IOC会長、上から目線で中国擁護
IOC 会長が「中国建国の 1949年当時は、多くの西欧諸国も植民地問題を抱えていた」として、中国への人権問題関連の非難を中止するよう呼びかけたのだそうだ (参照)。
ことの是非はともかくとして、私はこの呼びかけの趣旨を、当の中国共産党がどう評価するかにものすごく興味をそそられる。
IOC のロゲ会長が英国の Financial Times のインタビューに応えて語った基本的な前提は、「西欧社会が現在に至るまで、フランス革命から 200年を要した。中国は1949年に建国したばかり」 ということだ。その上で、「(西欧諸国が)ようやく植民地の独立を承認したのは 40年前。(我々も) もう少し謙虚な立場を取るべきでは」 との見方を示している。
この指摘は一見謙虚に見えるが、よく吟味してみると、「我々が歴史においてとっくに通り過ぎたことを、中国は今、ようやく経験しているのだから、まあ、暖かい目でみてやろうじゃないか」という、かなり「上から目線」的発言である。
欧米諸国のバッシングを牽制してくれたという意味では、中国にとって悪い話ではないかもしれない。しかし、誇り高き中華思想の中国人が、「本当にそうだよ。わかってくれてありがとう」と、素直に受け入れて喜ぶようなものの言い方では、基本的にないのである。
とはいえ、「ふん、余計なお世話だ」と、くってかかるわけにもいかない。IOC 自身の利害から発する発言でもあるので、純粋に中国擁護の意図から出たものとは言えないにしろ、この発言にくってかかったりしたら、さらに火に油を注ぐようなことになる。
中国語では「がんばれ!」というのを「加油!」というらしいが、こんなところで油を注いだら、ややこしいことになってしまうのである。
だからといって、この発言を素直に認めてしまったら、今度は自らの後進性を認めることになる。さらに、現在の自国の人権抑圧やチベット問題を、自らが非難してきた西欧諸国の植民地政策と同じ次元のものと追認することになる。ということは、あれだけ力を入れてきた反日教育も、根拠を失ってしまう。
というわけで、中国としては、今回の IOC会長発言はあまりにビミョーすぎて、素直なリアクションをとるわけにいかないだろうと思うのだ。この発言、意図したわけじゃないだろうが、かなり「両刃の剣」的性格を持っている。
多分、中国は今回の発言にはとぼけてしまうのだろうが、直接的な反応をぜひ見てみたいと、わたしなんか思うのである。ちょっと意地悪かも知れないけどね。
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