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2008年7月15日

学生が読むなら留年覚悟の 50冊

やや旧聞になってしまうが、6月 23日付の Yahoo ニュースに、「学生が読むべき 50冊」 というシンポジウムの記事がある。

東海大学湘南キャンパスで、文学部文芸創作学科の教員 5人と芥川賞作家の川上未映子さんをパネリストとして、古今東西の名作の中から、50冊を選出したのだそうだ。

その 50冊は、リンク先に飛べばわかるが、いつ削除されてしまうかわからないので、念のため、下にコピペしておく。

【日本】
 万葉集▽源氏物語(紫式部)▽平家物語▽徒然草(吉田兼好)▽おくのほそ道(松尾芭蕉)▽歎異抄(唯円/親鸞)▽心中天網島(近松門左衛門)▽山椒大夫・高瀬舟(森鴎外)▽吾輩は猫である(夏目漱石)▽たけくらべ(樋口一葉)▽武蔵野(国木田独歩)▽金色夜叉(尾崎紅葉)▽瘋癲老人日記(谷崎潤一郎)▽病床六尺(正岡子規)▽きりぎりす(太宰治)▽堕落論(坂口安吾)▽遠野物語(柳田國男)▽様々なる意匠(小林秀雄)▽豊饒の海(三島由紀夫)▽富士日記(武田百合子)▽第七官界彷徨(尾崎翠)▽春宵十話(岡潔)▽「いき」の構造(九鬼周造)

【海外】
 紅楼夢(曹雪芹)▽千夜一夜物語▽イリアス(ホメロス)▽聖書(旧訳・新訳)▽ハムレット(シェークスピア)▽嵐ケ丘(エミリー・ブロンテ)▽インドへの道(フォースター)▽フィネガンズ・ウェイク(ジェイムズ・ジョイス)▽ナイン・ストーリーズ(サリンジャー)▽タイタンの妖女(カート・ヴォネガット)▽幸福論(アラン)▽危険な関係(ラクロ)▽感情教育(フローベール)▽赤と黒(スタンダール)▽夜の果ての旅(セリーヌ)▽失われた時を求めて(プルースト)▽ファウスト(ゲーテ)▽資本論(マルクス)▽ブッデンブローク家の人々(トーマス・マン)▽精神分析入門(フロイト)▽変身(カフカ)▽ドン・キホーテ(セルバンテス)▽ゴッホの手紙▽魅せられた旅人(レスコフ)▽白痴(ドストエフスキー)▽カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)▽戦争と平和(トルストイ)

いやはや、すごいエントリーである。これらを全部読もうと思ったら、学生時代の 4年間は、合コンも何もできないんじゃないかと思う。それどころか、『源氏物語』と『失われた時を求めて』もきちんと読破しようなんて思ったら、きっと留年しちゃうことになるだろう。『大菩薩峠』まで入っていたら、人生終わっちゃうところだった。

ここに挙げられた 50冊のうち、自分はどのくらい読んでいるだろうかというのが気にかかって、ちょっと数えてみた。結果は以下の通りである。

●読了したもの
【日本】
▽徒然草▽心中天網島▽山椒大夫・高瀬舟▽吾輩は猫である▽遠野物語
【海外】
▽ハムレット▽嵐ケ丘▽タイタンの妖女▽幸福論▽感情教育▽赤と黒▽精神分析入門▽変身▽カラマーゾフの兄弟▽戦争と平和

う~ん、50冊のうち、全部読み終えたのは 15冊しかない。しかし、読了してはいないものの、かなりの部分まで読み進んだものというなら、他にもあるので、以下に挙げてみよう。

●未読了
【日本】 ▽武蔵野▽堕落論▽「いき」の構造

【海外】
▽聖書(旧訳は読破したが、新訳はまだ読んでいないところが残っている)▽ファウスト

あぁ、これらを足しても、20冊。まだまだ半分にも満たない。じゃあ、おまけして、ちょこちょこ拾い読みしているというのも足してみよう。

●ちょこちょこ拾い読みしたもの
【日本】
▽万葉集▽源氏物語▽平家物語▽おくのほそ道▽歎異抄▽金色夜叉▽病床六尺
【海外】
▽千夜一夜物語▽イリアス▽失われた時を求めて▽資本論▽ドン・キホーテ

これで、合わせて 32冊。ようやく 3分の2 近くというところである。思い返してみれば、これらのほとんどは 30代前半までに読んだ。ということは、それ以後はかなり読書量が減っているということになってしまう。

