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2008年6月27日

衣料品業界からみた中国の裏事情

私のメシのたねであるアパレル業界内の話で恐縮だが、服を着ないで済む人はいないので、身近な問題としてお付き合い願いたい。

最近は日本国内で流通する衣料品の多くが中国製で、そのシェアは 7割を超えたといわれている。この中国製衣料品の品質問題が、業界の頭痛の種なのだ。

中国製品の品質というのは、別に衣料品に限らず問題が多いが、自分の関係する業界内の問題は具体的に耳にするので、やはりインパクトが大きい。ことは技術的な問題ではなく、あの国の人たちの精神構造にあるのではないかと思われるほどだ。

縫製が雑だというクレームは、これはもう、数え上げればきりがない。まともな縫い代が確保されていないので、本来縫い合わされているべき部分が穴になっていたりする。これなんか、縫い代をけちって用尺を節約し、余った生地を他に流用するためとしか思われない。ロットが大きいと、塵も積もればなんとやらで、かなりの量を流用できるだろう。

さらに、ズボンのサイドのステッチが中のポケットを縫い込んでしまっていたり、腕や脚の部分の裏地が中で一回転して通せんぼしていたりするのもある。どうやったら、こんなふうに縫えるのか、不思議になるが、中国の縫製工の賃金は出来高制なので、失敗してもお構いなしにどんどん流してしまうのだろう。

「両側に右袖が付いている」なんていう例もそれほど珍しくないが、やはり前述の事情で、途中で失敗に気付いても気にしないという事情によると思われる。両方に右袖の付いた服が 1着出荷されたら、当然の結果として両方に左袖の着いたのも 1着存在するだろう。

ベビー服のカバーオールで、ドットボタン(ホックのようなタイプ)を外そうとして引っ張ったら、凸が凹から抜けず、ボタン自体が生地から外れてしまって、生地の方に穴が残ったなんていうクレームは、ものすごく多い。多分、日本全国で 1日に何百件と起きていることだと思う。

これなんか、以前は生地が弱いのと、若いお母さんの取り扱いが荒いせいだと思っていたのだが、よく調べると、ボタン取り付けの際にきちんと位置決めのコマを使わずにテキトーに付けるので、中心線が合わず、外そうとすると無理な力がかかってしまうためのようだ。

全国の若いお父さん、お母さんは、ベビー服のドットボタンを外すときは、くれぐれも慎重に一つずつ外してもらいたい。そうでないと、生地に穴が開くから。それから、直接肌に触れる服を着せる前には、念のため一度洗濯しておく方がいい。以前に書いたこんな問題も気になるので。

ドットボタンだけでなく、普通のボタンもかなりいい加減に付けるので、外出から帰ったら 5個のボタンのうち、3個が消えていたなんてのも珍しくない。中国製の衣料品を買って、ボタンの取り付けが甘いと思ったら、自分で補強しておくことをお奨めする。

さらに問題なのは、企業ぐるみの不正としか思われないケースだ。

近頃、ドライクリーニング指定の衣料品を、洗濯屋さんが指定通りにドライクリーニングしたら色落ちしてしまい、一緒に洗った他の服まで染まってしまったという例が多く報告されている。

これを調査してみると、日本のメーカーは仕様書で染料による染色を指示しているのに、中国側が勝手に顔料で染めてしまっているというのが原因ということが多い。顔料で染めたものをどっとドライクリーニングしてしまったら、これはやばい。

これは、顔料の方がずっと安いという事情による。勝手に安く上げてしまい、工賃の差額を横領してしまうのだ。それではやばいというので、日本側が必要量の染料を確保して送りつけてやると、敵もさるもの、その染料を他に転売してまで、安い顔料を買ったりする。

彼らはどうも、顧客との長期的信頼関係を築いておこうなんていう意識がないようなのだ。儲けられるうちに、手段を選ばず儲けておこうということらしい。これに関しては、中国人自身が、今の共産党独裁体制が長くは続かないと感じているためと指摘する人もいる。

こうした事情を知っていると、四川大地震で救援物資を軍が横流ししていると聞いても、全然驚かない。むしろ、そうなるものと初めからわかっているので、四川の被災者には気の毒だが、具体的な行動を起こす気になれないでいるのである。

まあ、日本においても食品偽装や耐震強度偽装の問題があって、五十歩百歩かもしれないが、少なくとも、衣料品のほとんどが国産という時代 (つい 15年前には、中国製なんて探してもなかなか見つからなかった) には、こんな問題はほとんどなかった。むしろ 「過剰品質」 なんて言われていたものだ。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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