「偽装表示」 を巡る冒険
オッチャン (これは普通名詞でなく、固有名詞の 「オッチャン」)が、メルマガで「コンプライアンス」について書いている(参照)。
コンプライアンスは、近頃「法令遵守」と訳されていて、企業がこれをおろそかにすると、大変なペナルティを課せられるというのは、一連の食品不祥事の例をみればわかる。
それにしても、食品関連の偽装表示はめちゃくちゃ多い。シューマイの崎陽軒の「原材料表示ミス」なんて、「使用量の多い順に原材料を表示するよう定めた JAS 法の規定を知らなかったことによる誤り」なんて言っているが、そんなこと食品メーカーが知らないわけなかろう。
素人の私だってその程度のことは知っているからこそ、乾麺のそばを買うときは、原材料表示で「そば粉、小麦粉」の順に書いてある製品を買うのである。これが逆だと、単に「そば粉がちょっと混じった色付きうどん」になっちゃうからだ。まあ、表示そのものが信じられるかどうかは別として。
崎陽軒は、タマネギと干しホタテ貝柱、小麦粉とグリーンピースの表示順を逆にしていたらしいが、そりゃ、その方が「見た目がいい」から、わざわざそうしていたに決まっている。一昨日のエントリーで紹介した「ラクーン」の表示で 「タヌキ隠し」するのと同様のメンタリティである。
しかしこうした 「姑息な偽装表示」(「姑息」の原義を十分知った上で、敢えて使う: 参照)と比べて、一連の消費期限(あるいは賞味期限)の偽装に関しては、私はちょっと割り切れないものを感じてしまうのだ。
あれらは、消費期限(あるいは賞味期限)の過ぎた食品を、「もったいないから」と、再利用しているのである。美しきとは言わないが、リサイクルなのである。昔ならそんなことは当たり前にしていた。
この背景にあるのは、「あえて早めの消費期限(あるいは賞味期限)を表示しがち」という業界の体質である。もし何かあって、消費者から 「味が変わっちゃってる」なんてクレームが来たらうっとうしいから、安全のため「大事をとって」早めの期限を表示しちゃうのである。
アパレル・メーカーが、水洗いしても大丈夫な製品に、敢えて「ドライクリーニング」という表示をするのと同じである。それで、ドライ表示でも水洗いできちゃうという 「エマール」 なんて洗剤が登場するのである。表示なんて、大体において「建前」が 90%だと思えばいいので、実は別にエマールでなくても洗えちゃったりすることもある。
で、食品メーカーは当事者だけにそうした事情がわかってるから、「どうせまだまだ安全なんだから、捨てるのはもったいない」気がして、ついついリサイクルしてしまう。つまり「安全のために大事をとった表示」が逆に自縄自縛要素となって、「危険でややこしいこと」に手を染めてしまうのだ。ああ、ばかばかしいなあ。
それだったら「大事をとり過ぎない表示」というのをすればいいと思いがちだが、それはそれでなかなか匙加減が難しい。世の中の仕組みって、本当にうっとうしいのである。
でも、偽装表示された「白い恋人」や「赤福」を食っておなかを壊したなんてことは聞いたことがないから、これまでの表示は、多分、必要以上に「大事とりすぎ」だったんだと思うがなあ。
それからオッチャンの指摘しているように、人というのは、他人の罪はとがめても、自分のいろいろなイリーガル行為(スピード違反とかね)は棚に上げてしまいがちである。反省。
ただ、道路の制限速度、あれこそ「不必要に大事とりすぎ」である。だって、10キロぐらいは時速オーバーしないと、後ろから煽られて、かえって危ないのが実情なんだもの。
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コメント
takさん、車の制限速度だけはちょっと別にしていただきたいと思います。
走っている自分の安全というより、道路にいる全ての人や車両に対する安全を考えたいと思います。
初心者も走るわけですし・・・。
それから、賞味期間は造って売る都合上は、長い方が良いに決まっています。
賞味期限を過ぎたら商品価値がなくなるからです。
でも、何かあった時に責任をとらなくてはならないことを考えると、短い方が良いとなります。
そのジレンマがあるから、変な小細工をしたくなるわけです。
小さくて顔の見える商売なら、行き届いた説明をするのも簡単で、気が楽ですね。
投稿: Mikio | 2007年12月 1日 21:12
Mikio さん:
うぅむ、制限速度はかなり面倒くさい問題ですね。
例えば、周りに何にもない田舎の広い道路 (つまり、見通し最高) で、歩行者なんて 1時間に 2~3人かというようなところで、「なんで、ここが制限時速 40キロなんだ?」 と思うようなところもありますし。
