DDT を巡る冒険
昨日の記事で、「小学校で毎週、真っ白になるまで DDT を振られていた」と書いたら、私よりずっと(でもない?)年上の alex さんに驚かれてしまった。
大阪ベースの alex さんは、「私は DDT をかけられた事なんて無かったですね/ びっくり」 とおっしゃる。私の方がびっくりである。
私は、小学校 4年ぐらいまで、毎週(あるいは隔週ぐらいだったかな?) DDT を振りかけられていた。学校の授業の最中に、白衣を着た保健所の職員が来て、生徒全員に DDT を振りかけるのである。つまらない授業が中断されるので、子どもたちはどちらかといえば喜んでいたように思う。
廊下で列を作り、順番に DDT まみれにされる。まず、ピッチャーマウンドにあるロージンバッグの親玉みたいなので、頭をバホバホやられる。すると、いたいけな子どもなのに、頭が真っ白になる。その後、首筋に噴霧器の先っちょを差し入れられ、背中にブシュブシュやられる。これが妙に気持ちよくて、みんな「ひょ~~」なんて奇声を上げていた。
1クラス全員が DDT を振りかけられるのに、10分ぐらいのものだが、学校全体の作業は 1日がかりだったろう。そして市内の学校をすべて巡回するにはかなりの日数がかかるだろうから、当時の保健所にはそれ専門の職員がいたんだと思う。
この話をすると、東京や大阪など、都会で育った団塊の世代の年齢の人でも、一様に「俺は、DDT を振りかけられたことなんか、1度もない」と言う。そして、何度も DDT を振りかけられたという私を、未開人を見るような目つきで見るのである。
都会と庄内平野のタイムラグは、かなりのもののようなのだ。ベトナム戦争が終わったのは私が大学 4年の時だが、alex さんは商社マンとして戦時下のベトナムに赴任し、バリバリに仕事をした経験をお持ちである。
ということは、庄内と大阪の DDT に関するタイムラグは、ざっとみて 10年近いものということになる。まあ、DDT に限らず、全般的にそのくらい、あるいはそれ以上のタイムラグというのはあるかもしれない。
「DDT を振りかけられた」なんていうと、さも猛毒を浴びせられたかのような印象をもたれて、「それで、よく生きていられたね」なんていう人もいるが、実感としては、そのせいで健康を損ねたとかいうことは全然ない。
よく調べてみると、DDT の毒性というのは、印象ほどには強いものではないらしい。そりゃ、体にいいわけはないが、Wikipedia には "一時期、極めて危険な発癌物質であると評価されていたが国際がん研究機関発がん性評価ではグループ2Bの「人に対して発がん性が有るかもしれない物質」に分類されている" と記述されている。(参照)
このページにはまた、"DDT にかわる農薬(パラチオンなど)は、食べても死なない DDT に比べて圧倒的に毒性が強く、それによる死者や被害者は DDT を圧倒的に上回る。DDT の禁止は、危険な農薬による被害を多数発生させる結果になった" とある。
私は決して DDT の肩を持つわけじゃないが、中国ではつい最近までパラチオンを生産していて、それに汚染された餃子が日本人の口に入ったなんてニュースを聞くにつけ、ちょっと複雑な思いがするのである。
念のため付け加えておくが、当時、少なくとも私のクラスでは、頭にシラミがたかってるなんていう子どもは、一人もいなかった。だから本来なら、生徒を DDT まみれにする必要性なんてなかった。
多分、一度決定した生徒への DDT 適用を中止する決定が遅れただけか、大量にある DDT 在庫を処分するために、だらだらと続けていたかのどちらかだと思う。つまり、お役所仕事の産物だろう。
そして皮肉なことに、近頃は都会でシラミが増えているらしい(参照)。
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コメント
DDTに関しですが、タイムラグの問題じゃないと思います
そもそも大阪ではルンペンや浮浪児をのぞいて、DDTをかけるということをしなかったと思います
幼稚園・小学校・中学校を通じてそういう経験はありません満州や大陸から引き揚げ船で帰ってきた人達なんかはかけられたようですが
投稿: alex99 | 2008年11月11日 14:38
alex さん:
>DDTに関しですが、タイムラグの問題じゃないと思います
>そもそも大阪ではルンペンや浮浪児をのぞいて、DDTをかけるということをしなかったと思います
が~~~ん! と打ちのめされました。
私らは、一体何と思われていたのでしょうか。
そもそも、シラミなんてわいたことないのに (T_T)
投稿: tak | 2008年11月11日 15:51
名古屋はあったみたいですよ。
親父が昔、そんなことをのたまわっていたような…。
キーワードは『頭からドバッと』。
投稿: 乙痴庵 | 2008年11月11日 18:36
takさん、ご承知の通り、私は四国の山奥の生まれ育ち(昭和26年生)ですが、学校ではDDTはなかったように記憶しています。
もっと小さい頃でも、そうした風景は見た覚えがありません。
地域によってずい分違いがあったんじゃないでしょうか。
投稿: Mikio | 2008年11月11日 19:02
これは”DDT”全国調査の様相?
