ヒラリーのイメージチェンジ
1月 7日の 「裏目に出ているヒラリーの戦略」 という記事に、alex さんが "ヒラリーはここで、発想の転換をはかって、
「みんなにいじめられている可哀想な女」 を演じればいいのに" といったようなコメントを寄せてくれた。でなんと、ニューハンプシャーではそれが功を奏し、ネバダでも勝ってしまった。
ヒラリーは、明らかにイメージチェンジをしているように見受けられる。これまでの「鼻につくほどスマートな女」というイメージに、「ちょっとエモーショナルな部分だって、持ち合わせてるのよ」というスパイスをまぶし始めている。
こういう感じに、アメリカ人というのはちょっと弱いのだよね。おかげで、ヒラリーの支持率はかなりアップしたようだ。さらにロサンジェルスのファーストフード店でタコスにかぶりついて見せて、今までのお高く止まったイメージをかなぐり捨て始めてるし(参照)。
問題のインタビューで「目を潤ませ、涙がこぼれないように上を向いた」(参照)と報道された場面にしても、ABC のビデオ "Teary Hillary" (「涙ぐむヒラリー」 それにしても、うまく韻を踏んだな)を見ると、決して上なんか向いてない。しっかりと相手を見てものを言っている。このあたりの自己演出は、さすがにうまい。
これまであまり強調していなかった「パーソナル」な思いの部分を表に出し、それに続いて、「大事なのは選挙ゲームじゃなくて、国や子どもたちの未来に関わること」と、自然に、しかも潤んだ声で、テーマを広げている。これはかなりうまいやり方だった。
このあたり、やっぱりこのオバサンは、どのように振る舞えば大衆に受けるかを知っている。ちょっとウルウルしちゃったのはハプニングだったとしても、それを咄嗟にうまく利用して、その後は十分に意識して振る舞っている。
さらに、件のビデオに引き続いて表示される "Hillary Won't Iron Your Shirt"(ヒラリーはあんたのシャツのアイロンかけなんかしないよ) というビデオでは、「俺のシャツにアイロンをかけろ」と叫んで演説の妨害をする父権主義者(?)の馬鹿オヤジが映し出されて、かえってヒラリーの点数を上げる結果になっている。
このおかげで、「チェンジ、チェンジというけど、その実体は何なの?」と、オバマ氏の痛いところを突いたヒラリーの演説と、アンチ・ヒラリーの馬鹿オヤジが総スカンをくらってしまうのが全世界に放映されちゃったし。
今月初めまでオバマに向いていた風向きが、はっきりとヒラリー方向に変わり始めている。
私は 1月 7日の記事で、「(ヒラリーは)今のうちに戦略を切り替えないと、民主党の指名を受けることすら難しくなる」と書いた。ということは、やや反語的ではあるが、この時点でヒラリーはまだまだ終わってしまったわけではないと、私は見ていたのである。
ところがその後、多くのニュースやブログで、「民主党はもはやオバマ氏で決定!」みたいな早急な論調が目立ったので、私は自分の書き方が少し甘かったのかと思ってしまった。しかし、米国大統領選挙というのは、ああやってセンセーショナルな報道を繰り返して煽るのが常套手段なのだね。
実際は、ヒラリーが素早くイメチェンを図り始めたために、私の慎重な見方の方が(現時点では)正しかったじゃないかということになる。というわけで、私の面目は保たれたが、しかしそれはそれで、本当はヒラリー嫌いの私としてはちょっと癪に障る。
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コメント
私のヒラリーへのアドバイス?が功を奏したのが口惜しい(笑)
多少、イメチェンしても、どうしても好きになれない
投稿: alex99 | 2008年1月21日 20:09
alex さん:
きっと、ヒラリーのブレーンの中に日本語の達者な奴がいて、alex さんのコメントを読んだに違いありません ^^;)
敵に塩を送っちゃった。
投稿: tak | 2008年1月21日 22:42