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2008年12月 5日

『ガンをつくる心 治す心』 という本

ガンをつくる心 治す心』(主婦と生活社・刊、土橋重隆・著、本体1,300円+税)という本を読み終えた。

近頃やたら忙しいので、行き帰りの電車の中でしか読めなかったが、それでも 1日半でサクサクっと読み終えた。非常に読みやすく、その上、含蓄に富んだ本である。

私がこの本に興味をもったのは、表紙に記された 「西洋医学にも代替療法にも治癒させる力はない!」というキャッチコピーのせいである。で、かなりカルト的なものなのかと思ったら、著者の土橋重孝さんという方はれっきとした医学博士で、しかも内視鏡手術の第一人者だというのである。

そのプロ中のプロのお医者さんが、ガンについて「西洋医学にも代替療法にも治癒させる力はない!」と言い切っておられるのである。「なんて率直なお医者さんなんだ」というのが、最初の印象だった。私は率直な人というのは、たいてい信頼に足ると思っているのである。

この本の主要な論点を私なりにまとめると、次のようなことになると思う。

  • 西洋医学においては、医者の仕事の 8割は「診断」であり、正しく診断されさえすれば、治療法は同じようなものになる。
  • 診断に際しては、病気という「起きてしまった現象」のみに注目し、その原因、とくに患者の内面的なことまで踏み込むことはほとんどない。
  • とくに進行ガンは西洋医学で「完治」することはなく、「5年生存率」をいかに上げるかに終始している。
  • しかし、末期の進行ガンが治ってしまうということが、現実にある。それらのケースはすべて、病院の治療とは別のところで起きている。本人の心が変わったことで治ったとしか思われない。
  • 多くのガンは「心身症」として捉えられるべきであり、内面の変化、すなわちガンになった心理的原因が取り除かれることで完治する可能性がある。
  • ガンが治るには、それまでの生活習慣、心的傾向などを「改善」するのではなく、思い切って「リセット」することが必要だ。

これ以上のことを知りたい場合は土橋さんのウェブサイトに行かれるのがいいし、よりダイジェストでお知りになりたいというなら、船井幸雄ドットコムのインタビューページを読むのが手っ取り早いだろう。

「船井幸雄」と聞いただけで、「トンデモの疑似科学はごめんだ」 と敬遠したくなる人も少なくないと思うが、このページだけは読んで損はないので、オススメしておく。

私が面白いなあと思うのは、この本の著者の土橋氏ご本人が、長年「西洋医学という科学」の最前線に立って素晴らしい実績を上げておられながら、自ら「科学的でない」というメソッドでガンというものを見つめておられることだ。

「科学的でない」といっても、トンデモの疑似科学というわけでもない。臨床と患者自身へのインタビューの積み重ねによって、データ分析した結果には違いないのである。ただ物理的とか化学的とかいうものではないので、ご当人は「科学的でない」とおっしゃっているのだろう。

確かに、物理や化学のように厳密なものではなく、「解釈のしかた」 という問題もあるので、「トンデモ」 と思ってながめればそんな風に見えるという人もいるだろう。この辺りはもしかしたら、「科学」と「疑似科学」のクロスオーバーしてしまう領域かもしれないので、機会があれば、改めて慎重に書いてみたい。

なにしろ、私は一部には「疑似科学側の人間」と思われているフシがあるので、少しは注意しなければならない。

土橋氏は末期ガン、進行ガン治療の現場という、もっとも患者に近いポジションにいたため、これまでの西洋医学的発想にはない「ガンになった内面的原因」を患者自身に聞くというインタビューを数多くこなされた。

これによって収集された多くのケースを分析し、ガン患者にはある心的傾向があり、そして患者の受けたストレスの種類によって、ガンになる部位にもある傾向が生じることを発見されたのだ。心と体というのは、かくも密接な関係があるようなのだ。

そして、そのガンをつくる心的傾向を「リセット」あるいは「フルモデルチェンジ」することで、医者が見放した末期ガンが治ることがあるという事実を紹介されているのである。

いや、この言い方は少し正確でないかもしれない。というのは、ガンが治った患者は「ガンを治すために、それまでの心的傾向を、強い意志をもって、無理矢理に変えた」というわけではないようなのだ。

どちらかというと、「ガンを治そう」なんてことはしなかったのである。それよりも、自然にもっと別の方向に心が向いたのだ。

例えば、病気のことは忘れて自分以外の誰かのために尽くそうとしたり、感謝を捧げたり、どうせ死ぬならと、それまでのあくせくした生活をさらりと捨てて、残りの人生を楽しむことにしたり、とにかく「ガンと闘う」なんてことは全然しなかったようなのだ。

