「寒鱈汁」と「どんがら汁」
昨日、大急ぎで京都の神社仏閣巡りをして帰ってきたのだが、関西方面では高校生ぐらいの子たちが電車の中で、コテコテの関西弁でしゃべっている。うらやましいことである。
関西だから当たり前と言われそうだが、私の田舎の山形県酒田市に帰ると、若い子は皆、きれいな共通語なのである。
私はこれまでにも庄内弁が消えていきそうな現状を憂う記事(例えば こちら)を書いている。関西では関西弁が脈々と伝わり、完全に現役で通用しているというのに、庄内では庄内弁を話せない子どもが増えているのである。
件の記事でも書いたのだが、酒田の子たちは学校からの帰り道、友達と別れるときに「じゃあね」なんて言うのである。私は初めてこれを聞いたときに、愕然としてしまった。「さかだの子だばさがだの子らしぐ、『へばの!』 ってそえ!!」と言いたくなってしまったのである。
ちなみに、上記の庄内弁は、日本語では「酒田の子なら酒田の子らしく『へばの!』と言え!!」という意味である。「へばの」は「おしん」が放送されていた頃は、全国的に認知されたが、庄内人の努力不足であっという間に忘れ去られた。
私が一つ不満に思っているのは、毎年 1月に酒田で開催される 「日本海寒鱈祭り」 である。太鼓などのイベントをしつつ、冬の庄内で一番おいしい「寒鱈汁」を商店街で振る舞うのだが、私の子どもの頃は、誰も「寒鱈汁」なんて言わなかった。
私の心の中では、あれは「どんがら汁」というものなのである。それがいつの間にか、日本全国共通の「寒鱈汁」になってしまった。私は庄内の人たちが「どんがら汁」という素晴らしい呼称を捨てたことを悲しむものである。
日本各地には「それ何?」と言いたくなるような食べ物がある。九州の「おきゅうと」とか、秋田の「きりたんぽ」とか、奄美大島の「鶏飯 (けいはん)」とか。
あれらは、「それ何?」と聞いてもらえるからいいのである。「これはね……」 と説明する必要があるからこそ、ウンチク会話がスタートし、よそ者をその土地の土俵に自然に引きずり込める。
庄内の人たちがあのイベントを「寒鱈祭り」という名前にしてしまったのは、はっきり言って、庄内人のこの方面のセンスの悪さである。観光センスのある土地だったら、絶対に「日本海どんがら祭り」という名前にしていた。
「どんがら」をフィーチャーする方が、第一、インパクトからして違う。「それ何?」と聞いてもらえる。庄内人は人がよすぎて、周囲に合わせすぎるので、「それ何?」と聞いてもらえないのである。
そうするうちに、庄内人自身が 「それ何?」と聞かなければならなくなり、さらに聞くことすらなくなってしまうとしたら、あまりにも悲しすぎるのである。
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コメント
電子器機の基板設計の仕事してるんですけど、みんな筐体、いれもののことを「どんがら」って言うんですよね。今、ふと調べてみたらどんがらとは胴殻、魚のアラのことなんですね。ここからきてたのかと妙に納得しました。ちなみに、手元の広辞苑第六版には「どんがら汁→庄内地方の郷土料理」と、しっかりのってました。
だれでもどんな料理かイメージできる寒鱈汁よりも、「それ何?」と思ってしまうどんがら汁の方がキャッチコピーとしては良い。言われてみると当たり前のようだけど、これってちょっとしたコロンブスの卵ですよね。普通はイメージしやすい方が良いと考えてしまいますもんね。敬服いたしました。
投稿: Adrienne | 2008年4月20日 23:19
Adrienne さん:
「どんがら」 って、さほど局所的な方言ではないとは感じていましたが、広辞苑に載ってるとは知りませんでした。
それから、筐体のことも 「どんがら」 って言うんですねぇ。これも知りませんでした。
今まで 「ガワ」 なんて言ってましたが、これから 「どんがら」 と言おうかな。
ご教示、ありがとうございました。
投稿: tak | 2008年4月21日 07:44