近くで喫煙されると、フツーに息できないし
神奈川県の検討している 「受動喫煙防止条例(仮称)」の素案では、小規模店舗への配慮から、100平方メートル以下の飲食店で 3年間適用が猶予されるそうだ (参照)。
条例に反対する飲食店は、3年間のうちに、ヘビースモーカーの常連に配慮して、タバコを吸わない客を失うことになるわけだ。
最近はある程度の規模の飲食店では、分煙が常識となりつつある。店に入るとまず、店員が「タバコはお吸いになりますか?」と聞いてくる。吸わないと答えれば、禁煙席に案内してもらえる。ありがたいことである。
ところが先日あるレストランで信じられない経験をした。いつものように店員にタバコを吸うかと聞かれ、吸わないと答えた。ところが禁煙席は満席で、一方、広大な喫煙席はがらがらだ。
すると店員は、「空いている喫煙席にご案内させていただきます」なんて、ふざけたことをいうのである。これにはむっとしてしまい、「冗談じゃない」と、すぐにその店を後にした。もうこの店に入ることは二度とないだろう。メシを食うところぐらい、他にいくらでもある。
この店は、明らかに 2つの考え違いをしている。
まず基本的に、この店は喫煙席こそがスタンダードで、禁煙席は恩情措置ぐらいに思っている。だから「禁煙席が満席なら、喫煙席にどうぞ」なんて、馬鹿なことを当然のように言い出すのである。
また、せっかく分煙しているのに、禁煙席と喫煙席の配分比率を明らかに間違えている。禁煙席が満席で、喫煙席ががらがらというのは、どうみてもばかばかしい話だ。ノンスモーカーの数と存在自体を軽視しているとしか思えない。それで私のような客に対応できず、みすみす機会損失を生じる。
この店の経営者は、タバコを吸う人なのだろう。だからこんな考え違いをするのだ。この考え違いを改めれば、この店の利益率がアップすることは明白なのだが。
さて、問題なのは、スモーカーとノンスモーカーの入り交じったグループで飲食するときである。昼食ぐらいなら、スモーカーに我慢してもらって、禁煙席に座る。そのくらい当然である。それが嫌なら、単独で喫煙席に行けばいいだけのことだ。
困るのは、夜の酒席の場合だ。とくに個室を予約した場合などは問題である。
個室に入ってすぐに換気設備の位置を確認し、風下の席にまとまって座ろうなんてことを考える「空気の読めるスモーカー」はごく少ない。ヘビースモーカーが何の考えもなく、「序列」なんてどうでもいい慣習に沿って風上にどっかり座ったりすると、その宴席は苦痛に満ちたものとなる。
単純な事実として、タバコの煙はノンスモーカーには大きな迷惑なのである。気分としての迷惑だけではすまない。煙がたなびいてくるとまともに呼吸できないのだ。むせちゃうから。
スモーカーは案外知らないだろうが、我々ノンスモーカーの多くは、スモーカーと同席すると、実に頻繁に息を止めている。目の前を煙が流れる間は、止めざるを得ないのである。あまり頻繁に息を止めると頭がぼーっとしちゃうのだが、それでも止めないとむせちゃうから、仕方ないのである。
某養老なんとかいう人は、受動喫煙による被害は証明されていないなんて言って(参照)、自分の喫煙を正当化したがっているが、そんなことを云々する以前に、ノンスモーカーは、近くで喫煙されると、呼吸という生存のための最も基本的な権利を妨害されて、リアルタイムで苦しいのだよ。素潜り名人じゃないんだから。