土橋氏によると、ガンを治そうとしたり、闘おうとしたり、あるいはさらに進んで、ガンにならないように、日常生活でも極力気を付けたりするというのは、ガンをつくった心的傾向と同じなのだそうだ。そうした「真面目な心」が、ストレスをつくり、ガンをつくるというのである。だからガンが治るには、「ガンを忘れる」 ことなのだそうだ。なるほどね。

で、「真面目な心」の人がガンになりやすいということは、裏返せば「いいかげんな人」はガンになりにくいということのようなのである。それを読んだ私は、「ああ、いいかげんな男でよかった」と、胸をなで下ろしたのであった。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

自分から「科学的ではないんだけど」と断る人は、少し信用できそうな気がします。友人が白血病になってしまったので(これも一種のガンですよね)、ちょいとご紹介の本を読んでみようかな。

投稿: 山辺響 | 2008年12月 5日 15:23


 私は元々鍼灸師だったので、やはりペインクリニックなんかには学生時代から関心があって、緩和ケアって言葉が出てきた頃もその周辺事情なんかは注目してたんです。
 癌と告知された後に腹が立ったり気持ちが落ち込んだりの時期を経たあと、みなさん病状を最終的には受容されたりするんですが、中に劇的に癌が治ってしまう人ってのは確かにいますね。それはtakさんが書かれているように医学的な結果というものではない部分で、心が体を治しちゃったとしか思えないような事例がいくつもあります。

 ほんの数例であれば、ばかげていると言ってしまえばそうなんですが、そういう人が時々現れる。それは、明らかに何かの現象が起こっているとしか思えないです。

 余命を知り、残りの人生を後悔が少ないように生きたいように生きることにした人達にそういう傾向があるような気がします。
 統計で示すには条件を同一に保つことが困難なので、今で言う科学的な証明というのは難しいのでしょうが、心が体を治してしまう科学的なプロセスというものが確かにあると私も思います。

投稿: きんめ | 2008年12月 5日 16:01

山辺響 さん:

>自分から「科学的ではないんだけど」と断る人は、少し信用できそうな気がします。

私には、十分に(広義の)科学的と思われる内容でした。

友人が白血病になってしまったので(これも一種のガンですよね)、ちょいとご紹介の本を読んでみようかな。

オススメですよ。

投稿: tak | 2008年12月 5日 17:08

きんめ さん:

私も、ガンが、それも 末期と診断されたガンが治っちゃった人を何人か知ってます。
(診断書も見せてもらったので、間違いないです)

末期ガンが治ったなんて聞くと、血の滲むような闘病をしたんだと想像しがちですが、治るときっていうのは、案外あっけらかんと治ってますね。

その 「あっけらかん」 がいいんだとわかりました。

投稿: tak | 2008年12月 5日 17:12

上司から、「のほほんとしすぎ」という指摘をよく受けます。(上司の顔は笑ってますが…)

本人の心構えだけでなく、強調されない周りのサポートって、とても重要だと、感じ入った次第です。

「私があなたを助けているんだから!」とやられちゃうと、『あぁ、負担かけてんだな…』と、新たな心労を生じさせる要因となり…。


あれ?まるで”プチうつ”の症状じゃん。


その本、かなり興味がわきました。

投稿: 乙痴庵 | 2008年12月 5日 20:56

乙痴庵 さん:

>上司から、「のほほんとしすぎ」という指摘をよく受けます。(上司の顔は笑ってますが…)

>本人の心構えだけでなく、強調されない周りのサポートって、とても重要だと、感じ入った次第です。

>「私があなたを助けているんだから!」とやられちゃうと、『あぁ、負担かけてんだな…』と、新たな心労を生じさせる要因となり…。

そこまで思いを巡らせられるんですから、決して 「のほほん」 となんかしていませんよ (^o^)

「のほほんとしてるように見える」 ってだけかも。
貴重かつ必要な存在です。 (キッパリ !)

投稿: tak | 2008年12月 6日 10:38


しかし、気質というものは変えられないと思います
だから、ガンになる運命も変えられない

投稿: alex99 | 2008年12月 7日 03:34

がんになったら。

 「しゃーないなぁ」で済ませるつもりなんですが…。
 周りがやかましくなりそうで…。

 そうしたら、「そういう運命だったのさっ。」と軽く流しておきたいんですが…。
 周りがやかましくなりそうで…。

投稿: 乙痴庵 | 2008年12月17日 12:46

alex さん:

コメントに気付くのが遅れてすみません。

>しかし、気質というものは変えられないと思います

気質は変えられなくても、気の持ちようは変えられますよ。

>だから、ガンになる運命も変えられない

ガンになっても、気の持ちようで治っちゃった人がいるんで、大丈夫みたいです。

投稿: tak | 2008年12月17日 18:58

乙痴庵 さん:

>周りがやかましくなりそうで…。

大丈夫、すぐに静かになります。
人間、飽きっぽいものです ^^;)

投稿: tak | 2008年12月17日 18:59

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