「情報共有」と "information sharing"
「情報共有」ということについて、もしかして私は、ちょっとした誤解をしていたんじゃなかろうかと、最近思い始めている。
「情報共有」 は大切だといわれているが、単純に「皆で同じことを知っている状態」という意味だとしたら、実はそんなことはあまり意味のあることじゃあるまいと気付いたのだ。
このことに気付くきっかけになったのは、「情報共有」という日本語と "information sharing" という英語のニュアンスの違いを改めて考えてみたことだ。
普通、"information sharing" という英語を日本語に訳すときは「情報共有」という言葉に置き換えられ、その逆もまた普通である。それはもう翻訳作業の定番で、単に機械的に置き換えられるだけだ。しかしよく考えれば「共有」と "sharing" はちょっと違うだろう。
"Share" という動詞は、「共有する」と訳される時も確かにあるが、本来の意味は「分かち合う」ということだ。とすれば、"information sharing" の本当の意味は「情報を分かち合うこと」になる。
適当な漢字の熟語がないから、仕方なく「情報共有」と言いならわしているが、本来なら情報をうまい具合に分割して、各々がその得意な部分を担当し、総体として一つの意味あることとして機能させるように、有機的な共同作業を行うことと言った方がいいだろう。
「皆で同じ情報を持つ」なんていうのは、幻想である。それぞれが担当分野においてきちんとした解釈をもって情報を編集し、それを次に手渡すということを連続させ、どんどん「生きた情報」として育てていくというのが、本来の "information sharing" なのだと、最近は思うようになった。
「同じ知識を皆で持ち合いましょう」なんてことでは、その知識は密度が薄まり、しかも総体としても硬直してしまって、何の役に立たないだろう。結果として、「情報は共有しました。だけど、大したことはできませんでした」ということになってしまう。
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コメント
情報は”生き物”のようなものかもしれないと思います。
>適当な漢字の熟語がないから、仕方なく 「情報共有」 と言いならわしているが、本来なら、情報をうまい具合に分割して、各々がその得意な部分を担当し、総体として一つの意味あることとして機能させるように、有機的な共同作業を行うことと言った方がいいだろう。
ある一定の方向性をもってというよりも、情報そのものはなんの規制もなく(犯罪的な事や、明らかに人道的に許されないものというのはある程度スポイルされるのかもしれないが)ネットの上にどんどん開示されていってほしい。。それは意味の無いように見える日記のようなものから、学術論文に至るまで。マッドサイエンティストが考える理解出来ないような数式から、超アングラなスクール水着の分類や歴史まで人種のるつぼと同じように、情報のるつぼであってほしい。
情報を開示するその内容について有機的な共同作業性を求めると逆に情報としての独創性や先鋭化されたものや、ごくごく一部の人にとってのみ有用な情報などがどんどんスポイルされてしまうような気もする。
情報は勝手に生まれ、勝手に死んでいく。
多くの他人にアクセスされることによって、それがコピーされ、あるいは改変されて新しい情報となり、遺伝子が子孫を残していくように情報もまた継続し、進化していくのじゃないかなと思ったりします。
そういう自然淘汰のような事が情報にも起こっていき、生き残る情報と、死に絶える情報に分かれていく。
むしろ、課題とされるのは無尽蔵に無秩序に生まれくる”情報”というものを、必要とする人がそれぞれにそれこそ有機的に関連したものとして取り出す技術なんじゃないかな?
求める情報に正しくアクセスする為に、近道出来るVICSのようなシステムを作る事と、区画整理された土地に基準に沿った建物を並べる事を考えたら、私はむしろ猥雑な町並みをVICSでかっ飛ばしたいかなw
投稿: きんめ | 2008年2月23日 16:07
きんめ さん:
>情報を開示するその内容について有機的な共同作業性を求めると逆に情報としての独創性や先鋭化されたものや、ごくごく一部の人にとってのみ有用な情報などがどんどんスポイルされてしまうような気もする。
すみません。
カテゴリーを 「マーケティング」 としたので、本文中ではつい説明不足になってしまいましたが、このエントリーは、SCM 関連の業務システムを想定して語っています。
それを離れた視点で言えば、「情報は勝手に生まれ、勝手に死んでいく」 ということにとても共感します。
投稿: tak | 2008年2月23日 21:46