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2008年4月12日

「後期高齢者」 てふ名称

「後期高齢者医療制度」の始まりて以来、この「後期高齢者」てふ言葉の評判、甚だ芳しからず。とりわけ当の 75歳以上の高齢者、いと腹立たしきやうなり。

「我らに早う死ねてふことなるか」と、憤慨し給ふ翁、嫗(おきな、おうな)の声、をちこちにて聞き及びしなり。(参照

この制度の名称、定めし人情の機微を知らぬ木端役人の、木で鼻をくくる如くに命名せしらむと思ひきや、誠にはさにあらず、「後期高齢者」てふ呼称は、医療、福祉の世界にてはかねてより、ごく普通に使われ来るものなり。役人的発想としては、既に定着せる名称としてただ機械的に使いたるものならむ。

これに対し、「75歳以上の老人に対して失礼」などと、あたかも今に始まりたるやうなる怨嗟の声、巷に満ちたるは、偏に医療制度改革によりて、老人の負担の増ゆると知りたるがためなり。

もし「後期高齢者には、年額 60万円の医療補助を与ふることとす」なる法律の作らるれば、かほどの声の上がるや否や、甚だ疑はしきなり。逆に 70代前半の者は「我も早う『後期高齢者』になりたし」などと言ひ出さむとも限らざるものなり。

さればこのたびの制度、徒(いたづら)に「長寿医療制度」などと名称を代へたるとても、国民は容易には合点せざること必定なり。知るべし。「後期高齢者とは失礼なり」との声の多くは、名称批判に名を借りたる制度批判の声なりと。

ましてや我が 75歳にならむ日には、100歳以上の者に『末期高齢者医療制度』(「まつご~」と読むなり)なるもの適用されむとも限らず。何があろうとも驚くべからず。たたただ達者(まめ)にて暮らさむこそ本願なれ。

ATOK の「文語モード」なるものを見つけて以来、新しき玩具を手にしたる童べの如く、ひたすら弄びて楽しみをる次第なり。

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