逆に、生活道路といわれるような道では、たとえ制限時速が 40キロだったとしても、「ここで 40キロは、ちょっとヤバイかも」 と思ってしまうようなところもあります。
そういう道では、あえて 30キロぐらいで走ったりしますしね。
賞味期限というのも、それに似通った (似てないかな?) ジレンマなんでしょうね。
>小さくて顔の見える商売なら、行き届いた説明をするのも簡単で、気が楽ですね。
それが基本ですね。
音楽でいえば、武道館や東京ドームでライブをするというのは、やっぱりちょっと変なんじゃないかなという思いを、私は捨て切れません。
メジャーとか、ビッグビジネスとかいう世界には、入りたくないと思ってしまいます。
投稿: tak | 2007年12月 1日 21:40
暴論なのはわかっていますが、個人的には、アフリカ・北朝鮮で饑餓で死亡する人が、この瞬間にもどれぐらいいるか?と考えると、賞味期限・消費期限など、無くてもいいではないか?と思ってしまいますね。
生産日だけを表示しておけば、あとは消費者の判断と消化力?に委ねる。
それからリサイクル、大いに結構と。
社会が許さないんでしょうけれど、実害が出たこともないし、出ても大した事はないでしょう。
ファミレス・コンビニ・スーパー・ファーストフード店で出る残飯をあの人達に配ることが出来れば、世界の飢餓問題は解決するかも知れません。
しかし、船場吉兆のブロイラー → 地鶏はいけません。
これは、食材そのものを「騙って(かたって)いる」からです。
~~~~~~~~
>アパレル・メーカーが、水洗いしても大丈夫な製品に、敢えて 「ドライクリーニング」 という表示をするのと同じである。
私は長い間、ウールのスーツをドライクリーニングしていました。
母親が某大手クリーニング店に持ち込んだら、ドライクリーニングと決まっていたので習慣化していたのです。
ある時、英国でウールの衣類は、ドライをするとウールに含まれているリノリンが取り除かれてしまうことをしりました。
英国人はウールの背広をドライしないようなのです。
せいぜい、濡れたタオルで拭う程度らしい。
道理で、ドライをして返ってきた、高価な英国製の背広(私は日本ではサイズが無いので海外で、たいていはロンドンで買っていたのです)が、死んだネズミのようにぐったりとして、見違えるように!(笑)張りの無いものになってしまっていました。
もとの背広は、英国製らしいドレープのかかったシェイプをしていたんですが。
英国の田舎の牧場で、柵の鉄条網についていた羊の毛を触ってみると、ラノリンでベタベタ。
臭いも強い。
だから、ウールなんですよね。
背広達に悪いことをしてしまいました。
投稿: alex99 | 2007年12月 1日 22:28
alex さん:
この件に関する alex さんの暴論、個人的にはちっとも暴論と思いません。(世間では通らないでしょうけど)
ウールの背広に関しては、実は私も、シーズンごとにドライクリーニングに出すなんてことはしてません。
ドライクリーニングというものを、それほど信頼してませんので。ドライクリーニングの現場を見たら、きっとびっくりしますよ。(クリーニング屋さんの読者がいたら、ごめんなさい ^^;)
日本は高温多湿で汗をかくので、まったくドライに出さないってわけじゃないんですが、せいぜい 2~3年に 1度です。あとは、陰干しとブラッシング。
羊って、本当に脂 (ラノリン) だらけですよ。
羊を抱っこしてみると、それがよくわかります。(こっちまでベトベトになります)
紡績の前段階でまず洗毛をするので、ラノリンはかなり洗い流されてしまうんです。日本人は動物臭いのが苦手なので、日本の紡績はしっかり洗うみたいです。
そのくせ、イタリア製の高級ウーステッド (細番手羊毛) 生地 (洗いが足りないから? しっとりして上品な艶がある) をありがたがるんですから、ちょっと変といえば変ですけどね。
投稿: tak | 2007年12月 2日 01:40
遅ればせながら、オッチャンです。
alex さんの暴論、アタクシもちっとも暴論と思いません。
『ちょっと固くなった』とか、『あぁ、油が出ちゃったね』とか、次の調理でなんとかなるなら、各ご家庭でナントカしましょうよ。(えぇ、ホントに!)
昔、ウチの小僧がどっかの高原で“毛刈り”体験してきたとき、その記念で“毛”をもらってきました。本当にこんなんでウールになるのかしら、という変な感想を持った覚えがあります。(ラノリンですか!)
投稿: オッチャン | 2007年12月 2日 20:55