もし仮に受動喫煙が健康に何の害もないとしても、それ以前の話として迷惑は迷惑なのだ。そこに思い至らず、「禁煙運動はナチズム」なんておっしゃる某養老なんとかさんは、ナチ以下ということになる。
スモーカーは現実に大きな迷惑の発生源なのだから、ノンスモーカーと同席する時はタバコを遠慮するとか、どうしても我慢できないなら、風下で遠慮がちに吸うとか、きちんと気を遣うべきだ。迷惑をかける方が迷惑を受ける方に気を遣うのは、タバコに限らず、世の中で当然のことなのである。
「俺が好んで吸ってるんだから、漏れた煙をお前も吸え」というのは、本来ならば非常に失礼な話なのだが、その当然の理屈が、悲しいことに現場ではなかなか認識されていない。
タバコの話をする時、私はいつも、電車の中のヘッドフォン・ステレオからもれる音を引き合いに出す。自分の発生する煙には全然無頓着なヘビースモーカーが、電車の中で隣の若者のヘッドフォンから漏れてくる「シャカシャカ音」に眉をひそめるのを、私は「勝手なものだなあ」と思う。
音も煙も、垂れ流しということに関しては同じなのだ。そして、某養老なんとかさんの言っているのは、「ヘッドフォンから漏れるシャカシャカ音が健康に害をもたらすとは立証されてないから、迷惑だから音を小さくしろというのは、ナチズムだ」と言うのと、根底では同じことである。
それから付け足しだが、分煙されたファミレスに入ると、禁煙席に座っているのは大人同士のグループがほとんどで、喫煙席には、あろうことか小さな子どもを含む家族連れが多い。タバコの煙がもうもうと漂う席で自分の子どもに食事させる心理を、私は理解できない。
こうした光景を見るにつけ、私のスモーカーへの偏見は強まる一方なのである。
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コメント
全くその通りです。
私は元喫煙者ですが、やっぱり人の煙はダメですね。
喫煙していたころも、不特定多数の人のいるところでは、絶対吸いませんでした。
親子連れで喫煙席も理解できません。
喫煙席しか空いていないときは、禁煙席が空くまで待ちます。
だいたい子どもの前で、親がたばこを吸っている姿は見せてはいけないと思いますね。
真似しますし。
喫煙者は煙の行方に、あまりに無頓着なんですよね。もう少し気をつけてほしいものです。
投稿: 雪山男 | 2008年12月 9日 12:36
雪山男 さん:
>私は元喫煙者ですが、やっぱり人の煙はダメですね。
私も、18歳から (もう時効だから、いいよね) 25歳までの 7年間、1日 40本以上のヘビースモーカーでした。
止めるときは、2週間のたうち回りました。
(あの時が、生涯で一番強い意志を発揮したときです)
今ではちょっとした煙でもむせちゃいます。
ヘビースモーカーだった人ほど、禁煙するとタバコが嫌いになるといいますが、私の場合はまさにそうで、10メートル先で吸われても嫌です。
投稿: tak | 2008年12月 9日 12:52
そういえばタバコ税引き上げで一箱千円にって話はどうなったんでしょうかね。きわめて理にかなった増税(というよりも受益者負担ですね、医療費や社会的コスト等の)だと思うんですが。
中川秀直なんかが提唱してましたが、選挙が近いから静かにしてるんですかね?
投稿: きっしー | 2008年12月 9日 14:19
よく言って下さいました!
