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2008年3月 4日

「業績不振を天候要因に帰すな」 と言うが

アパレル業界では 「業績不振を天候要因に帰すな」 とよく言われる。天候が味方してくれなくても、企画とマーケティング努力で売り上げは伸びるのだという叱咤である。

しかし、そんなきれい事を言っても、やはり衣料品の売れ行きはお天気に大きく左右される。これはどうしようもない事実である。

ハイファッションを買い続けないとストレスになってしまうという、ファッション・マニアックは、ある一定の比率で存在する。こうした消費者は、魅力的な商品さえ提供されれば、暑かろうが寒かろうが、どんどん買ってくれる。寒波到来前に、汗をかきながらダウン・コートを着てくれる。

しかし普通の消費者は、暖冬だったら 3年前に買ったコートをもう 1年着ちゃおうと思うのである。夏が暑すぎたら、夏用のジャケットなんか何着も揃える気になれないのである。アパレルもエアコンもビールも、お天気商売なのだ。

それに、今回のようにかなり寒い冬になっても、本格的に寒くなったのが 1月の中旬以後だったりすると、その頃は既にバーゲンのシーズンになっているので、いくらコートが売れても在庫処分の世界であって、まともな利益にはならない。

アパレル業界が儲かるには、梅雨明けが早くて 7月初めからどっと暑くなり、旧盆が過ぎたら急に秋めいてきて、晩秋からぐっと冷え込み、立春を過ぎたらさっさと春の陽気になってくれればいい。要するに、季節の移り変わりが早め早めになってくれればいいのだ。

ところが、最近は逆で、梅雨明けがいつなのかうやむやのうちにやっと夏になり、そのくせ、秋の彼岸を過ぎてもだらだらと残暑が続く。短い秋が過ぎて暖冬かと思っていると、立春過ぎに急に寒くなる。ようやく春が来ても天候不順で菜種梅雨が長く、そのうちにまた暑い夏になる。

これでは、アパレル業界としては、まともな値段で勝負する期間がない。ようやくそのシーズンにふさわしい天候になった時には、バーゲン・シーズンなのである。当然にも、フツーの消費者はバーゲンになってから服を買う。

とまあ、このように天候要因に大きく影響される業界でメシを食っているせいか、気象予報士試験を受けたら、そりゃあ落ちるだろうが、私は素人としてはお天気ネタには結構強い方である。

いつの年が酷暑で、いつが暖冬だったかなんてことはしっかり頭に入っていて、「よくそんなこと憶えてるね」 なんて言われるが、それは仕事柄なのである。しかし、よく考えてみれば仕事柄だけではなく、これまで暮らしてきた環境のせいでもあるようだ。

高校まで暮らした山形県の庄内地方は、音に聞く地吹雪地帯である。人間が普通に暮らしているところとしては、世界最凶のブリザード地帯といわれることもある。そんなだから、天気には敏感で、天気図の読み方も子供の頃からいつの間にかわかるようになっていた。

学生時代にはよく山登りをして、観天望気なんていう技も身に付けた。さらに、30歳前に引っ越してきた今の家が、なんと洪水地帯に建っていたのである。

引っ越して 1週間目の日曜日に台風が来て、目の前の道路が冠水し、外に出られなくなった。さらに 2年後には床下浸水なんて被害まで経験し、当時勤めていた会社から 「罹災手当」 として 1万円が支給された。伊勢湾台風以来、25年ぶりの支出項目だったそうだ。

というわけで、私はつい最近まで台風が近づくたびに、天気図とにらめっこしながら眠れない夜を過ごしていたのである。

ところが、最近になって近所に遊水地ができ、我が家の裏の川も拡幅工事で川幅が 2倍になった。地域の排水設備もようやく整えられて、なまじの台風では道路冠水なんてしなくなった。引っ越してきてから 30年。長いようで短い期間だが、治水対策だけは確実に進んだ。

おかげで、近頃は台風が近づいても少しは安心して眠ることができるようになって、浸水の心配は忘れ、業界の売れ行きだけを気にかけていればいいようになったのである。ありがたいことだが、一方では地球温暖化なんていう、より大きな心配の種が持ち上がっている。

やはり天候要因というのは大きいのである。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

庄内・酒田のブリザードを経験しました。市民会館新築工事の折に山居倉庫と川を挟んだ対岸に現場事務所を仮設してましたが、工事現場と事務所の距離、400メートルぐらいを歩くのに数分かかりました。恐ろしい所へ来たもんだと思ったです。右から吹いたと思うと、一気に左からの突風で、風に飛ばされるというよりも激しく揺すられる感じで、365歩のマーチのように、三歩進んで二歩戻されるような感じでした。あんな気候の中で育てば芯が強くなるのも当たり前か?と思ってしまいます。さすが、”おしん”を育んだ土地だと、感慨無量です。風が多かったおかげで、抑揚重機作業(クレーン作業)の進捗がかなり悪かったです。

季節と売れ筋には関係ありませんが、疑問に思ってる衣料品小売店の不思議。それは、閉店売り尽くしセールというやつを開催しているにも関わらず、閉店していない衣料品店が多い。というか、私の知る限り閉店していない。閉店というのは、廃業とは違うのでしょうか?。そのセールが終わっても、パチンコ店のように新装オープンとか(このパチンコ店の新装オープンも新装してないのに新装オープンとは、これ如何に)仰々しくするわけでもなく、平常通りに営業している模様。それが、私は不思議でならない。

投稿: やっ | 2008年3月 5日 05:20

やっ さん:

市民会館から山居倉庫では、海からの風の通り道みたいなルートですね。さぞ大変だったと思います。
(これを書きながら、風に逆らって、必死に前のめりで呼吸する感覚がよみがえりました ^^;)

それから、常時 「閉店セール」 をしている衣料品店というのは、「閉店セール屋さん」 という業態と理解するのがいいみたいです。

その心は、バッタ品専門店ですね。

投稿: tak | 2008年3月 5日 11:24

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