脳内オーディエンス
昨日仕事先からの帰り道、カーラジオを聞いていたら、タレントの伊集院光の番組に漫画家の浦沢直樹さんが出ていた。この人、なかなかおもしろいトークをする人である。
中でも一番興味深かったのは「脳内オーディエンス」という言葉だ。彼は自分の脳の中にいる読者のために漫画を描くのだそうだ。
彼が言うには、小学生の頃に漫画を描いている子はクラスに何人もいた。自分で描いた漫画を友達に見せている子供もいたが、そういう子はなぜかプロの表現者にはなっていない。自分はその頃、ほとんど自分のためだけに描いていて、せいぜい気の合う 2~3人にしか見せなかった。
「引き籠もりといえば言えるけど、クラスのせいぜい 40人に見せるよりも、自分の中の100万人に見せる方がよかった」 という。彼はそれを「脳内オーディエンス」と表現し、番組ホストの伊集院光もそれにいたく共感した。
伊集院光の言うには、ラジオの生放送で「あ、今すごく受けてる」と直感することがあるそうだ。スタジオの中にいて、聴取者の反応が直に伝わるわけでもないのに、とてもリアルに直感する。それは、自分の「脳内オーディエンス」に受けていたわけだ。
芸術家と職人の違いが話題になることがある。しかし芸術家も職人も、オーディエンスに受けようとして作品を作ることに変わりはないようだ。そのオーディエンスが、自分の脳内により多くいるか、ほとんどが市場に「他」として存在するかだけが違うのかもしれない。
そして、一流になると芸術家でも職人でも、自分の「脳内オーディエンス」の方により忠実であろうとして作品を作るんじゃないかと思う。一流というのは、脳内に一流のオーディエンスを持っている人のことを言うようなのだ。
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コメント
すごく共感します。というか安心しました。色々な解釈があるもんですね。私も今までそういうようなシュチエーションが度々ありました。それは、ただ単に自己満足?と思っていましたが、takさんのエントリーを呼んで、スッキリしました。ま、自己満足には違いないのでしょうが・・・。
投稿: やっ | 2008年3月20日 06:39
やっ さん:
自己満足にもレベルがあるってことなんでしょうね。
投稿: tak | 2008年3月20日 13:42