北京で終わってしまったオリンピック
どういうわけだか、北京オリンピックの開幕は 8月 4日と思いこんでいたので、5日のスポーツ紙トップが「山本昌 200勝達成」だったことに、狐につままれた気がした。
まあ、4日開幕と思ってるくせに、全然テレビを見てないというのも変かもしれないが、今回のオリンピック、あまり関心を持てないのだ。
テレビかラジオが「北京オリンピック開幕は 8月 8日」と言った「ようか」を「よっか」と聞き違えてしまったとしか思えないのだが、それにしても、4日になっても世の中がそんなような雰囲気じゃないことに、少しも疑問を抱かなかったというのは、我ながら間が抜けている。まあ、ことほど左様に無関心なのだ。
考えてみれば、私がオリンピックの開会式をリアルタイムでテレビで見たなんていうのは、44年前の東京オリンピックだけだ。だから、オリンピックの開会式中継を見ないのは毎度のことで、それが今回の北京オリンピックに私がことさらに無関心であるという証明にはならない。
ここまで考えて、ようやく気が付いた。私は北京オリンピックに「無関心」というよりは、むしろ「冷淡」でいたいと思っているようなのである。
同じ「見る気がしない」という態度でも、我が家の末娘などは全然テンションが違う。彼女は自分の好きなバレーボールだけは何が何でも見たがるが、オリンピックそのものには元々関心が薄い。だから、前回のオリンピックの開催地がアテネだったということすら、すっかり忘れている。
オリンピックというイベントに日本で一番強い思い入れを持っているのは、もしかしたら私の年代なのかもしれない。それは、小学校 6年という一番多感なときに、あの東京オリンピックが開かれたからといっていい。
あの年の少し前から日本は高度成長が始まり、オリンピックの年になってようやく、大抵の家で白黒テレビが見られるようになった。高度成長とテレビと東京オリンピックは、記憶の中でワンセットなのである。
あの年は、カレーライスのありがたみが急に薄れてしまった年である。それまでは誕生日でもなければ食えなかったのが、ふと気が付くと、普通に夕食で食えるようになっていた。我が家の茶の間に初めて登場したテレビの中でも、カレーライスは普通の夕食だった。
日曜日の夕方には、しゃぼん玉ホリデーで植木等の「お呼びでない?」に笑い転げ、秋にはオリンピック開会式を見ながら、心から興奮していた。そして「これからの時代、とりあえずは英語だ!」と思った。可愛いものである。
その後、時差のせいで実況が見られなかったり、貧乏学生時代にテレビが買えなかったり、仕事に追いまくられてオリンピック開会式どころではなかったりしながら、あっという間に 44年が経ち、10回分の夏期オリンピックの開会式を見損なったが、「オリンピックは特別のもの」という意識は、心の奥底で変わらなかったように思う。
ずっと前からその商業主義やヨーロッパ至上主義には反発を感じていたが、私の心の中のオリンピックは辛うじて持ちこたえていた。それはとりもなおさず、あの東京オリンピックの残像だった。
ところが今年になって、私の中で 40年間持ちこたえてきた幻想が、すっかり崩壊してしまったのである。それは賞味期限が来たというより、図らずも東京から数えて 11回目の北京の特殊性が、何かの決定的な引き金を引いてしまったようなのだ。
だから悪いけど、次の次のオリンピックの東京誘致なんてことも「勝手にやれば?」ってなものだ。かわいさ余って憎さ百倍なのである。
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コメント
■「IOCは中国のネット・アクセス規制を断じて容認しない」とロゲ会長が断言-北京は欧米の謀略にはまったか?
こんにちは。きっと潜在意識の中で忌避していたのかもしれませんね。その気持ちよくわかります。北京オリンピックおかしなことばかりです。たとえば、ロゲ会長のこの発言全くおかしいです。順番が違います。いまさら、IOCがネット・アクセス規制を容認しないなどいうのではなく、本来ならばネット・規制をするような国ではオリンピックを開催すべきではないはずです。しかし、開催することになったのは、実は欧米の謀略かもしれません。
かつての、ベルリンオリンピック、モスクワオリンピック、ベオグラードオリンピックを開催した国、ナチスドイツ、ソビエト連邦、ユーゴスラビアは、すべてオリンピック開催後、ほぼ10年以内に崩壊しています。北京オリンピック開催の背後には、こうしたことを踏まえた欧米のしたたかな戦略があるのかもしれません。オリンピックを開催することにより、中国を弱らせ、さらに諜報活動を行うことにより、その覇権を弱体化し、あわよくば崩壊させようという欧米の意図がみえかくれします。ここでは、詳しくはコメントできせん。詳細は、私のブログを是非ご覧になってください。
投稿: yutakarlson | 2008年8月 6日 11:28
はあ?
↑は一種の陰謀説でしょうか
私は東京オリンピックをテレビで夢中になって見ました
(当時は日本中がそうだったと思います)
東京で大学近くの喫茶店で当時、確か開始されたばかりだったと思うカラー放送で見た記憶があります
実に大きな、威風堂々としたテレビセットでした
それからどうして帰省したのか、記憶にないのですが、大阪の実家でもテレビにかじりついて見ていました
実はソ連の女子体操のアスタホアという選手がすっかり好きになってしまって、女子体操の放送はすべて見ました(見てしまいました)
(ひょっとしたら、喫茶店ではそれほど粘れないので、アスタホア選手を見たくて帰省したのかもしれません)
反省!
