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2008年10月16日

余った金は、ちゃんと消える

衣料品の価格でよく引き合いに出されるのが、男物の背広の値段の 10分の 1 が、シャツとネクタイの値段ということだ。

最近のシャツとネクタイの値段の主流は、2,900円から 4,900円というところである。ということは、背広の値段は 29,000円から 49,000円がボリュームということである。

30年ほど前、私が大学を出て就職しようとしていた頃、背広の値段は 46,000円から 56,000円というのが相場だった。当時、大卒の初任給は 15万円ぐらいだったような気がする。ということは、背広 1着の値段は、初任給のほぼ 3分の 1 といったところだったろうか。

これが、バブルの頃には 68,000円から 73,000円というところまではね上がった。これがボリューム価格で、ちょっと贅沢をすれば、20万円とか 30万円とかいうブランド・スーツが、大学出たての若いサラリーマンでも手が届いたという時代が、つい最近あったのだ。

ところが、それからどーんとバブル崩壊という事件が起きた。それを機に、衣料品に法外な金を払える層はごく一部の金持ちだけとなり、フツーのサラリーマンの買う背広は、上述のごとく、29,000円から 49,000円というところに落ち着いたのである。

この値段を可能にしたのは、中国で縫製するという「オフショア・ビジネス」である。しかし、いくら人件費の安い国で作るとはいえ、すごい落差である。なにしろ、30年前の値段より安いんだから。

モノの値段は 30年前からそれほど上がっていないのである。むしろ、背広みたいに下がっているものもあるぐらいなのだから。ところが、日本人の収入は多少は上がっている。じゃあ、余った金はどこに消えるのか?

ざっと言えば、「モノ」じゃなく「サービス」に消えたりしているわけだが、それだけじゃなく、余った金を注ぎ込んで、金をさらに余らせてしまおうという行為に向かったりしている。エンデは「パンを買う金と株を買う金は違う」と言ったというが、個人的には実感として理解できるのだよね。

誤解のないようにちょっとだけ触れておこう。ちょっと前に書いた「ネズミ講とどこ違うの?」という暴論に fn.line さんが付けてくれたコメントのように、「堅実な物作りをしている○○社のごく一部を所有し、事業が継続できるようにごくささやかに応援し、銀行の利息より少しましな利益に預かる」というまっとうな投資もある。

しかし、「余った金で金を買って、さらに金を余らせる」というタイプの投資(投機?)も、確かにある。

バブルの時期には、余った金は、株だ、土地だ、ゴルフの会員権だと、あまり実体のないものにつぎ込まれ、バブル崩壊で、多くは紙切れに変わってしまった。どうせモノに向かう使い道のない「余った金」だから、天の配剤でうまく処分してもらったのだ。

最近、私は経済についてトーシロ流の乱暴な言い方ばかりしているが、ついでに今回もその調子で乱暴を承知でさらに言ってしまおう。米国の金融バブルで余ったお金も、このようにして消えたのである。

余った金を実体のないところにつぎ込みすぎると、ちゃんとその実体をなくしてもらえるのである。かくして、金融立国の総元締めみたいな国も、少しは軌道修正を余儀なくされているわけだ。

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コメント

余った金は、ちゃんと消える?

タバコをやめて1年ちょっと。最低でも一日一箱20本入り300円を大気汚染と自分の健康を損なう恐れもかりみず吸ってたわけですが、吸ってた時の日あたり300円のお金って、どっから捻出してたんだろう?。と、吸わなくなって日々300円の出費がないのにまったく金銭余裕的実感が無い。年間にして10万円もの金をどうして捻出してたんだろう?。というか、今、その日々あたり300円をどう使ってる?。

背広をテーラーで仕立ててみたいです。コナカの吊るしモノばっかの私でした。

投稿: やっ | 2008年10月17日 07:24

やっ さん:

「余った金はちゃんと消える理論」 が、事実として証明されてますね (^o^)

投稿: tak | 2008年10月17日 08:46

ちょっと注目しているテーマですのでしつこいですが少しだけ。

正規職員の削減、柔軟な労働とはいえ厳しい非正規職員。
リストラの嵐なのに人手不足。すなわち、人手不足ではなく奴隷不足と言える社会情勢。

人口減少で削減され、記録が消し飛び、改ざんされる年金。

こんな状況を見ていると、
普通の人間もあぶく銭の力を借りないといけないのかと思うことがあります。

投稿: fn.line | 2008年10月18日 18:09

fn.line さん:

>こんな状況を見ていると、
>普通の人間もあぶく銭の力を借りないといけないのかと思うことがあります。

あぶく銭市場も縮小し、リスキーになりそうな気がしますが。

投稿: tak | 2008年10月19日 05:00

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