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2008年5月30日

これでいい? これがいい?

繊維業界の専門紙に 「繊研新聞」 というのがある。その 5月 29日付の 1面に、良品計画の金井政明社長の文章が載っている。

タイトルは "「これがいい」より「これでいい」 理性的満足感を提供" というものだ。うむ、なるほど、「無印良品」というブランドのコンセプトとして、わかるような気がする。

この記事の中で金井社長は、次のように述べている。

当社がめざしているのは「これがいい」というように嗜好性を誘導するモノづくりではなく、「これでいい」という理性的な満足感をお客様に提供すること。つまり、「が」ではなく「で」 だ。

まあ、しょうがないなというあきらめとか、不満足とか、我慢で消費が起こりうるかというと、これは無理。したがって、我慢とか不満足のない「これでいい」を作ることをビジョンにしてきた。(中略)豪華でも高級でもないのに、「それでいいよね」と言って買ってもらえる商品になってきた。

で、まあ、言いたいことはとてもよくわかるのだけれど、その上で私は、「これでいい」というレトリックにちょっとひっかかってしまうのだ。それって、やっぱり卑下しすぎじゃないか。

私としては、無印良品の商品を買う顧客というのは、決して「これでいい」ではなく、むしろ「これがいい」と思って買っているんじゃないかと思う。「安かろう悪かろう」という商品ではないんだし。ただ安いものが欲しいんだったら、他にもっと安いものがいくらでもある。

もとより「不満足とか我慢ではない」と、同社長はおっしゃっているわけだが、それでも、「これでいい」というのはどうみても消極性の残る選択である。しかし私の見るところ、無印良品の主力顧客はむしろ、積極的な意志で選択していると思うのだ。

彼らは、高級品や豪華な品物の代替品として無印良品を選択しているわけではない。むしろ、存在感を主張しすぎる高級品や豪華な商品には魅力を感じないのだ。ラグジャリー商品と並べて「どっちでも好きな方をあげる」と言っても、無印良品を選んじゃう人のような気さえする。

だって、そりゃ、ライフスタイルだもの。身の回りがシンプルなもので統一されているのに、何か一つだけ妙に浮いたのが混じっているんじゃ、落ち着かないだろう。

"豪華でも高級でもないのに、「それでいいよね」と言って買ってもらえる" ではなく、豪華でも高級でもないから、そんな空虚な方向を向いたマーケティングの産物ではないから、「だからこそ、これがいい」ということがあり得る時代なのではないか。

さらに、無印良品は環境的な配慮も徹底するという。だったらさらに、「これがいい!」で選ぶ人が増えるだろう。プリウスを買うのに「これでいい」なんて人がいないのと同じことだ。

私は無印良品のコンセプトには少なからぬ好感を持っているのである(その割にはあまり持ってないけど)。だからこそ、「これでいい」なんて言わずに、「これがいい」として選ばれる商品なんだという自負ぐらい持ってもらいたいのだ。

足なり直角靴下」なんて、まさに「これがいい!」で選ばれそうな商品だと思うがなあ。私も早速、無印良品ネットストアで注文してしまった。届いたら、モニタリング記事を書いてみようと思う。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

同感です。私の場合、ユニクロはわりと「これでいい」感がありますが(わりと愛用してますけど)、無印良品は「これがいい」です。

投稿: 山辺響 | 2008年5月30日 11:16

山辺響 さん:

ユニクロの 「これでいい」 感ということについて、私も同様です。

この違いは、興味深いですね。

投稿: tak | 2008年5月30日 11:57


 無印良品は思いのほかコスト高ですが、そのデザインのシンプルさと値段の高さはエコな精神に惹かれて買いますからね。まさしくコレがいいという感じ。

 私、子供の頃にデパートのレストランに連れて行って貰った際に(それが特別な行事になりえた時代ですw)、ショーウィンドーの豊富なメニューにめまいがして何を食べて良いものやら頭が真っ白になった事がありまして、何を食べたいと聞かれ
「なんでもいいよ」
と答えた所、何でもいいという事があるものか、何が食べたいのか好きなものをちゃんと言えとひどく叱責された事があります。

 それ以後、「~でいい」とか「~でもいい」とかと言えない人になっちゃって、またそういう物言いについてすごく敏感に反応してしまうので、無印さんにも自身をもって「これがいい」と言って欲しい気持ちがします(笑)

投稿: きんめ | 2008年5月30日 14:34

きんめ さん:

「無印 これがいい」派のコメントが続いて、私だけの感覚じゃなかったんだなと、ちょっと安心しています。

あれって、決して安い商品じゃないし、むしろ、こだわり商品的なところもあるので、やっぱり、少なくとも 「これでいい」 という商品じゃないですよね。

投稿: tak | 2008年5月30日 17:00

はじめまして。
私はコムサなんかも「これがいい」の分類だと思うんですが、私も無印は「これがいい」のほうに入ると思いますね。
無印はモノによってはインド綿など素材はいいものを使ってるし、ユニクロと同視するのはちょっと違うかなあと感じます。

投稿: shinkai | 2008年5月30日 21:39

shinkai さん:

おぉ、またしても 「無印 これがいい」 派が増えましたね。

ただ、こればっかりは好きずきですけど、コムサは私にとっては 「これがいい?」 という位置付けです ^^;)

それから、ユニクロの名誉のために言いますが、ユニクロも決して安かろう悪かろうじゃないです。
それどころか、モノによっては妙なところで必要以上に頑張ったりしてるんですね。
ただ、それが Muji ほどには消費者の心の琴線に触れないのが悲しいところですけどね。

投稿: tak | 2008年5月30日 22:48

>それが Muji ほどには消費者の心の琴線に触れない

ユニクロも質は悪くないと思います。ただ、何となく「ああ、ユニクロ」って分かってしまうような部分がある。

いや、それを言ったら、無印良品だって「ああ、無印」と分かってしまうんだけど……。

※これは「そんな気がする」という程度の問題であって、私にその鑑定眼があるというわけではないんですが。

結局、質的にはそこまでの差はないのだろうけど、ユニクロはユニクロっぽくて、無印は無印っぽい。ブランドイメージと言ってしまえばそれまでなのかなぁ……。

「それ、いいね」
「ユニクロなんだけどね」

「それ、いいね」
「うん、無印」

投稿: 山辺響 | 2008年6月 2日 14:12

山辺響 さん:

>「それ、いいね」
>「ユニクロなんだけどね」

>「それ、いいね」
>「うん、無印」

ははぁ、言い得て妙です。

投稿: tak | 2008年6月 2日 15:19

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