歩行者天国中止の意味
秋葉原の歩行者天国が、例の事件の影響で「当分の間」中止になった。この「当分の間」というのが、なかなかのくせ者である。
歩行者天国を中止にするだけの十分な理由、つまり、歩行者天国のデメリットが大きいなら、恒久的にやめてしまえばいい。しかしそうではないのは、ビミョーなところだからだろう。
歩行者天国は、休日の秋葉原の集客に少しは貢献していたのだろう。しかし、集まるのはオタクが多いから、セレブとか小金持ちオバサンのように金を使いまくってくれるわけじゃない。売上げ増加に貢献してきたかといえば、それはかなり疑問だ。
さらに、歩行者天国で変てこなパフォーマンスをする連中も多くなってきていたので、公序良俗を乱すととして反対してきた人も結構いる。お膝元の千代田区議会議員にもいる(参照)ぐらいだから、一定の勢力ではあるのだろう。
こうした「方向者天国反対派」は、恒久的な廃止を求めているのだろうが、そうはならずに、「当分の間、中止」となっているのは、やはり歩行者天国が秋葉原の「顔」となって、一定のプロモーション効果を発揮してきたからだろう。
ただ、その「プロモーション効果」というのは、ものすごく「気分の問題」というのがある。それだけに、例の事件で「秋葉原コワイ」「ホコ天コワイ」というイメージが生々しいうちは、止めといた方がいいだろうと、これまた「気分の問題」的なものが、「当分の間」の背景にある。
それに最も大きいのは、歩行者天国を管理する都公安委員会の立場である。あれだけの事件が起きて何もせずにいたというのでは、ちょっと聞こえが悪いので、一応、「それなりの対処はしましたよ」というアリバイ作りのためにも、中止決定をしないわけにはいかなかったのだろう。
つまり、都公安委員会と地元の都合がなんとなく一致したための「クールダウン」期間と思えばいい。
しかし、都公安委員会といういかめしいお役所の決定である以上、歩行者天国歓迎派が今後再開を求めるためには、公安委員会を納得させるだけのもっともらしい条件を付けて意思表示をしなければならないだろう。
その「もっともらしい条件」のさじ加減次第では、秋葉原を中心とする「オタク文化」の、今後の発展が左右されかねない。今の秋葉原のかなりの部分は「オタク文化」に依存しているのだから、これをつぶしてしまうような形での歩行者天国再開では、あまり意味がない。
私自身はオタクじゃないから、どうでもいいようなことだけれど、つぶしてしまうのはもったいないような気もする。それに、オタク文化は既に、これだけのベクトルをもってしまったのだから、発信のためのステージを用意しておいてあげないと、妙にアングラ的でダークな方向に沈殿してしまいかねない。
それって、かえって危ないんじゃなかろうか。校則が厳しくて、何でも禁止という学校ほど、実際には乱れているというのと同じである。
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コメント
オタクはそれなりに平均年齢も高く、独身が多い上、
衣食住(+デート代?)を削ってでも一つの趣味にお金をかけるので、
彼らが秋葉原で落とす金は侮れないですよ。
彼らは歩行者天国が無くなっても秋葉原に集まると思います。
投稿: リュウT | 2008年6月16日 20:26
リュウT さん:
>彼らが秋葉原で落とす金は侮れないですよ。
どこまでを 「オタク消費」とするかで、違ってくるでしょうけど、広く定義すれば、確かにかなりのものかもしれませんね。
"otacky consumption" (あるいは "otacky expenditure" かな?) という分野を定義づけてみたくなりましたが、ちょっと大変かも。
>彼らは歩行者天国が無くなっても秋葉原に集まると思います。
そりゃあ、集まるでしょうね。でも、集まり方の中身というか、雰囲気というか、いろいろ位相が違ってくるように思います。
投稿: tak | 2008年6月16日 22:49
実用的な面はともかく、「オタクの聖地」といった意味合いが薄れて、オタク文化に対して社会的な関心が向けられなくなるのではないかといった感じでしょうか。
昨今のオタク文化は大分様変わりしていますよね。
ニートやひきこもりが社会現象として取り沙汰され、派遣社員の問題が提起されるようになりましたが、そういった層の若い人たちのコミュニティとして機能している面があるように思います。
生粋のオタクの人はともかく、そうした受け入れ先を求めて染まっている人にとっては、手痛い措置かもしれませんね。
投稿: 夜の指揮者 | 2008年6月17日 07:14
夜の指揮者 さん:
>生粋のオタクの人はともかく、そうした受け入れ先を求めて染まっている人にとっては、手痛い措置かもしれませんね。
少なくとも、「つまんないな」 という気はするだろうと思いますね。
投稿: tak | 2008年6月17日 19:50