地震の縦揺れと横揺れの謎 2
日付の変わる直前に、ばったりと気絶するかの如き眠りに入ったので、未明の地震にはちっとも気付かなかった。
妻が「ずいぶん長く揺れるわねぇ」と声をかけたら「うん」と返事をしたというのだが、全然記憶にない。朝に地震のニュースを聞いたときは、狐につままれたような気がした。
テレビを見ていたら地元局の女子アナが、現地の人にインタビューしたところ「最初に大きな横揺れがあって、その後、縦揺れが長く続いた」 と話していたと、興奮気味に伝えていた。しかし、これってあり得ない話である。
今さら言うまでもなく、地震で最初に伝わるのは P波といわれる縦波で、やや遅れて S波の横波が来る。縦波は進行方向の揺れだから、地表では縦方向の揺れになり、横波はそれとは垂直方向の揺れだから、横揺れになる。
だが今回に限らず、地震報道を聞いていると「最初に横揺れがあって、次に縦揺れが続いた」という地元住民の証言の紹介されることが少なからずあり、そのたびに首をひねってしまう。このことは、実は 3年前の 2月にも書いている(参照)。
地震の巣窟と言われる茨城県南西部に住み、年に何度も震度 4クラスの直下型地震を体験する私は、「最初に来るのは縦揺れ」と断言する。直下型であるほど、下からズーンと突き上げるような縦揺れがまずあり、その後、おもむろにユッサユッサと横揺れに移行する。
震源地から離れると、最初の縦揺れはそれほど大きなものではなく、横揺れが追いついてくるまでのタイムラグも長い。だから、私は突き上げるような縦揺れがあると、「あぁ、いつものやつだ」と、かえって安心する。
小さな縦揺れが長く続いた後に、それなりの横揺れが来ると、どこか遠くで大地震が発生したという場合が多いから、実家のことが心配になって、すぐにラジオのスイッチを入れる。これは身に付いた習慣にまでなっている。
それだけに「初めに横揺れがきて、その後に縦揺れが続いた」という話を聞くと、「あまりの揺れの大きさに、頭の中が相当に混乱しちゃってるんだろうなあ」と、同情さえしてしまうのである。
実際、ユッサユッサとかなり大きく横に振れる地震が収まったばかりの時に、「いやあ、『縦揺れ』がすごかったねぇ」なんて言い出す人もいて、「この人、決して嘘つきじゃないんだろうけど、今後は言ってることをあまり真に受けないようにしよう」なんて思ったりする。
感覚と言葉というものは、きっちりと定義づけてリンクさせておかないと、同じことでも人によってバラバラの話になり、わけがわからなくなる。
3年前のエントリーを、私は以下のように結んでいる。
「あれって、自分の体の向きの、左右に揺れたら『横揺れ』、前後に揺れたら『縦揺れ』って言ってるだけじゃないか」なんて言う人もいる。確かに、体の前にあるものにつかまったら、「縦方向の揺れ」 と錯覚することもあるかもしれないが、ちょっとなぁ。
この時は「ちょっとなぁ」と疑問を呈しているが、今回のコメントを聞いて、もしかしたらあり得るかもしれないと思ってしまった。
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