ウンコ強さについて考える
元フォーククルセーダーズの一員にして、精神医学者の北山修氏によると、日本人は世界で最も厳しいトイレット・トレーニングをする人たちなのだそうだ。なるほど、そうだろう。
トイレット・トレーニングとは即ち、ウンコとオシッコをきちんとするしつけである。なにしろ、日本人は清潔好きだからなあ。
赤ん坊がいつまでもおむつ離れをしないと、母親はかなりシリアスに心配する。というか、ストレスに感じるようである。
逆に、ほかの子より速く「ママ、ウンチ~」と言えるようになると、母親は「あ~ら、よく言えたわねえ!」と、大喜びでアヒルかなんかの顔のついた赤ん坊用便器に座らせ、その子は「ママの自慢」になる。
欧米の子なんて 2歳ぐらいになっても、おむつカバーの中をたっぷんたっぷんにしながら、平気な顔して遊んでいたりする。オシッコ強いし、ウンコ強い。
パリの街を歩くと、「フランス人って、ウンコ強いなあ」としみじみ思う。私は初めてパリに行ったとき、舗道で犬の糞を踏んづけた。それ以後、あまりきょろきょろ上を向かずに、しっかりと足元を見て歩くようになった。
パリジャンたちは犬の散歩をさせ、舗道でウンコをさせたまま置き去りにして平気である。そして長いフランスパンを買って知り合いに会うと、そのパンをむき出しのまま犬がウンコする舗道の街路樹に立てかけて話し込んだりしている。
あいつら、かなりのウンコ強さだ。さすが根が牧畜民族である。そしてヴェルサイユ宮殿の庭で、知らん顔してウンコやオシッコをしていただけのことはある。
ウンコ強いか弱いかというのは、民族性にかなりの特徴を浮き立たせるかも知れない。日本人はウンコをさっさと始末したがる。昔は肥料にしていたにしても、日常生活の表舞台からは遠ざけていた。そうした習性が、かなり潔癖な国民性というものを醸造したと考えるのは、間違っていないと思う。
日本人はとにかく(論理としてというよりは、多分にイメージとしての)清潔好きである。あまり必要もなさそうなサニタリー商品がどんどん売れる。そのせいで、免疫が弱まるなんて指摘されたりしている。
またその一方で、「臭いものには蓋」とか言って、嫌なものはとりあえず遠ざけ、逆に抜本的対策は講じないなんていう国民性を生み出したんじゃないかという気もする。また、すぐに「水に流す」とかして、あまり根に持たない淡泊な性格になったのかもしれない。
厳しいトイレット・トレーニングは、表向きの清潔好きと、その裏返しの「テキトーに間に合わせる」という、表裏一体の国民性を醸造したようだ。まあ、これは「卵と鶏」の関係かも知れないが。
北山修氏は「日本の母親がトイレット・トレーニングにもっと大らかになったら、日本人は変わるかもしれない」と言っていたが、そのあたりは、なかなか大らかにはなりにくいんじゃないかと思うなあ。
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コメント
衛生観念というか、日本人はかなり潔癖に近いのかもしれませんね。
もともと厠を川屋と語源にするのが結構有力だなんて言いますから、たぶん、日本人は”水に流す”のは得意なんでしょう(笑)
ふんだんに水源を持っていた国ですから、流すというトイレ事情は当たり前な感じですが、おフランスなんかは昔は汚物は窓から道にぶちまけるなんてのが当たり前だったお国柄。
そこら辺のウンチ強さは半端じゃないのかもしれないですね(笑)
投稿: きんめ | 2008年5月19日 10:20
きんめ さん:
>おフランスなんかは昔は汚物は窓から道にぶちまけるなんてのが当たり前だったお国柄。
>そこら辺のウンチ強さは半端じゃないのかもしれないですね(笑)
1967年のスウェーデン映画 「私は好奇心の強い女」 で、ヒロインの父親が、洗面器に小便をして、当然の如く窓からうっちゃってました。
まあ、映画としては下層階級を表現するために極端な描写をしたんでしょうがね。
投稿: tak | 2008年5月19日 11:31
高校の歴史の授業で挿絵の話になり、『エゲレスのじえんとるめんが、傘を携行している絵があるだろ』という先生の問いかけがありました。
『じえんとるめんは歩道を歩かない』ということも、窓からの飛来に備えるためと、習いました。(←なに習ってたんだか…)
投稿: オッチャン | 2008年5月19日 12:44
オッチャン:
えげれすのじぇんとるめんは、ものすごい早技で傘を開く。
車道を歩いて車 (あるいは馬車) にひかれる確率よりも、歩道を歩いておしっこ浴びる確率が高かったというのも、すごいですね (^o^)
投稿: tak | 2008年5月19日 13:29