ATOK の文語モード試しみむとて
日頃使ひ慣れし ATOK てふ日本語入力システムに、「文語モード」なるものあるに、昨日になりて気付きたり。
「和歌ログ」にて文語の歌詠むに、かくなるモード備はるるはやれ嬉しやと、心浮き立つ思ひにて、いにしへ人も書きたる文語てふもの今の代の我も書かむとて試しみたり。
思ひつくまま試せしに、歴史仮名遣ひの変換は思ひのほか上手にて、これまでの如くに一度(ひとたび)今様の言葉にて変換せし後に、改めて送り仮名を書き直す手間も要らず、さくさくと心地よきものなり。
例ふれば、この「例ふれば」は言ふに及ばず、なほまたこの「言ふに及ばず」さてまた「仮名遣ひ」なども、書き改むることなく変換さるるは、我が意を得たりと喜ばしき心地ぞする。
さらに「改むる」など、いにしへの動詞活用も何事もなく変換さるるは、胸のつかへ下りたるやうにてをかし。一般モードにて「あらたむる」と入力せば「新た無留」などと変換され、すさまじきありさまなり。
願わくは「ゐる」をさくりと変換してもらひたきも、これも単語登録にてまかなへば、さほどあさましきものにもあらず。「をり」はそのまま変換されしなり。
「てふてふ」を「蝶々」 にするを試すはありがちなるものと、開発者は先立ちて合点せしゐたること必定(ひつぢやう)なり。されば、待ち構へたる如く変換したるは、さほど驚くべきことにしあらず。
「くわじ」「くわんのん」で「火事」「観音」にならぬはをこがましきことなれども、常には仮名ならぬ漢字にて表さるる字句なれば、ことさらに荒立つるほどにもあらずと思ひ直しぬ。
かくの如く端(はした)なきところも多々見ゆれど、大方にてはかたじけなきものなり。我が ATOK は、ばあじよん十六なれば、最新版にてはなほ改まりしところあるらむ。
ATOK の文語モードは、歌詠みのみならず、日本古典文学関連の論文など書くをり、引用文の入力に、まことにもあらまほしきものなり。ジヤストシステム社のもたらせしところ、わが日の本の八百万の神々の導きならむ。いかに褒め称ふとも過ぐることなし。
思ふに、日本語てふものは歴史仮名遣ひにてこそ、その趣、示すところの誠の意味など心底より合点さるるべきものなれ。
「家」などは「いへ」と書きて、初めて「在す(います)」ところの「へ」即ち「竈(かまど)」あるひは「器」と知らるるなり。今もなほ 「かまど」を「へつつひ(へっつい)」と言ふは、その名残なり。
今の世の骨(こち)なき表記にては、言霊も幸(さきは) ふこと少なしと思ほゆ。ただし、我が文語もなかなかにテキトーにてあれば、言霊のいかほど幸はむものか、返す返すも怪しうこそものぐさなれ。
【追記】
画像の色紙(らしきもの)の和歌は
「毛筆は悪筆なれど今様にQWERTYにて古語の歌詠む」
草書体フォントは書家の青柳衡山先生の無償提供による(参照)。
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コメント
これいとおもしろし。
われもいむすとほるせむとぞおもひける。
投稿: osa | 2008年4月11日 00:20
ばあじよん十六といふ、文字いと巧みなり。
おかして笑へん。
投稿: オッチャン | 2008年4月11日 12:12
osa さん:
>われもいむすとほるせむとぞおもひける。
いむすとほる??
はて?
うー眠れん。
投稿: tak | 2008年4月12日 01:31
オッチャン:
>おかして笑へん。
東海版古語?
投稿: tak | 2008年4月12日 01:32
いむすとほるはインストールの古語なり。
我難解の美丈夫なり。
投稿: osa | 2008年4月12日 01:43
osa さん:
>いむすとほるはインストールの古語なり。
恐れ入りました。
ただただ平伏にて候 m(_ _)m
投稿: tak | 2008年4月12日 09:49
「おかしてこたへぬ」
正しくは、かやうにかきはべ…(やぁめたぁ!)、何年か前に12月のカレンダーから学んだ言葉です。
鬼が腹を抱えて『からんからん』と笑っている姿が描いてあって、「来年のことをいふ。おかしてこたへぬ。」
生兵法は怪我の元でした。
失礼ツカマツリました。
投稿: オッチャン | 2008年4月12日 23:21
オッチャン:
>鬼が腹を抱えて『からんからん』と笑っている姿が描いてあって、「来年のことをいふ。おかしてこたへぬ。」
なるほど、「をかしうて 堪へぬ」 の変形ですね。(「仮名は 「をかし」 になります)
「おかしくて、たまらん」 ということ。
「おかして 笑へん」 は、逆の意味になるので、要注意ですよ。
投稿: tak | 2008年4月13日 09:00