(ひょっとしたら大学もオリンピックの期間中、休校になっていたのかもしれません)
チェコのチャフラフスカやソ連のラチニナなどのキビキビとした機能型の選手とちがって、優雅で上品なスタイルで演技する金髪の選手でした
(平均台で優勝)
この頃「東京オリンピック」(市川崑監督)の映画がケーブルテレビなどでたびたび放送されます
久しぶりにアスタホア選手の麗姿を拝見できるのがうれしい
ただ、彼女のお顔のアップが欲しいんだけれど・・・
反省!
女子陸上800メートル優勝のアン・パッカー選手(英国)、美人だな~
だけど、優勝後、抱き合って喜ぶ婚約者が憎い
反省!
失礼しました
投稿: alex | 2008年8月 6日 12:37
yutakarlson さん:
謀略かどうかは別として、北京オリンピックでは確かに、北京側の期待とは正反対の効果があらわになっているというのは事実ですね。
謀略論に関しては、私は、ある程度の謀略的行為は、日常茶飯事的に行われていると思っています。
しかし、壮大な構想の謀略は、それを計画実行したところで、謀略側の意図通りの結果が実現されるはずがないと思っています。
この世は複雑系で成り立ってますから、途中で必ず計画に狂いが生じ、ごちゃごちゃになります。
ある意味、今回のオリンピックは、北京側の国威発揚謀略(?)計画に、大いなる狂いが生じているプロセスなのかもしれませんね。
投稿: tak | 2008年8月 6日 13:23
alex さん:
私が小学校 6年の年に、alex さんはワセダマンになってたんですね。
(いよ! 大先輩!!)
ソ連の女子体操のアスタホア選手、私も覚えてます。
女子体操選手 (外国の) には萌えまくりました。なにしろ、思春期ほやほやですから。
銅メダルを獲得した池田敬子選手のプロポーションは、申し訳ないけど、ギャグマンガの三頭身みたいに見えて、悲しくなっていました。
私が 「これからは英語だ!」 と思ったのは、それもあるかも。
(ロシア語だ! と思わなかったのは不思議ですが ^^;)
投稿: tak | 2008年8月 6日 13:37
私がオリンピックに触れたのは多分76年のモントリオールあたりからだと思います。(当時は小学生)
白い妖精と言われたコマネチ選手が体操で一世を風靡したのをテレビで見ていた記憶があります。女子段違い平行棒や床運動などかなり本気で見てました。まだ14歳だという少女を見ながら、自分もそんなに違わない年なんだけどな、なんて思ってたのを思い出します。
北京オリンピックについて冷淡っていうの、私もちょっとだけそうなんですが、いろいろな中国の世情を見ていると、なんていうか両手放しでオリンピックを応援する事が、自分のなかでちょっと許せない部分があるようで(笑)
スポーツ観戦自体は結構好きで、オリンピックでも人気のあまりない競技でも時間があえば平気で見てるタイプなんですが、今回はなんとなくオリンピック関連のニュース自体から自分を遠ざけている風になっています。
”楽しいから見る”という単純明快な理由よりも、今回に関しては”中国で行われるオリンピック”を容認しないという気分なんですね。競技自体は見たい気はするけれど、多分、ちょっと今回は距離を置いてしまうんじゃないかな。
投稿: きんめ | 2008年8月 6日 15:29
きんめ さん:
>”楽しいから見る”という単純明快な理由よりも、今回に関しては”中国で行われるオリンピック”を容認しないという気分なんですね。競技自体は見たい気はするけれど、多分、ちょっと今回は距離を置いてしまうんじゃないかな。
うまく言い表してくださいました。まさに、そんな感じです。
前々からオリンピックの夾雑物の多さは感じてたんですが、今回はこれまでのオリンピックが束になってかかっても叶わないほどの、めちゃくちゃな夾雑物ですからね。
投稿: tak | 2008年8月 6日 16:35
不謹慎なことを言うと、果たして競技以外に何が起こるのか? そういう期待?の方が大きいかも
投稿: alex | 2008年8月 7日 00:54
今度のオリンピックには直接関係ありませんが、まだ10歳にも満たない少年たちを集めて、将来の金メダルのために特訓している中国の体操学校の様子をテレビで見て、まるでタイガーマスクの「虎の穴」のようだと思い、悲しくなってしまいました。
収録した日本のテレビ局は、その幼い子らを励ましているつもりのようでしたが、その子らの肩には貧乏からの脱出を夢見る家族の期待がかかっているわけで、そんなもん美談じゃないだろうと腹が立ってしまいました。
投稿: かつ | 2008年8月 7日 05:29
alex さん:
既に、いろいろ起きてますからね。
テロリストの方からしたら、絶好の舞台でしょうし。
投稿: tak | 2008年8月 7日 11:43
かつ さん:
>今度のオリンピックには直接関係ありませんが、まだ10歳にも満たない少年たちを集めて、将来の金メダルのために特訓している中国の体操学校の様子をテレビで見て、まるでタイガーマスクの「虎の穴」のようだと思い、悲しくなってしまいました。
サーカスに売られた子供みたいなイメージがつきまといますね。
成功するのはほんの一握りでしょうし。
投稿: tak | 2008年8月 7日 11:45