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2008年1月20日

工場という単語は factory か mill か ?

オッサンになっても英語感覚を失わないために、RNN 時事英語辞典というサイトによく行く。その中の 「きょうの時事英語」 1月 16日付に、「製紙工場」というのがある。

再生紙の古紙割合偽装問題で話題になった「製紙工場」を、英語では、"paper mill" という。"paper factory" ではない。

日本の中学高校英語では、ごく単純に「工場は英語で "factory" という」と教わった。で、ちょっと詳しく勉強すると、"mill" という単語も、工場という意味で使われると知った。"Mill" というのは、あの 「コーヒー・ミル」の「ミル」と同じ単語である。

水車小屋の粉ひきも、"mill" という。だから、高校大学時代には、私は、いわゆる「工場」と書いて「こうじょう」、「こうば」と読む日本の慣わしに置き換えて、"factory" は「こうじょう」で、"mill" は「こうば」みたいなものなのだろうと、勝手に考えていた。

ところが、社会に出て繊維業界で働くようになって驚いたのは、英語のプレスリリースなどに、結構大規模な紡績企業のことを "spinning mill" と書いてあることである。どうやら、"mill" は「こうば」じゃないらしいのだ。

というわけで、"factory" と "mill" の違いというのは、私の中では根本的にはまだ未解決なのだが、ぼんやりとわかってきたのは、素材を作る工場が "mill" で、素材を組み立てて最終製品を作るのが "factory" なんじゃなかろうかということだ。

手元にある The Random House Dictionary で "mill" を引くと、"a factory for certain kinds of manufacturer , as paper, steel, or textiles." (紙、鉄鋼、糸・生地など、ある種の生産のための工場) ということになっている。

一方、"factory" は、"a building or group of buildings with facilities for the manufacture of goods"(製品の生産のための機能をもつ建物、または建物群)となっている。これだけではわかりにくいが、用例として、「自動車工場」のことは "automoble factory" と言って、"automobile mill" とは言わない。

試しに "automobile mill" でググってみると、「もしかして: "automobile bill" 」 じゃないかと聞いてくる。一般的な言い方でない証拠だ。そして、ヒットするページは、中国人が間違って  "automobile mill" と書いちゃったらしいページが多い(参照)。

また、紡績工場のことは "spinning mill" と言うが、縫製工場は "sewing factory" になる。この辺りは明確な区別を知らなくても、"sewing mill" と言っちゃうと、何だか気持ち悪い感じになる。

"Automobile mill" と書いちゃった中国人は、気持ち悪くならなかったんだろうか? と、そこまで考えて、こう言っちゃ悪いけど、命が惜しかったら(今のところは)中国製の車には乗らない方がいいと思ってしまった。

ともあれ、日本人は「こうじょう」と「こうば」を規模で区別するが、英語では "factory" と "mill" を、何を作っているかで区別するようなのだ。こんなことは、学校ではなかなか教えてくれない。

中学高校英語というのは、合わせて 6年も習う割には、ちょっとしたところで使えなかったりする。

ところで、製紙工場を "paper factory" と言っちゃうと、「ペーパー・カンパニー」と同じで、実体のない名目だけの工場みたいな感じになるのかなあ。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

最近、よく見聞きする workshop というのは、家内制手工業みたいなものなのか?と思ってしまいました。英語は難しいという自己防衛バリアを張ってるから、せっかく世界中と繋がってるインターネットの世界も、日本語のページだけを泳いでいる私でした。

投稿: やっ | 2008年1月20日 13:37


shopといいう言葉もあります
workshopが出てしまったので、タイミングが悪いのですが(笑)
workshopの方が小規模な工場らしい

投稿: alex99 | 2008年1月20日 15:17

毎日楽しみにしています。7年目突入おめでとうございます。読者の為に、出来るだけ永く続けてください。

Millは、その名の通り、挽くようにして、原素材を加工して材料にする工場。紡績の場合は、攪拌してまぜますが、用は、挽いたり、攪拌したり、練ったりしてつくる材料工場を一般にMillだと思っていました。一般小売で売られる製品を作るのが、Factory。いかがでしょうか?

投稿: ヒロ | 2008年1月20日 15:30

やっ さん:
alex さん:

Workshop は、狭義ではまさに家内制手工業の仕事場って感じですね。
ただ、広義になると、日本語では適当な訳語が思い当たりません。

日本の 「こうじょう」 「こうば」 は、
英語の "plant" "workshop" が近いのかも。

投稿: tak | 2008年1月20日 18:13

ヒロ さん:

やっぱり、mill は素材系で、factory が最終製品系と考えて、そんなに間違いじゃなさそうですね。

投稿: tak | 2008年1月20日 18:14


WORK(S)
というのもありますね

私は商社でプラント(PLANT)輸出本部にいて、プラント輸出一筋でした
扱ったプラントは
発電所プラント
化学プラント各種
海水淡水化プラント
などです

この場合のプラントは、大規模で、多種多様の機器や装置を組み合わせた、単なる工場と言うよりは綜合生産設備とでもいうものです

まあ、こういう類語は、良くできた類語辞典で調べれば済む問題でもあるのですが、実際には辞典にも得手・不得手があるようで、必ずしも正確で詳細な説明はありませんね

投稿: alex99 | 2008年1月20日 20:29

alex さん:

仕事のスケールがすごいですね。

こうしてみると、こうじょう = plant というのは考え物ですね。

何しろ、plant はちょうどいい訳語がなくて、カタカナ語になってるぐらいですからね。

投稿: tak | 2008年1月20日 21:35

学生なもので、中世ヨーロッパに関する英語の研究書を読む機会が多いのですが、その中では、
workshopという単語は、領主が領民を一つの場所に集めて織物を作らせたりといった、
「労働集約的な作業場」という意味で用いられていることが多いように思います。

millについては、「糸紡ぎや機織りのための機械」くらいの意味で用いられています。

やはり、どちらも家内制手工業を連想させますし、millについては、素材に関する単語のようですね。

投稿: hrk | 2008年1月20日 23:30

hrk さん:

Workshop の元々の意味の情報、ありがとうございます。なるほど、それで workroom とか workplace じゃなくて、workshop なわけですね。

mill は、粉挽きの意味にもよく用いられますね。米語では grind の方が一般的かも知れませんが。

>millについては、素材に関する単語のようですね。

そう思っていれば、少なくとも恥はかかずに済みそうですね 。

投稿: tak | 2008年1月21日 10:59

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