それ以上にショックなのが、1行も読んだことがないどころか、初耳のタイトルというのが結構あるということだ。それにしても、識者という人たちが寄ってたかって選んでしまうと、こんなエントリーになってしまうのかと、ちょっとため息が出てしまう。

私が学生諸君に薦めるとしたら、相当違ったものになるだろうなあ。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

かなりクセのあるセレクションという気がしますね……(笑) 特に日本文学が古典に偏りすぎという気がします。ちなみに私が読破したのは7作品しかありませんでした。

投稿: 山辺響 | 2008年7月15日 11:51

山辺響 さん:

>かなりクセのあるセレクションという気がしますね……(笑) 

大学の先生 5人と、「本なんかあんまり読んでない」 のがウリの 「文筆歌手」 というミスマッチなパネリストが選んだものですからね。

>特に日本文学が古典に偏りすぎという気がします。

私が選んだら、日本の古典は 『古事記』 だけにしちゃいます。

投稿: tak | 2008年7月15日 12:33


だいたい「必読書」というきめ付けがいやですね
そのくせ、興味津々ではあるのですが (笑)

たしかに癖のある選考で、そのくせ「読むべき」だなんて僭越だな~

武田百合子の「富士日記」は、私も好きですが必読書かどうか

「ドン・キホーテ」ってのも、どこが名作なのかわからない
わからないから読んでいませんが (笑)

1)「資本論」や「精神分析入門」などは、たしかに世界を変えた著作ですが、だからといって読む必要があるかな~?
ダイジェストや解説本を読んだ本がいいんじゃないでしょうか?

2)この「読むべき本」の基準が「文学として」なのか、「エポックメイキングな思想」なのかがはっきりしない

3)その時代には意味があった本でも、現代においても読むことに意味があるかどうかは、別問題ですよね

4)本当に読むべき価値のある本と、ちょっと面白い本が混在している

その辺を整理しないまま「読むべき」だなんて見識が問われる
馬鹿物達め! (笑)

「源氏物語」は何度もトライしたのですが、どうしてもだめです
あれは女性向けのメロドラマでしょう
私は紫式部っていやな女だったろうと思います
清少納言なら友達になりたいけれど
いや、彼女も高ピーかな? (笑)

ほかにいろいろ書きたいことがるので、またこのテーマ、拉致させていただきます (笑)

投稿: alex | 2008年7月15日 23:48

庄内さん

このスレをリンクしたいのですが、以前ご教示くださった方法を忘れてしまいました

恐縮ですがもう一度教えてください

投稿: alex | 2008年7月16日 03:44

alex さん:

>3)その時代には意味があった本でも、現代においても読むことに意味があるかどうかは、別問題ですよね

結局、これに尽きるんじゃないかという気がします。文学史、あるいは哲学史的に意味があるというのは、それは、その学問の範囲内のことで、門外漢にとっては、それより他にもっと読むべきものがあるだろうということで。

まあ、人間の器を広げるという意味では、何でもかんでも多く読んでおくに越したことはないんでしょうが、読んでばっかりいても、実体験をする暇がなくなるし。

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投稿: tak | 2008年7月16日 07:47

 「学生が読むべき」(笑)

 もし、この”べき”というのを一般常識としてこれくらい知っておくのが教養というものだろうという事だと、ちょっと本の選び方が微妙な気もします。(私は多分、この中では10冊も読んでないような気がする)

 学生さんなら、「今!この本が面白い!50冊!」とかの方がいいんじゃないかなぁ。何がどうって、”本を読むのが楽しい”という事を知って欲しいし、楽しければそのうち上の50冊の中から興味のあるものも読んでいくのでしょう。

 ライトノベルがそこそこに売り上げがあって、若い人も決して本や活字離れしているばかりでもないと思う。私自身は本の入り口は小学生の頃の江戸川乱歩・少年探偵団シリーズだったし、中学の頃の星新一のショート・ショートだった。物語を読む事の面白みにふれて、本が好きになりましたからね。

投稿: きんめ | 2008年7月16日 11:32

きんめ さん:

たしかに 「べき」 というのはひっかかりますね。余計なお世話という感じで。

「ライトノベル」 というのは、個人的には、どちらかといえば小説よりはマンガに近いジャンルと思っています。

「だったら、俺はホンモノのマンガを読むぜ」 という感じで、そして、字を読むんだったら、ライトでないノベルを読みたいなと。

投稿: tak | 2008年7月16日 21:47

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