Duck! は、「伏せろ!」
英語で "duck" といえば、もちろん 「アヒル」 のことだが、他に同音異義語として、「ひょいと水にもぐる、身をかわす、伏せる」とか「ズック」とかいう意味がある。
「水にもぐる」という動詞は、アヒルの動作からきたものだろうが、"duck!" と大声で言うと、それは「伏せろ!」ということになる。
昔、米国の都市のセキュリティが今より全然どうしようもなかった頃、つまり、大都市がかなり危険だった頃、私は仕事で初めてニューヨークに行った。
宿泊していたホテルのロビーで銃撃事件があり、「パンパン!」とおもちゃのピストルのような音がしたと思ったら、オッサンが血を流し、目をむいてくたばっていたというぐらいの時代である。
そんな時代だから、出発する前に「安全にはくれぐれも気を付けろ」と、いろいろな人からアドバイスをもらった。その中に 「"Duck!" という声が聞こえたら、とりあえず伏せろ。そうしないと、流れ弾に当たってしまうことがある」という忠告があった。かなりリアリティのある忠告である。
当時は今よりずっと若かったので、流れ弾ごときに当たって死ぬのは嫌だと思ったから、"Duck!" の声で条件反射的に伏せることができるように、頭の中で何度かシミュレーションしてみた。そのせいで、"Duck!" という言葉にはかなり敏感になってしまったのである。
日本の街で突然、"Duck!" の文字が現れることがある。しかも大きな赤文字である。それは「ダック引越センター」という会社のトラックなのだが、なにしろ "Duck" の後にエクスクラメーションマークまで付いているので、人騒がせだ。
私はあの大きな赤文字を見るたびに、銃で撃たれて目をむいてぶっ倒れていたニューヨークのオッサンを思い出してしまい、心中穏やかではいられなくなってしまうのである。
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コメント
言われてみれば、ボクシングの回避動作に「ダッキング」というのがありますね。
知識としては知っていても、「アヒル」との関連づけはできていませんでした(^^;
投稿: 風花 | 2008年6月10日 08:49
風花 さん:
>言われてみれば、ボクシングの回避動作に「ダッキング」というのがありますね。
そうですね。あれは、まさに "Ducking" です。
あのテクニックは、初心者には結構難しいんですよね。相手のパンチから目を離すので、見切ったつもりでも、頭に当たっちゃったりして。
投稿: tak | 2008年6月10日 10:23