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2008年1月 7日

裏目に出ているヒラリーの戦略

米国大統領選の候補指名争いのニュースを読んでいると、 "change" というキーワードをめぐって、いい年をした大人が「不毛な論争」にうつつをぬかしているように見える。

「自分が変化(変節) ること」と「状況に変化をもたらすこと」の区別を曖昧にしたまま、とりあえず雰囲気論戦に終始している。

ニューハンプシャー州マンチェスターでの民主党政策討論会でヒラリーは、オバマ氏が医療保険改革やテロとの戦いについて、これまで立場を変えてきたと非難し、「昨日も今日も明日も変わらない、頼りになる大統領が必要だ」(訳は Asahi.com の記事より)と攻撃した。

さらに、「変化」を強く提唱する演説上手なオバマ氏に対し、「変化は演説で出来るものではない。私は 35年間、変化を生み出してきた」(同上)と、自らの立場をアピールした。

「昨日も今日も明日も変わらない、頼りになる大統領」が望ましいといいながら、「私は 35年間、変化を生み出してきた」と述べている。「35年間もの長い間にわたって生み出してきたという、その変化って、大したことなかったんだね」 と言われかねない。

もしかして、元の英語では別の単語を使っているのだろうかと、念のため米国のニュースサイトにもあたってみたが、なんのことはない。どちらも "change"である。

ヒラリーともあろうものが、ちょっとした自己矛盾に陥っている。アイオワで次点にもなれなかったことであせっているんだろうか。こんな序盤戦で全然ひねりのきかない個人攻撃をしても、逆効果になりやすいのに。

オバマ氏はヒラリーの「変節漢」と言わんばかりの攻撃に対して、あっさりと "I'm consistent."(私は首尾一貫している)と応え、この方面の文脈では "change" という言葉をうまく避けている。つまり、 "change" という言葉のポジティブなイメージを大切に守ろうとしている。

演説の名手と言われているが、確かにオバマ氏の言葉センスはかなりのもののようだ。これまでのところ、所詮はイメージ構築の第一段階にすぎないのだろうが、まあ、新鮮な雰囲気だけはとても上手に作り上げている。

一方、ヒラリーの場合は、昔から「スマートな女なら、こういう場合はこう言うに決まってる」というような、案外ステロタイプなものの言い方しかできない人である。どのようにすればスマートに見えるかを熟知していて、その通りに振る舞えるが、それ以上のビヘイビアはしたことがない。

だから同じようにスマートなタイプからは共感を得られやすいが、「一ひねり」がない分、懐を読まれやすいし、飽きられるのも早い。

今のジョージ・ブッシュの親父の後に、やはり "change" を旗印にのし上がったのが、ヒラリーの旦那のビル・クリントンである。あの頃、私は彼を「アメリカの口先男」と呼んでいた。そして、ヒラリーのことは一昨年の秋から「ただスマートなだけ」と言っている (参照)。

ヒラリーのこのままのイメージ戦略では、全米の国民に対して「今がスマートな私の賞味期限ぎりぎりです」と訴えているようなものである。ぎりぎりだから、今選んでおこうということになるのか、この先 4年間もたないと思われるか、微妙なところで、これまでのところは後者の目が出てきている。

今のうちに戦略を切り替えないと、民主党の指名を受けることすら難しくなる。

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コメント


私も?ヒラリーが大嫌いですが(笑)、ヒラリーはここで、発想の転換をはかって、「みんなにいじめられている可哀想な女」(実態はとんでもないですが)(笑)を演じればいいのに

私は彼女の、あの下品さ、わざとらしい所作、あの声、などがキライなんですが、政策面でうんぬん出来るほどは知らない
オバマは、なにしろ若々しくて颯爽としていますね
いずれエドワーズを副大統領候補にして共闘すると思います
でも、経済政策はどうだろう?
ブレーンを確保できるか?

投稿: alex99 | 2008年1月 8日 04:20

昔、「変わらないのは、変わり続けること」を掲げていた劇団があったなぁと懐かしく思い出しました。前者の「変わらない」がconsistentで、後者の「変わる」がchange、という謂です。オバマはこれかな?


投稿: 山辺響 | 2008年1月 8日 09:58

alex さん:

ヒラリーは、確かに 「わざとらしい」 鼻につく感じがありますね。如才ないけど、本当の人間的魅力もないというか。

オバマさんにしても、実際はたいしたこと言ってないと思うんですが、ヒラリーが勝手に底割れしてるだけというか。

投稿: tak | 2008年1月 8日 10:37

山辺響 さん:

私が在学中は、第三舞台なんて聞かなかったんですけど、あれよあれよというまにメジャーになっちゃいましたね。

"We are consistent enough to make ceaseless self-reforming." ってことになるかな?

自分自身が変わるということに関して、自動詞としとしての "change" という単語は、あんまり使いたくないかも (オバマ氏の影響? ^^;)

英語になると説明的過ぎて、日本語で効いていた洒落が効かないですね。

無理して言えば

"We never change our policy to change ourselves constently."

になるかも。

投稿: tak | 2008年1月 8日 10:51

alex さん:

>ヒラリーはここで、発想の転換をはかって、「みんなにいじめられている可哀想な女」(実態はとんでもないですが)(笑)を演じればいいのに

ニューハンプシャーでは、これが成功したみたいですね ^^;)

投稿: tak | 2008年1月10日 13:36

引用不正確なのに第三舞台と分かっていただけるのが有難いです(笑)

投稿: 山辺響 | 2008年1月10日 14:01

山辺響 さん:

結構印象的なキャッチフレーズでしたからね。
浅利慶太あたりは、言いそうで言わないことです ^^;)

投稿: tak | 2008年1月10日 17:27

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