鳩山さんの 「世間話」
鳩山法相の相次ぐイレギュラー発言が、ネットで話題だ。「友人の友人がアルカイダ」とか、「秘書時代はペンタゴンにご馳走になってた」とか、なかなか面白い人である。
国際的なセキュリティや情報収集の重要さを強調したいあまりの発言と、私は受け取っているのだが、それにしてもなあ。
「アルカイダ」発言の真意は、改正出入国管理・難民認定法の施行に関連して、日本に入国する 16歳以上の外国人の指紋採取義務づけの重要性を強調することだったらしい。さらに、「秘書時代云々」は、ペンタゴンは、首相秘書を毎月接待して情報収集していたのだから、その手法を日本も見習えということのようだ。
要するに、日本はもっと安全保障やそれに関する情報収集に力を入れなければならないという主張を、彼なりの「具体性」をもって強調しているのだと思う。これだけ具体的なことを言えば、説得力があるだろうと。
うむ、確かに好意的に見れば、ちょっとだけ「具体的」だ。なるほど、日本はセキュリティに関してのほほんとしすぎている。それを認めるにやぶさかではない。
しかし日本がこの問題でのほほんとしすぎているというのは、それはずっと前からの「常識」みたいなもので、なにも鳩山さんの「個人的体験」を持ち出してもらわなくても、わかっていることである。
元々わかっていることに、より「説得力」を付け加えるために、自身の「具体的」な体験を話されたのだろうが、この「具体的」体験というもの自体が、なにぶん「世間話」的なものであるために、かえって「怪しさ」を醸し出してしまうという逆効果を生んでしまった。
それどころか、自分が米国のスパイだったことを言外に認めるという結果にまでなった。うなぎや天ぷらぐらいで、首相の私設秘書から話が聞けるのだから、ペンタゴンにとってはずいぶん安上がりな情報収集だったろう。
ちなみに日本の政治家の秘書の中には、うなぎや天ぷら程度で外国に情報を提供するものがいたということで、多分、今でもいるんだろう。最近は、本場の中華料理が主流かもしれないが。
「説得力」を増すための「具体的」な話が「世間話」レベルのものであっても、それが元々「世間話の一環」として語られるならば、とても話が膨らんで面白いことになったりする。そういうの、私なんか大好きなのだが、それが政治の場で語られるに相応しいものかどうかは、ちょっと立ち止まって考えてみなければならない。
政治に世間話を持ち込むのは、大衆的共感を得るのになかなか効果的な場合があったりもする。しかし、それもネタによりけりだ。
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コメント
なんか「説教強盗」という言葉を思い出しました。
いいかい、私の友人の友人にアルカイダがいるくらいなんだから、テロリストはどこにいるか分からないんだよ。だからちゃんと指紋採取しなきゃダメ! それとね、ちょっと接待されたからって外国の手先になっちゃう首相秘書官だってね、ほら、私みたいに実在するんだから、そういう情報収集を日本もやらないといけないし、逆にそういう馬鹿な首相秘書官がいないか、気をつけなきゃいけないんだよ?
投稿: 山辺響 | 2007年11月 2日 10:26
山辺響 さん:
>なんか「説教強盗」という言葉を思い出しました。
なるほど。そんなイメージも。
風俗に行って、風俗嬢に 「こんな商売から早く足を洗いなさい」 と説教をする人もいるらしいし。
こういうのを総称して、「クニオる」 という動詞にするといいのかもしれません。
投稿: tak | 2007年11月 2日 12:04
鳩山さん、東大法学部の銀時計組だそうだけれど、どこか、脳内メカのボルトがゆるんでいる人ですね。
でも、人物としては、たぶん好人物なんでしょうね。
投稿: alex99 | 2007年11月 3日 14:20
alex さん:
「銀時計組」 という言葉、初めて知りました。
Wikipedia によると、
「東京帝国大学では1899年から1918年まで授与制度が続き……」 とありますから、鳩山さん、実際にもらったわけじゃなさそうですね。
要するに、帝大の成績優秀者というシンボリックな意味合いなんでしょうか。
>でも、人物としては、たぶん好人物なんでしょうね。
私も、それは思いました ^^;)
投稿: tak | 2007年11月 3日 16:34