「春一番」 の大混乱
一昨日の 23日、関東に春一番が吹いたというニュースがあったのだが、その直後に急に風向きが変わって、より強い北寄りの風が吹いたために、情報がかなり混乱している。
ブロゴスフィアにも「なんて寒い春一番だ」とか「冷たい春一番が吹き荒れた」とか、ちょっと困った記述がどっさり見られる。
ニュースでも、「春一番 首都圏につめ跡 恐風」(東京新聞)とか、「春の嵐、列島に猛威・関東で春一番」(Nikkei Net)など、見出しを見る限りでは、昼過ぎに吹いた春一番と、その後に猛威をふるった強烈な北西風とが、ずいぶんごっちゃにされている。
念のために復習しておくと、春一番の定義は「立春から春分の間に、その年に初めて吹く南寄り(東南東から西南西)の強風」である。南寄りの風だから、暖かいのである。冷たい北寄りの風は、そりゃ春一番じゃないのだ。
一昨日の関東地方における天気の推移をレビューしてみよう。この日の朝から吹いていた南寄りの暖かい風は、昼下がりの 13時 24分に 15.9メートルに達し、基準値の風速 8メートルを超えたため、昨年より 9日遅い「春一番」と認定された。
しかしその後、寒冷前線の通過に伴って急に風向きが変わり、より強い北西風となった。この日の暖かい陽気は午後 2時頃までしかもたず、その後の北西風の最大瞬間風速は 27.9メートルにも達した。なんと倍近い、台風並みの風速である。
この日の東京都心は暖かい南風のせいで、午後 1過ぎに 4月上旬にあたる 17.0度の気温を観測していた。ところが北西風に変わった後の午後 3時の気温は 6.8度と、わずか 2時間のうちに、一気に10度以上下降している。
後になってから吹いた冷たい北西風が春一番よりずっと強烈だったのは、印象とか体感だけではなく、こうして数値的にもはっきりと裏付けられる。
この急激な気象変化により、人間の感覚にもニュースにも、かなり混乱をきたしてしまったのは、最初に触れた通りである。大きな被害が発生したのは、より強烈な北西風に変わった午後 2時半頃より後に集中しているのだが、これが「春一番」が吹いたという事実とごっちゃに報道されている。
これについては、気象予報士の森田正光さんも、ブログで次のように警鐘を発している。(参照)
話がややこしくなりますが、北西風の最大瞬間風速と、春一番をごちゃごちゃにしては、誤解を受けます。何度も言いますが、こういった誤解を解くのが我々、お天気キャスターの仕事なのです。
こうした誤解は、本当に解いておいていただきたい。そうでないと実害はないかもしれないが、冒頭に触れたように「冷たい春一番が吹き荒れた」といったようなトンチンカンが続出してしまう。
念のため、だめ押ししておくが、春一番は暖かい風であり、冷たい春一番というのはあり得ないのである。そして、一昨日は春一番が吹くには吹いたが、その直後により強烈な北西風に変わったのであり、伝えられた被害の多くは、春一番によるものではないのである。
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