そりゃ、アタクシは橋本真也の垂直落下DDTシンパですが…、何か。
投稿: 乙痴庵 | 2008年11月11日 19:44
乙痴庵 さん:
>名古屋はあったみたいですよ。
東京と大阪ではなくても、名古屋ではありましたか。
さすが! (何が? と突っ込まれそう ^^;)
>キーワードは『頭からドバッと』。
うちは 「ドバッ」 ではなく、「バホバホ」でしたが。
(大した違いじゃない ^^;)
投稿: tak | 2008年11月11日 22:36
Mikio さん:
>私は四国の山奥の生まれ育ち(昭和26年生)ですが、学校ではDDTはなかったように記憶しています。
これまたショック!
私の生まれ育った酒田は、一応、都市でして、私はシティボーイだと思ってたんですが。
>地域によってずい分違いがあったんじゃないでしょうか。
その違いの根拠って、一体何なんでしょうね。
ここまでくると、わけわかりません。
投稿: tak | 2008年11月11日 22:39
乙痴庵 さん:
>これは”DDT”全国調査の様相?
本当に、ここまできたら、乗りかかった船で、全国の事例を書き込んでもらいたくなりました。
>そりゃ、アタクシは橋本真也の垂直落下DDTシンパですが…、何か。
DDT は、ブレーンバスターのできないレスラーがやる技と思ってましたが、橋本のは、あれ、キラー・カール・コックスのブレーンバスターと区別つかないです。
投稿: tak | 2008年11月11日 22:47
うちの母に聞いてきましたが、DDTやられたそうです。
しかし、母は還暦なので、tak様よりは、ちょっと上の世代でしょうか。
あと、家の消毒ということで、家の中にも年に何回かは撒かれていたそうです。
(DDTかどうかは不明ですが)
なんか今回のDDTは、以前ナイトスクープでやっていた、「アホ・バカ分布調査」のようになって
きましたね。(笑)
やっぱり、文化は中心地から同心円状に広がるのでしょうか(笑)
今の時代は、またシラミが多くなってきているようで、うちの娘も学校でもらってきたので、専用
シャンプーを買ってきたりして、たいへんでした。
「シラミ=不潔ではないので、娘さんがショックを受けないようにしてくださいね。」と薬屋さんに
言われ何となくほっとした気がしました。
投稿: 雪山男 | 2008年11月12日 09:43
雪山男 さん:
済みません。コメントに気付くのが遅れて、とんでもない亀レスになってしまいました。
>うちの母に聞いてきましたが、DDTやられたそうです。
>しかし、母は還暦なので、tak様よりは、ちょっと上の世代でしょうか。
少なくとも、会津では DDT をやられたというわけですね。
>やっぱり、文化は中心地から同心円状に広がるのでしょうか(笑)
というより、賊軍は DDT やられたみたいな気がします。
土佐はなくて、名古屋 (徳川家) があったなんて。
投稿: tak | 2008年12月27日 00:03