« 「日本三大」 検定にチャレンジしてみた | トップページ | 年の瀬に、健康について考えた »

2007年12月30日

「正しい和食」 その後

昨年の 12月は、農水省による 「正しい和食認証制度」 の話題に花が咲いていた (参照 12)。予算が 2億何千万円だかついたはずなのに、あれから一体どうなったんだろう?

そう思って調べてみたら、どうやら今年 3月頃に「認証制度」から「推奨マーク制度」にトーンダウンして落ち着いたようなのだ。

農水省のサイトで調べてみると、「日本食レストラン認証有識者会議」というのが、平成 18年 11月 22日の第 1回目を皮切りに、今年 3月 16日まで、3回開催されている。面白いことに、第 3回目は、名称が「日本食レストラン推奨有識者会議」に変更されている。

米国からは「スシポリス」との猛反発を受け、国内からも「税金使ってやるほどのことか」とか、いろいろな疑問の声が上がったことを背景に、4ヶ月足らずのうちに「認証」を「推奨」に格下げして落としどころを作ったようなのだ。

有識者会議の議論の模様は、「第1回海外日本食レストラン認証有識者会議における論点別にみた発言の概要」という報告書をみるだけで、想像がつく。要するに、いろいろな意見がバラバラ出過ぎて、まとまりがつかなくなったもののようなのだ。

「実は日本でもきちんとした日本料理の定義はないし、認証自体は難しい」なんていう、そもそもぶちこわし的な意見が冒頭で出されており、さらに、「国際問題にならないように留意したい」という慎重意見もある。

また「現在の日本食のトレンドがフュージョンであるとすれば、それを抑えるような認証はさけるべき」というちょっとペダンチックな指摘が出される一方で、「認証にはある程度、権威を持たせるべき。中途半端はよくない」というかなり強硬な意見もみられる。

というわけで、有識者懇談会は第 3回目の会議終了と同時に、認証制度をマイルドにした推奨計画に変更するよう松岡利勝農水相に提言し、使命を終えたもののようなのである。

この方向性は、第 2回目会議を終えて、第 3回目の予定を決めた際には、もう見えていたのだろうね。事前に有識者会議の名称が変わっていて、会議終了と同時に提言を行い、プレス発表までしちゃってるぐらいだから。(日本語では、こういうのを「できレース」という)

共同通信によると (元記事は削除されてるので、こちら から孫引きさせていただいた)、

提言によると、推奨マークは各国の日本食レストランから申請を受けて審査し、合格すれば交付する。(1)コメ、みそなど主要な食材 (2)調理技術 (3)味付けや盛り付け-などを総合判断する。

ということになったらしい。いつの間にか「日本食レストラン海外普及推進機構 (JRO)」なんていう組織が港区芝公園の一等地に設立されていて、「海外の日本食レストランに対し一定の推奨を行う取組」を開始している。ああ、また役人の天下り先が一つ増えている。

まあ、それはそれでいいけど、実際に「推奨を受けたい」なんていう申請がどのくらいあがってくるものか、私ははなはだ疑問である。

本当にどこに出しても恥ずかしくない日本食レストランなら、わざわざこんな「推奨マーク」なんてもらわなくても、既に十分な「のれんの力」を持っている (船場吉兆のことは、ちょっと忘れていただきたい)。他の二流店と同じマークなんて付けたら、その他大勢と同列視されかねないから、「そんなものいらない」ということになる。

オートクチュールのブランドが、「ウールマーク」なんて付けないのと同じことだ。

実際には、このマークを欲しがるのは基準すれすれの二流店だろう。そうなると、マーク自体の「ブランド力」が、それほど大したものじゃないということになるのは目に見えている。要するに「あんまり意味ないよね」ということだ。

イタリア料理とタイ料理では、こうした認証制度があるらしいのだが、そんなものが実効的に機能している例を、私は 1件も知らん。あるいは、私が知らないというだけなのかもしれないが、私のような者でも知っているようでなければ、そもそも意味ないだろう。

こういうことは、ミシュランみたいな民間活力に期待する方がいいような気がするがなあ。(私は別にミシュランびいきってわけじゃないけど)

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

|

« 「日本三大」 検定にチャレンジしてみた | トップページ | 年の瀬に、健康について考えた »

グルメ・クッキング」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

 うまくいきませんね。

 元々、言葉とイメージばかりが先行で、農水省お役人が(旅行代理店、出版社等と)どんな契約をしてくるか、というところが見所と、考えておりました。

 必要以上に中国産農産物を危険視する割には、相変わらず中国産が流通している中で、今更日本農産物の輸出促進もあったもんじゃない。

 海外へ“スシポリス”を派遣する必要性よりも、国産野菜が安心して安価で手に入る“しくみ”を作っていただきたい。

 なんか、落ちがないなぁ…。

投稿: オッチャン | 2007年12月30日 12:39

オッチャン:

えぇと、大きな声では言えませんが
(私も役所との付き合いがあるんで ^^;)

所詮、お役人のやることですからね。

投稿: tak | 2007年12月30日 13:19

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「正しい和食」 その後:

« 「日本三大」 検定にチャレンジしてみた | トップページ | 年の瀬に、健康について考えた »