。だから 3年前の商品なんか、残っているはずがないのだ。そんなに前の在庫をいつまでも残しているようでは、利益が出ない。
「好評の商品だけ、たくさん作ってたくさん在庫してくれればいいじゃないの」という消費者の声もある。もっともなことである。しかし、メーカーとしては、売ってみないとどれが好評かはわからない。わからないものを見込みで大量に作るというリスクはおかしたくない。
「好評な商品は、次のシーズンにもまた作って売ってくれればいいじゃないの」という声もある。しかし今年好評だったからといって、来年も売れるとは限らないのが、ファッションの怖いところなのである。「私がまとめて 200着買ってあげるから、また作って」とでも言ってもらわない限り、生産にはなかなか踏み切れない。
というわけで、アパレル業界というのはある種の矛盾を含んだ業界なのだ。
何しろ「既製服」なのである。どうしても気に入ったものを長く着続けたいという向きは、カスタムメイドで作ってもらうしかない。既製服というのは、そうした細かい要望に応じない代わりに比較的安い値段で提供されるのだと、割り切ってもらうしかないのである。
ここでふと気がついた。「私は Windows XP でいいのに」 と言っても、ほぼ自動的に Vista を押し付けられる業界に、アパレル業界はどこか似ている。ただ、アパレル商品は選択の幅が非常に広いという救いがあるだけ、ずっとましなのだが。
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コメント
私は海外に行く機会が多かったので海外で衣類や靴を買いました。
特に靴は必ず買いました。
と言うのも、私は大男で、日本ではなかなかサイズが見つからず、あっても肥満体用だったり(泣)で、海外に救いを求めたのです。(笑)
靴なんか、高校・大学時代はもっぱら大男の多いバスケット・シューズを履いていました。
今でも靴はだめ。(27センチまでが大半)
だから日本ではブランドにこだわるなんて夢のまた夢。
でも不思議に昔のVANジャケットはサイズが(少なかったが)ありましたね。
それに最近でいえば、UNIQLOは、「XL」サイズが必ずあるので、座布団5枚(笑)、ほめてあげたいところです。
最近は米国の通販「L L BEAN」で買ったりしています。
投稿: alex99 | 2007年10月11日 11:41
alex さん:
私も、たかだか 180センチをちょっと切るという身長でしかないのに、とくに若い頃は服の選択肢がものすごく狭くて、不満でした。 (当時は、180センチあったかも。今はちょっと縮みました ^^;)
米国は人種の坩堝ですから、さすがにサイズ展開はしっかりしてますね。
>でも不思議に昔のVANジャケットはサイズが(少なかったが)ありましたね。
まあ、そういう理想的な商売しすぎて潰れたのかも (失礼)。
投稿: tak | 2007年10月11日 16:39