確定申告をサボったら国の思うツボ?
今年は 3月 15日が土曜日なので、確定申告の提出期限が 17日なのだが、私は 14日から出張なので、あせりまくりである。
毎度ながら、この類の書類作成は苦手で、今年もできるだけ後回しにし続けてきたのだが、ついに尻に火がつき、昨日は他の予定を何も入れない日にして、ようやく書き終えた。
確定申告といえば、3月 6日付の産経新聞コラム「断」に、劇作家(という肩書きでいいのかなあ?)の伊藤えん魔氏が「申告しないと損かも !?」という一文を寄せていて、これがなかなか面白い(参照)。
芸能人といえども、まともに食えているのは一握りで、その辺の劇団に所属する役者のほとんどは、食うや食わずである。それで、座長の伊藤えん魔氏が「確定申告に行け」と発破をかけても、次のような反応だという。
「ぜ、税金まで払う金はないです!」
「年金もらうまで死ぬから大丈夫」
「行くと捕まる」 (意味不明)
貧乏役者たちのこの「うざい、怖い、眠い」で済ませがちな反応を、伊藤氏は「金のない奴ほど申告の意味を知らない」と嘆く。
実は伊藤氏も若い頃は似たようなもので、「確定申告の暇があったらバイト入れちゃう」手合いだったらしい。しかしある日、「裕福なニート友達」が確定申告で税金が戻ってきたと話すのを聞き、確定申告は貧乏人ほど得する制度と知ったのだという。
そのニート友達によると、「領収書集めに 1日。用紙記入に 1日。税務署で 1日。これで約 10万円の還付。日給 3万のバイトだぁ。あはは」ということだったのだそうだ。これは、無名俳優のギャラの 3倍以上だそうである。
こんなに素晴らしい制度である確定申告を、全然利用しない人間が多い。しかも、それは貧乏人ほど多い。それは、この制度がわかりにくいためだと伊藤氏は言う。
税金や確定申告の意味について国税庁に問い合わせると、担当官が懇切ていねいに教えてくれる。国税庁のウェブサイトにも、詳細な説明が載っている。しかし、いくら詳しく聞いても調べても、結局のところ、「よくわからん」 のである。
よくわからんものは、嫌なのである。怖ろしいのである。敬して遠ざけておきたいのである。それは、人として当たり前のことなのである。ところがよく考えると、それは国税庁の思うツボなのではなかろうか。
貧乏人ほど収入はガラス張りだ。バイト代にしても、前もって真っ正直に源泉徴収されているものばかりで、それ以外に自分から申告して、「もっと税金取ってください」と言わなきゃいけないような収入なんて、幸か不幸かほとんどないのである。
サラリーマン収入だけで食っている人は別として、自由業的貧乏人のほとんどは、税金を納めすぎている。確定申告の書類を作るのは本当にうっとうしい作業だが、大抵の場合は、申告すればそれが戻ってくるのだ。
というわけで、貧乏人がこぞって確定申告をするようになると、還付金は確実に増える。しかし彼らが申告をサボってくれれば、税金を還付しなくて済む。つまり、あんまり真面目に確定申告をされると、国の収入が減るのである。
そんなわけで、国は「確定申告は 3月 15日まで」(今年は 17日までだが)なんて、おざなりの CM を繰り返すだけで、「申告すると、フツーは結構なお金が戻るぞ」ということを、あまり声高には言わない。
私なんかも原稿料なんかは、有無を言わせず 10%を税金としてもぎ取られているので、きちんと申告すると 5月に車の税金を払っても、まだ一晩では飲みきれないほどお釣りが来るほどの金が戻ってくる。それで、ひぃひぃ言いながらも、「これも仕事」と割り切って、申告書類を書くのである。
ああ、それでもよく考えれば、つくづく因果なことである。
もし、源泉徴収なんてことはせずに、国民全員が確定申告で税金を払うことにし、申告した者とその扶養家族だけが公民権を行使できるなんていう制度にしたら、世の中どんな風に変わるだろうなんて、思うことがある。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- アサド政権崩壊を機に、中東地域のお勉強(2024.12.10)
- 韓国で大統領なんてやっちゃうと、やっぱり ・・・(2024.12.04)
- ロシアに移民したがるやつなんていないよ(2024.11.25)
- 「さいとう元知事」が「〜元彦知事」というセコい戦略(2024.11.23)
- 今回の兵庫県知事選挙の、世論誘導に関する大きな教訓(2024.11.18)
コメント
確か源泉徴収って戦時中に出来た制度ですよね。挙国一致体制のための苦肉の策のはずが、お上にとっては税収確保に便利、給与所得者にとっても確定申告の煩を避けられるとあって戦後もずっとつづいてきたのだとか。
でも、税金を納めているという意識を薄め、物言わぬ大人しい国民を作るのに一役かってしまっているような気がします。アメリカ人など、二言目には「納税者の権利」ですもんね。
投稿: Adrienne ◆HI8ebVe8lo | 2008年3月12日 00:29
Adrienne ◆HI8ebVe8lo さん:
源泉徴収って、結局は税金の納めすぎを黙認させやすい制度ですね。
納税者にとっても、楽ではあるけれど、どっちかといえば、国に都合のいい制度というのは、紛れもない事実でしょうね。
投稿: tak | 2008年3月12日 07:13
これから税金を納めなければいけない人の申告は3月17日までですが、還付金がある人は、還付の期日が遅れるだけで、18日以降でも受け付けてくれるはずですよ。
以前、(会社員をしながらアルバイト的に)雑誌に記事を書いてお小遣いを稼いでいた時、3月は何かと忙しいので4月に確定申告をしていた覚えがあります。
投稿: Reiko Kato | 2008年3月13日 03:40
Reiko Kato さん:
>これから税金を納めなければいけない人の申告は3月17日までですが、還付金がある人は、還付の期日が遅れるだけで、18日以降でも受け付けてくれるはずですよ。
それは知りませんでした。
これから納める人は、期日を過ぎたら追徴金が加算されるのかなあ。
還付金のある人は、期日を過ぎても還付金が減額されたりしないんでしょうね ^^;)
ここだけの話ですが、大昔 (もう時効)、勤め人をしながら結構な原稿料収入があった頃、確定申告をして多少の還付金があっても、その分、翌年の地方税が増えて、こけてしまったことがあります。
多少はプラスだったように思いますが、申告の面倒くささを考えると、割に合わない気がしました。
で、その翌年は、確定申告をサボりました ^^;)
投稿: tak | 2008年3月13日 11:21