大根役者と千両役者
福田首相という人は、状況の先の先まで鋭く読むことのできる人だなあと、私は近頃、えらく感心しているのである。
前々回の自民党総裁選を降りたのだって、「どうせすぐにお鉢が廻ってくる」 と読んでいたのだろうし、今回の対中国媚びへつらいも、将来の国益を見越してのことだろう。
中国は今、世界中から批判を浴びている。各国の聖火リレーで、超特大の赤い国旗を掲げて気勢を上げていた中国人留学生たちも、「俺たちの国って、実はこんなに嫌われてたのか」 と、内心はかなりのショックだったろうと思う。
こうして集中砲火を浴びる中国に、涼しい顔をして、いけしゃあしゃあと好意的なコメントを述べておけば、ちょっとした恩を売ることができる。
向こうが実際に恩義に感じてくれるかどうか、あるいは多少は恩義に感じたとしても、その恩義をいつ忘れるかわかったものではないということは全然別として、少なくとも 「恩を売った」 という気になることはできる。
中国が近い将来、世界最大の経済市場になることは明らかだ。その有望な市場に対して、否定的な態度でいることはない。今のうちから、きっちりとお客様扱いしておくに越したことはない。相手がどんなにつけあがろうとも、お客様は神様だから、奉っておけばいい。
今回のパンダの問題にしても、「2頭で年間 1億円は高すぎる」 などというけちな連中もいるが、日本は弱小国じゃあるまいし、出そうと思えば 10億円だってポンと出せる。1億円ぐらいでガタガタ言われることはない。
だから、中国中央テレビのインタビューには、「メディアの一部でいろんなことを言う人がいるが、これはごくごく少数派。ほとんどはかわいいパンダを見たいと思っており、手放しで喜んでいる」 と、心にもない外交辞令で応えておいた (参照)。
まあ、リップサービスが過剰なのは、そこはそれ、相手は神様なのだから、大目に見ればいいだろう。福田さん、役者である。ただ、結局は大根役者のレベルでしかないというのが悲しい。大根役者というのは、「消化がいいから当たらない」 というココロである。
そこに行くと、千両役者は天皇陛下であらせられる。
7日の会見で胡錦濤氏は、「上野動物園のパンダのリンリンが死んだのは残念です。日本の人に引き続きパンダを見て喜んでもらえるように、共同研究用にパンダのつがいを提供することにしました。日本の子どもたちに見ていただきたい」 と述べた。
う~ん、「提供することにしました」 は、誤訳と信じたい。本当は 「貸与することにしました」 だろうから。あるいは、現代中国語では 「提供」 という語に 「金取って貸す」 という意味もあるのだろうか。
そしてこの発言に対し、陛下は 「子どもたちが喜ぶと思います」 と応えられた。さすがだなあ! しかしこのウィットの妙を指摘している人は少なく、見たところでは、わずかにカトリック生活の Christina さんぐらい (参照) というのが残念だ。
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コメント
今度来るパンダを、日本の研究成果で“世界最長寿パンダ”にしましょうよ。
その子孫も長寿で、人間と同じっくらいの寿命で生きられるよう、研究と技術の革新だ!
>2頭で年間 1億円は高すぎる
…あ、しまった!
投稿: オッチャン | 2008年5月13日 12:25
オッチャン:
考え落ちってのは、なかなか難しいもんですが、なかなかやりますね (^o^)
投稿: tak | 2008年5月13日 21:57