既にぶっこわれている自民党
衆院山口 2区の補選は、サンスポの見出しの言葉を借りれば、民主党が自民党を「秒殺」してしまった。これは大方の予想通り。
で、自民党の敗因だが、驚いたことにアサヒは "敗因は 「後期高齢者医療制度しか考えられない」(参院自民党幹部)との見方が強まっている" と伝えている(参照)。
これには驚いた。本当にそう思っているとしたら、この「参院自民党幹部」さんを初めとした自民党とアサヒ、相当ヤキが回ってしまったとしか思えない。そりゃ、後期高齢者医療制度も敗因の一つだろうが、「しか考えられない」というのでは、頭悪すぎる。
本当の敗因は、自民党の制度疲労である。すでに自民党という組織が半分以上ぶっこわれて、時代に合わなくなっているのだ。それについては、昨年夏の参院選直後に、"近頃 「いい目」 を見てなかった保守王国" というエントリーで少し触れている。
私はこの記事の中で次のように述べている。
田舎は最近、全然いい目を見ていないのである。大都会との格差は広がるばかりで、さっぱりいいことがない。自民党が天下を取っているうちは安心だとばかり思っていたが、どうやら、この頃の自民党は 「改革」 なんてきれい事を言い出して、都会志向ばかりしているように思われる。
(中略) 「改革」を推進しないことには、日本が危ない。しかし、それをやりすぎると、自民党が危ない。ある状況でうまくできすぎていたシステムは、その状況が変わると、とてつもなくしんどいことになる。
小泉さんの時代、自民党は衆院選で歴史的な圧勝をした。小泉さんは、いわゆる「保守王国」とか、特定郵便局長とか、そういった因習的自民党支持基盤を思い切りよく切り捨てて、日本の人口の多数を占める都市労働者を取り込むために、自民党を「ぶっこわし」てしまった。そして、直後の選挙でそれが大当たりしたのである。
小泉さんの政策が正しかったのか間違っていたのかはともかくとして、なにしろ、わかりやすかった。これは、彼の最大の功績である。わかりやすくしさえすれば支持されるという素晴らしい教訓を、なぜそれ以後の首相が踏襲しないのか、気が知れない。
昔の竹下さんは、自分で「言語明瞭、意味不明瞭」なんて称していたが、とんでもない。あれは「言語不明瞭、意味さらに不明瞭、されど下心みえみえ」というのである。「言語明瞭、意味不明瞭」というのは、むしろ、今の福田さんのような人のことだろう。
小泉政権時代の衆院選での自民党大勝利の要因は、「モノ、はっきり言うちゅうこってすわ」という、塩じいこと塩川正十郎氏の鋭い指摘に、端的に象徴されている。それについて、私なんか、3年近く前に書いてるぞ。
政治というものは、わかりにくくてしょうがないと思われていたところにもってきて、日本で初めて(あるいは、田中角栄以来、30数年ぶりに)保守政治家がわかりやすい、もしくは、わかりやすい気がすることを言ったのだから、小泉政権は支持されて当然だったのである。
ところが、この小泉さんの時代で既に、自民党は半分以上「ぶっこわされていた」のだから、ぶっこわされる前の手法に逆戻りしても、その手法は機能するはずがないのである。あんまり機能しないものだから、安倍さんは心身症になり、福田さんはマヒ状態に陥っている。
じゃ、小泉さんが「ぶっこわし」をしなければよかったのかといえば、そうでもないだろう。小泉さんが自民党をぶっこわさなければ、日本が沈んでしまうところだったのである。日本が沈むよりは、自民党がぶっこわれる方がまだマシである。
自民党は既に、相当の部分をぶっこわされているのである。そこに目をつむっていては、今の日本がわからなくなる。民主党が頼りになるわけでは決してないけれど、一度ぶっこわされた政党がまともに機能を発揮できないのは当然と気付かなければならない。
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コメント
友人の郵便局員(局員という言葉も死語?)が、『このままでは郵便3事業は2つか1つに減るかもな…』と、遠くを見る目で語っていました。
『絶対必要』で始まった郵政民営化も、内部に悲観論があることは否めないそうです。
結局、ガソリン国会を経ても暫定税率は復活が大筋ですし、相変わらず自民党の方々は『その税金がなくちゃ話にならない』姿勢ですし(党トップもね)、道路が必要なら既存の財源から捻出することよりも楽な方法を採りたがっている論調を思うと、がっくりポンです。orz
“明日を未来を切り開く道路”よりも、“今日の生活に困らない物価の維持”に着眼したら、ガソリンどころか何でもかんでも政治家(親しみを込めてセイジヤと呼ぶ)の手腕が発揮されて然るべきなのに…。
国民の1票でその地位にいるのに、オレがここにいるからお前ら(国民)が生活できるんだ!といわんばかりの論調。
選んでもらったら勝ち!の姿勢、丸見えですね。決して自民党に限らず。
(今回も言葉足らずですみません)
投稿: オッチャン | 2008年4月30日 12:43
オッチャン:
他の税金の場合は無駄遣いの追求に熱心なマスコミが、今回の暫定税率にだけはやけに物わかりがいいというのが、私にはとても違和感があります。
来年から道路以外にも使いたいというなら、ガソリンにかける税金の意味ないじゃないかと言いたくもなりますしね。
車で移動しないと人間の暮らしができない田舎に住んでいる者には、消費税ほどじゃないにしろ、かなり影響ありますからね。
というわけで、今回の措置にしても、従来の保守王国 (=車が必要な田舎) の自民党離れを促しますよ。
投稿: tak | 2008年4月30日 13:12
敗因は韓国の破綻危機だと思う。韓国債年利十パーセントでも買い手が着かず、メディアの必死の自民党降ろし、民主党応援大合唱だと思う(韓国破綻と日本のつながりは、めんどくさいんで書かない)
投稿: アボカド | 2009年9月 3日 11:29
アボカド さん:
>(韓国破綻と日本のつながりは、めんどくさいんで書かない)
もし書きたくなったら、ここでなく、ご自分のサイトでお願いしますね。
投稿: tak | 2009年9月 3日 14:49