「酒離れ」の事情
「若者の酒離れ→女性“登板” 開発・販促の主役に」という記事が目を引いた。酒をがばがば飲む男が減ったので、女性にちまちま飲んでもらおうということのようなのだ。
最近、本当に酒離れが進んでいるらしい。かくいう私も最近酒を飲まなくなって、酒代は若い頃の 2割以下に減っていると思う。
私は、体質的にそれほどの量の酒は飲めない。前はそれでも大分鍛えたから相当飲めたが、近頃はまた酒量が減ってきて、ちょっと飲むといい機嫌になる体質に戻った。とはいえ酒そのものは嫌いではなく、どちらかと言えば好きな方だ。美味しい酒をちびちび飲んで楽しみたい口である。
だが、世の中では迂闊に「酒が好き」なんて言えないのである。「酒が好き」なんて聞くと、待ってましたとばかり大酒に付き合わせたがるオッサンが多いからだ。私は酒は好きだが、酒にだらしのない人は嫌いなのである。
「ちょっと小一時間」とか言うので、仕方なく付き合っても、それで済むなんて事はまずない。2時間、3時間になる。コンスタントに飲み続けて 1時間を越したら、まともな話になんてなるはずがないのである。付き合いきれないじゃないか。
だからいっそのこと、「私は酒は一滴も飲めません」ということにしてしまいたいのだが、今さらそんな白々しいことを言っても、私が飲めないわけじゃないことはみんな知ってるので、そういうわけにも行かない。
だが若い連中、とくに新入社員は、「酒は嫌い」とか「体質的に飲めない」とか公言してしまう方が楽なので、そういうことにしているのが案外多いと思う。
実際には親しい友達とはちびちび飲んでたり、あるいはカクテルにはめちゃくちゃウンチクがあったりしちゃうのかもしれないが、今の世の中、表向きには「一滴も飲めません」ということにしてしまう方がずっと楽だ。大酒飲みに延々と付き合わされずに済むからである。
「社内の飲みニケーションは付き合いとして重要で、社会的なことを学ぶ機会になる」なんていう人も多いが、それも人によりけりだ。確かに上手に飲み食いしながらいろいろなことを教えてくれる先輩もいないではないが、80%は、一人で酒を飲むのがわびしいので、人を巻き添えにしたがるだけのオッサンである。
さらに良くないのは、一緒に大酒を飲んで妙な共犯関係を構築しておきたいという意識のオッサンである。そんな人とは、距離を取って付き合う方がいい。そうでないといつの間にか、周囲からは芳しくない派閥の一員と目されてしまっていたりする。
一緒に酒を飲むことで、社内の非公式な情報や世の中のアヤを知ることができるなんていう向きもある。しかしそんなことは、ちょっとアンテナを研ぎすまして意識的になることで、酒なんて飲まなくても知ることができる。
私の見るところでは、酒で神経が鈍感になってしまうために、気付くべきところに気付かないで失敗してしまうことの方がずっと多い。
私の場合、近頃では「車を運転して帰宅しなければならないので」といえば、大酒には付き合わなくてもすむようになった。ありがたいことである。酔っぱらい運転への罰則強化は、思わぬ効果をもたらしている。
というわけで、「若者の酒離れ」という現象には裏があると思うのである。だから、だらしなく延々と飲む酒は売れなくなるだろうが、ちょこっと楽しむ酒は、ちょこっと売れるだろう。お酒のメーカーとしては、大量に飲んでもらわないと儲からないだろうが。
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コメント
酒にあんまりよい思い出がないので、「酒は飲めません」ということにしています。
おかげでだれからもお誘いはありません。
お酒にだらしのない方が多すぎです。
こっちはほとんど素面だし、いつもどおり辛辣なものいいをいつものようにしているだけなのですが、酔っ払ってる相手は、日ごろ大人しい猫のような人なのですが、日ごろの鬱憤が爆発して、「表でろ!」なんていわれたことが、嘘じゃなく、数知れずなんで、もうすっかり酒席がいやになったのでした。
ご指摘のように飲酒運転の罰則規定強化のせいか、とんとお酒の機会が減って助かってます。
お酒を鯨飲する人って、仕事のろくさい方が多いような気がします。
投稿: osa | 2008年6月26日 00:22
以前、古い体質の会社に勤めていたことがあります。
上司のお酒には付き合うのが当たり前。
上司の勧めるお酒は絶対飲まなければいけない。
まだアルコールに弱い年頃に限って、上司にそういうお酒の飲み方を強要されているのを見ました。
そしてそんな上司に付き合い、グデングデンに酔って吐いたり倒れたりすると「自分で酒の量をセーブしろ」だの「他人に迷惑かけるな」などさらに説教されていました。
ひどいと思いました。
それだったら最初から「お酒は飲めないんです」って言っているほうがいいですよね。
最近の若者の酒離れは、横暴な上司への、若者の静かな自己主張であるように思います。
お酒は、飲み方というのがあって、まだ上手に飲めない人に強要するものではないと思ってます。
それか、倒れるほど飲める安心感が無いというか(治安の悪さや上司に)・・上司との信頼関係も薄そうですね。
派閥に入りたくないというのも頷けます。
若者の酒離れは、上司ぐらいの年齢の人と深く交流したくない意識の表れだ、というのを前にテレビで見ました。
投稿: シロ | 2008年6月26日 01:40
osa さん:
お酒を飲むにも、相手によりけりで、楽しく飲める場合もあるにはありますが、だらしなくなっちゃうことが多すぎますね。
酒を飲んでだらしなくなって、周囲にもたれかかって甘やかしてもらいたいという欲求があるんだと思います。
だらしなくもたれかかるやつは、いつも決まってます。
決まっているのに、団塊の世代以上の年代では、それを過剰に許してしまったり、もたれ合ったりするのを良しとする文化がありますね。
結局、酔わずに素面でいる者がいつももたれかかられることになるんで、付き合いきれないわけです。
>お酒を鯨飲する人って、仕事のろくさい方が多いような気がします。
全部が全部というわけじゃありませんが、その傾向は私も感じます。人にもたれかかるのが習い性となっていて、自分でささっと処理できないからだと思います。
投稿: tak | 2008年6月26日 10:43
シロ さん:
このエントリーは、もしかしたら反感を買っちゃうかなと思っていましたが、逆のトーンのコメントが 二つもついて、安心というか、びっくりというか、世の中、少し変わったなと思っています。
>最近の若者の酒離れは、横暴な上司への、若者の静かな自己主張であるように思います。
確かに、お酒は過剰な上下関係の中では飲みたくないですね。
いい意味での「無礼講」でありたいものです。
そのための酒席じゃないかと思いますし。
投稿: tak | 2008年6月26日 10:48
お邪魔します。オッチャンです。
近年は、公民館(公会堂/集会所)で、近所のオイチャン方が集って飲むという話を聞かなくなりましたね。
農村地域では、この文化は健在なのでしょうか。
投稿: オッチャン | 2008年6月27日 12:27
オッチャン:
>近年は、公民館(公会堂/集会所)で、近所のオイチャン方が集って飲むという話を聞かなくなりましたね。
>農村地域では、この文化は健在なのでしょうか。
農村地域では、まだ忘年会とか、お祭りや自治会総会の直来とか、いろいろあると思いますよ。
なかなか楽しくやっているようです。
投稿: tak | 2008年6月27日 16:21