挫折したのは福田さんじゃなく、自民党
時事通信によると、独紙南ドイツ新聞が、「福田首相が挫折したのではなく、自民党のシステムが崩壊過程にある」と論評している (参照)。おぉ、よく見てるじゃないか。
確かに福田さんの辞め方はみっともないが、2人も続けてみっともない辞め方をさせる自民党自体が、さらにみっともない。
時事通信の記事から、南ドイツ新聞の論説をもう少し引用する。
同紙は、現在の自民党について「特定のイデオロギーや政治方針、住民グループを代表しておらず、権力やそれがもたらす金にしがみついているだけだ」と批判、長期政権による弊害を強調した。
外から率直な目で見れば、現在の自民党政権というのは、そんな風に見えるということだ。別に、外からの率直な目でなくても、内から見ても私にはそうとしか見えないのだけれど。
特定のイデオロギーや政治方針、住民グループを代表していない、つまり、なんだかよくわからん政党が政権を担当すると、ある意味、どこにも偏らない、平均的で妥当に見える政策を実行することができるだろう。「均質社会」と(幻想的に)言われてきた日本には、ベターな選択だったかもしれない。
しかし、これだけ長期に渡ってしまったら、「権力やそれがもたらす金にしがみついているだけ」ということになるのは、世の習いである。特定個人が県知事や市町村長を 4期 16年ぐらい勤めたら、その地域の政治はほぼ間違いなく停滞する。
停滞を打破するための有効な提言をしても、「あのオッサンがトップにいる間は、どうにもならんから、しばらく我慢してくれ」なんて言われるようになる。
それに類した状態を、我々は国のレベルでは何十年も続けているのである。これは、よく考えると驚くべきことなのだ。まあ、途中でどさくさ紛れの政権交代はあったが、短すぎて機能しなかったし。
私は今年 4月に「既にぶっこわれている自民党」という記事を書いた。自民党だけでなく、自民党を核としたこの国のシステム自体が、もうほころびで一杯になっている。いろいろな不祥事が続出するのも当たり前だが、変な言い方だけれど、ぶっこわれ方が中途半端なので、なんとかもっているのである。
民主党に政権交代しても、どうせ中身は「元自民党」なんてのが多いから、代わり映えしないかもしれない。その上、彼らは政権から離れて長いから、感覚が鈍っていてかえって混乱するかもしれない。それでも、少なくとも政権交代がフツーに行われる国にならなければ、この膠着した状態は変わらないと思うのだ。
福田さんは会見前に「日本は大きすぎて、動きがとれない」と嘆いたと聞くが、この点に関しては、その通りだと思う。前にも書いたが、日本は、自由主義を標榜する先進国で、人口が 1億人をはるかに越えていながら、地方分権が進んでいないという点では、世界でも超レアというより、唯一のケースなのである。(参照 1、参照 2)
他は大抵、連邦制を採用している。今の日本の「大男、総身に知恵が回りかね」という状態も、自民党を核とした中央集権システムの弊害である。連邦制が無理なら、早く「道州制」に移行しないと、「大事なことが何も決まらない」という福田さんの嘆きを延々と繰り返す国になる。
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