京都で歴史を思い、時間を忘れる
京都に来ている。今日に予定されている仕事のためだが、昨日が祝日だったので、前泊ということにした。
真夏の京都の暑さは、これまでにも嫌と言うほど経験しているので、本当は貴船とか大原とか、京都の北の方の涼しいところに行きたかったが、時間的余裕がない。
それに、貴船には一昨年、大原は昨年に行ってしまったので、昼過ぎに京都入りして飛んでいくほどのモチベーションもない。いっそのこと、夏の京都の暑さをしっかりと経験するのもいいかと、午後 1時過ぎに新幹線京都駅のホームに降りて、そのまま西本願寺を目指した。
わが家の宗旨は浄土真宗大谷派なので、京都に来るたびにできるだけ「お東さん」(東本願寺)には行くようにしているのだが、考えてみれば、そのすぐ近くの「お西さん」には、これまで一度も行ったことがないのだった。
京都駅から東西の本願寺までは、地下鉄やバスに乗るほどの距離ではない。しかしながら、歩いてすぐというわけでもない。かなり中途半端なのだが、とにかく一泊分の荷物を背負って、猛烈な日差しの下をとぼとぼと歩き始める。
汗が噴き出す。くらくらする。京都タワーを過ぎ、七条の通りを西に向かって、ようやく西本願寺に着いた。着いてみると、向かって左側の御影堂は今、平成の大修復の真っ最中で、阿弥陀堂しか入れない。東本願寺と同じで、こんなところで歩調を揃えているのかと思う。
阿弥陀堂に十分ほど座って、近くの島原遊郭の跡を歩いてみようと思う。だが、歩き始めてすぐに後悔した。
暑すぎる。やばい。このまま歩き続けたら、ほぼ確実に熱中症になる。ペットボトルの「おーいお茶」を飲みながら、その飲んだお茶がすぐに汗になって噴出するのを感じる。
頭がぼうっとなりながら京都駅前に戻り、とにかく、冷房の効いた乗り物に乗らなければと思う。ふと、自分はまだ大徳寺に行っていなかったことを思い出し、A3 乗り場からバスに乗り、大徳寺を目指す。
バスの中は、さすがにエアコンのおかげで少しは涼しい。ようやく人間に戻ったような気持ちになる。それだけのことで「ああ、人間ていいな」なんて思ってしまう。幸福とはスタティックな状態ではなく、ダイナミックなベクトルである。
大徳寺というのは、広大な境内に 21の塔頭がある。大徳寺という名前の大きな本堂があるというわけではないみたいなのだ。そして 21の塔頭のうち、4つに拝観できる。境内に足を踏み入れると、急に涼しくなる。
入り口の総門に近い龍源院は、最後に寄ろうと思い、瑞峯院、大仙院、高桐院の 3つの塔頭を順に参拝する。単純に見れば、どこも侘びさびの極致みたいな建造物と枯山水がいい。しかし心してみると、500年前の諸大名、千利休、一休和尚のさまざまな軋轢も偲ばれる。
千利休も、ただただ無心に侘びさびの境地を追求していればいいというわけでもなかったのだろう。なにしろ、パトロンは野心に燃えた大名たちである。その中を上手に泳ぎつつ、自分の哲学的境地を磨くのは、なかなか大変なことだったろう。最後には秀吉に切腹を命じられてしまったのだし。
そんなことを思い、そしてしまいには忘れ、座ってぼうっと茶室、書院、枯山水を眺めているうちに、いつの間にか 4時半になり、時間切れ。これだから、京都のお寺巡りは、いくら時間があっても足りない。奈良は靴を脱いで上がるお寺さんが少ないからサクサク廻れるが、京都は長っ尻になる。
というわけで、4つの塔頭のうち、龍源院には寄れなくなってしまった。残念。また別の機会に来てみたい。
ホテルに入ってテレビのニュースをみると、京都の気温は 35度を超えていたらしい。道理で頭がクラクラするわけだ。時間の計算も忘れるわけである。
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コメント
お邪魔します。
大学生のころ、自動車で京都を訪ね、大原三千院だったと思いますが、縁側(という表現であっているのでしょうか?)で、ボーっと2時間近く、庭園とその奥の林(表現あっているのでしょうか?)を眺めていました。
あのころは、時間がありました。(その代わり失ったものは数多…。単位とか単位とか単位とか…。)
投稿: オッチャン | 2008年7月22日 12:50
オッチャン:
大原のお寺は、まさに、時間がいくらあっても足りませんね。
三千院の奥の方のお寺、宝泉院、勝林院とか、音無の滝とかも、一日でもいたくなっちゃいます。
京都は、けっこうコワイところです。
投稿: tak | 2008年7月23日 00:39
確か一昨年の春に大徳寺を訪れて、「ここは禅寺テーマパークか!?」と感じた覚えがあります。ふだん公開されていない塔頭もあり、全部見尽くすには何度も足を運ばないと無理そうですね……。
投稿: 山辺響 | 2008年7月24日 09:48
山辺響 さん:
>「ここは禅寺テーマパークか!?」と感じた覚えがあります。
言い得て妙ですね。何しろ広いし。
それに、うっとうしい歴史的な曰く因縁ありの建物やら何やらが多くて、血なまぐさいサイドストーリーだけでも、頭クラクラしそうだし。
(これは大徳寺に限らず、京都の多くのお寺さんで言えることですが)
投稿: tak | 2008年7月24日 11:35