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2008年3月 2日

「左褄を取る」ということ

昨日、車を運転しながら TBS ラジオの「土曜ワイド」を聞いていたら、永六輔さんが「つじつまを合わせる」という言葉の語源について触れていた。

「つじつま」は漢字では「辻褄」と書く。これが和裁の用語から来ているとは、恥ずかしながら初めて知った。

まず、後ろの方の「褄」は常識問題の部類で、着物の裾の左右両端の部分である。そして「辻」はその字の如く、道が十文字に交わるところだが、和裁でも縫い目の十文字に交わるところを言うらしい。これは全然知らなかった。

で、「辻褄が合う」とは縫い目の交差部分、着物の裾の部分の処理がきちんと合うということで、ひいては物事の道理や筋道がきちんと合うことまでを意味するようになったもののようだ。改めてインターネットで調べてみても、そのように説明されている。(参照

で、これを受けて永六輔さんが、着物の裾を引きずらないようにちょいと手でつまんでもつ場合、芸者さんは左手でつまみ、その姿が粋なので「左褄を取る」という言葉もあるというようなことをおっしゃった。

するとこの番組のアシスタント、TBS アナウンサーの外山惠理さんが、何を思ってか「私も左褄を取るようにします」と口走った。この人、慶応大文学部卒のインテリだが、時々ぶっ飛び発言をする面白い人である。それを聞いた永さん、思わずこけそうになり、苦笑しながら「それは止めといた方がいい」となだめていた。

昔はよく使われた言葉で、今はほとんど死語になっているということに関しては、先月 28日に書いた「ザッハリッヒ」と双璧かもしれないが、「左褄を取る」とは「芸者になる」こと自体を意味するのである。

外山さん、アナウンサー名鑑では 1975年生まれということで、「左褄を取る」の意味を知らなかったのも無理からぬところだが、まあ、そんなでは、芸者になるのは確かに止めといた方がいいだろう。

ちなみに今の着物の着こなしは、普通は裾なんか引きずらないから左でも右でも「褄を取る」必要はない。左褄を取らなければならないのは、ちょっと非日常的な、裾を引きずる着こなしだからである。歌舞伎ではお馴染みだけど。

ネットで画像を探してみたら、あるところにはあるもので、ドンピシャリの写真が見つかった(参照)。このページの説明にもあるが、「左褄を取る」とは「芸は売っても身は売らぬ」という心意気を示すものでもあったようである。

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