「殿様問題」 - 敬称の序列
先日車の運転をしながらカーラジオを聞いていると、関西弁では敬称にも序列があって、「やん、どん、はん、さん」の順に偉くなっていくのだと、誰だか忘れたが言っていた。
「番頭はんと丁稚どん」という番組があったが、なるほど、丁稚よりは番頭の方が偉いものというのがよくわかる。
「はん」は「さん」のくだけた言い方で、その「さん」は「様」 から来ているのだろう。そして、「どん」は「殿」だろう。ということは、「様」は「殿」より偉いということだ。これは昔から「殿様問題」と言われていて諸説あり、かなり根が深い。
ごく一般的には、私信の場合、目上の人には「様」を用い、目下の人には「殿」を使うということになっている。やはり「様」の方が「殿」より偉い。
しかしビジネス文書では、目上だろうが目下だろうが、ほとんどの場合「殿」で押し通していいようだ。官庁への提出文書のフォームを見ても、宛名はすべて「殿」とするようになっている。
ある意味、日本の文化は私信においては儒教的で、ビジネス文書においては思いのほか平等のようなのだ。しかしビジネス文書でも、不始末のお詫びをする場合などは「様」にすべきだとの指摘もあり、なかなか難しい。
敬称の使い方が私信とビジネス文書で違い、さらに大抵は「殿」でいいとされるビジネス文書の場合でも、内容によっては「様」にするなど、「殿様問題」というのは、意外に複雑で根深い。
それに、最近の若い人の中には、「殿」の方が偉いと誤解している人がかなりいて、ますますややこしくなっている。多分、見慣れないビジネス文書に使われるので、いかめしい感じがして偉そうに思ってしまうのだろう。いかめしけりゃ偉いってわけじゃないのだが。
こんなのは、「神様」とか「仏様」とは言うけど「神殿(かみどの)」、「仏殿(ほとけどの)」なんて言ったら、神様、仏様に失礼かもってことに気付けば、わかるだろうになあ。(「神殿」は、「しんでん」あるいは「かんとの」「かんどの」「かむとの」 、「仏殿」は「ぶつでん」 と読み、安置する建物の意味になってしまう)
さらに、「阿弥陀様」のことを「阿弥陀殿」、「えべっさん (恵比寿様)」のことを、「えべすどん(恵比寿殿)」なんて言ったら、あんまり御利益なさそうでしょ。
ところで、「やん」というのは「ちゃん」 からきてるのかなあ。
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