米国がずっと謝らなくてもいいように
4年前の秋、米国の多くのリベラルたちは、全世界に "Sorry, everybody" (ごめんね、みんな)と謝り、「米国の約半分は、ブッシュを支持したわけじゃない」と言い訳した。(参照)
そして今年の秋、彼らはハッピーだろう。米国人が圧倒的にバラック・オバマを支持したので、再び謝る必要がなくなったからだ。
こう言っちゃなんだが、キャンペーン中のマケイン氏の姿は、「私が大統領になっても、何も変わりませんよ」という言葉にならないメッセージを、体中から強烈に発していた。よく言えば「古き良きアメリカ」の体現者だが、今、その幻想にすがる者はごく少ない。
彼は、自らが発散するイメージが今やマイナスにさえ作用するようになったことに気付かず、気付かなかったが故に、負のメッセージにストップをかけることができなかった。あれじゃ、勝てない。いや、彼は本当にいい人なんだろうけどね。
一方、オバマ氏は違っていた。彼の演説がいかに具体性に欠け、単に理想を説くだけのものだったとしても、それは、米国民に何らかの希望を与えた。とくに、これまでは「俺たちゃ、選挙なんか知ったことじゃねぇよ」と思っていた黒人たちがこぞって、初めて選挙人登録というものをし、バラック・オバマに投票した。このことの意味は大きい。
米国の本音の顔は、既にずっと前から全然 WASP っぽくなんかなかったのだが、今回の選挙を期して、この国はオフィシャルにも WASP の国じゃなくなるのである。おめでとう、アメリカ。
願わくは、米国民がこれからもずっと世界に対して謝らなくてもいいように、より正確な言い方をすれば、謝らなきゃいけないようなことをしでかさなくてもいいようにしてもらいたいものなのだ。
そのために、これまでの因習的な米国的システムは、果たしてきちんと変わるんだろうか。問題はそこだ。
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コメント
私は世代的にケネディ大統領が就任したときの、全米の熱狂ぶりを直接知る世代ではないの
ですが、今回のオバマさんの圧勝とフィーバーぶりはまさにそういう感じなのでしょうか?
ケネディ大統領もアイルランド系移民初の大統領で、WASPとは違うわけで、今回のオバマ氏
は黒人系初ということで、アメリカというのは多民族国家らしく停滞期や変換期には、主流以外
の民族からリーダーが出るように国民の、無意識がそうなっているのかもしれません。
後は、クリントン期の日米関係悪化の再来がないことを祈るのと、できればイラクだけでなく、
日本からの軍隊の撤退も検討してほしいということでしょうか。(笑)
投稿: 雪山男 | 2008年11月 6日 08:35
>私は世代的にケネディ大統領が就任したときの、全米の熱狂ぶりを直接知る世代ではないのですが、今回のオバマさんの圧勝とフィーバーぶりはまさにそういう感じなのでしょうか?
ジョン・F・ケネディが米国大統領に就任した年、私は 9歳 (てことは、小学校の 3年生というガキンチョ) でしたが、あの時の世の中の熱狂は覚えています。
かなりのものでした。
今とよく似ているような気がします。
オバマさんの、あの理想主義的な演説も。
それだけに、心配なんですよね。ナニが。
投稿: tak | 2008年11月 6日 10:59
私はちょっと差別意識を持つ人間ですから(言いかえれば現実重視)、米国の白人の黒人への意識がそれほど変わったとは思えません
オバマが特別なんじゃありませんか?
清新で知的で高邁な理想を語る雄弁術
白人達もオバマを米国の黒人だとは思えなかった
奴隷の子孫ではなくケニア人と白人の混血だから、差別意識とは別腹で納得できた
軍需産業・石油産業中心で戦争を必要とするブッシュ政権は、米国の本音です
それが一人の大統領によって簡単に変わるでしょうか
少なくとも変わることを許さない勢力があります
それに選挙人の数では圧勝でも(297/124)得票率ではむしろ僅差(515/48%)
選挙システムによってこの差が拡大されましたが、得票率の方が米国民の本音でしょう
投稿: alex99 | 2008年11月 7日 04:16
alex さん:
痛いところを突かれました。
それで、本文の末尾にも、こう書いたわけなんですが。
>そのために、これまでの因習的な米国的システムは、果たしてきちんと変わるんだろうか。問題はそこだ。
投稿: tak | 2008年11月 7日 08:53