私が以前働いていた飲食店でもそうでしたが、「常連がタバコを吸うから」という理由で喫煙を野放しにしている店って多いんですよね。
そのおかげでタバコを吸わない客を逃していることも知らず・・・
まあ、そういう店は常連の老化(とその行きつく先)と共に淘汰されて行くんでしょうが。
私の経験では、喫煙者本人ももちろん迷惑ですが、タバコを吸わないのに喫煙者の肩を持って「我慢すればいいことでしょ、私だって我慢してるんだから」とか何とか言ってくる人が一番タチが悪いと思います。
だから私は、嫌なら嫌と言うことにしています。
最近は、店内完全禁煙の店しか行かないことにしてますし。
投稿: karin | 2008年12月 9日 15:27
私はパイプと葉巻しかやりません
こういうものは、許された場所か自室で喫煙するものですから、ほぼ、非喫煙者といえるとおもいます
先ず、自分の立場を説明しておかないと (笑)
ある店で、席に着く前に非喫煙者だと名乗ると、禁煙席に案内されました
しかし、その席は喫煙席の隣で、なんのパーティションもなく、おまけに隣のテーブルの客が、よく柿食う客・・・じゃなくて、全員すごいヘビースモーカーで巨大煙突状態なのです
「こんな席では喫煙席より悪いじゃないか」と従業員に怒りましたが (笑)
航空機の機内でも思うことですが、喫煙・禁煙席というものが、座る場所が分別されているだけで、煙を吸い込むか否かという見地からすれば、意味無いことが多い
私はまだ寛大な方だとは思うのですが
投稿: alex99 | 2008年12月 9日 16:38
私は非喫煙者(この言葉は使いたくないが「嫌煙派」)ですが、件の条例には反対です。その理由は長くなるのでここには書きませんが、実に呆れてしまうのは、「自分はタバコを吸うけど、他人の煙は嫌」という喫煙者が存在することなんですよね……。
投稿: 山辺響 | 2008年12月 9日 16:55
きっしー さん:
>そういえばタバコ税引き上げで一箱千円にって話はどうなったんでしょうかね。きわめて理にかなった増税(というよりも受益者負担ですね、医療費や社会的コスト等の)だと思うんですが。
「喫煙者はそれだけ余計に税金払ってるんだ」 と開き直る人がいますが、金さえ払えばいいってもんじゃねぇんだ! と言いたい。
それに、その程度の税金では、タバコによるコスト増 (医療費、清掃コストなど) に見合っていません。
もっと払うべきですね。いっそ、タバコ 1箱 2000円ぐらいでもいい。
投稿: tak | 2008年12月 9日 18:30
karin さん:
>よく言って下さいました!
よく考えてみると、そばでタバコ吸われるおかげで、ノンスモーカーは息止めて耐えてるんだということをきちんと言う人がいない。
このことは、大きな声で言わなきゃいかんです。
なんで息を吸うのを妨害されなければいけないんだと。
>私の経験では、喫煙者本人ももちろん迷惑ですが、タバコを吸わないのに喫煙者の肩を持って「我慢すればいいことでしょ、私だって我慢してるんだから」とか何とか言ってくる人が一番タチが悪いと思います。
我慢すればいいことじゃない! と、声を大にしていいましょう。
スモーカーの方がタバコ吸うのを我慢しろと。
投稿: tak | 2008年12月 9日 18:34
alex さん:
>私はパイプと葉巻しかやりません
>こういうものは、許された場所か自室で喫煙するものですから、ほぼ、非喫煙者といえるとおもいます
望ましい姿のスモーカーでいてくださって、感謝です。
>ある店で、席に着く前に非喫煙者だと名乗ると、禁煙席に案内されました
>しかし、その席は喫煙席の隣で、なんのパーティションもなく、おまけに隣のテーブルの客が、よく柿食う客・・・じゃなくて、全員すごいヘビースモーカーで巨大煙突状態なのです
そういういい加減な分煙 (になってないじゃないか) の店って、多いですね。
今までで一番ひどいと思ったのは、禁煙席が一階の喫煙席から煙がもうもうと上ってくる (換気設備のせいで、禁煙席が煙の通り道になる) 中二階という店でした。
あれじゃ、煙責めです。いじめとしか思えない。
投稿: tak | 2008年12月 9日 18:39
山辺響 さん:
>私は非喫煙者(この言葉は使いたくないが「嫌煙派」)ですが、件の条例には反対です。その理由は長くなるのでここには書きませんが、
ご自分のブログに書いてありますか?
>実に呆れてしまうのは、「自分はタバコを吸うけど、他人の煙は嫌」という喫煙者が存在することなんですよね……。
人間は勝手なもんです。
投稿: tak | 2008年12月 9日 18:41
19の誕生日にロングホープを初めて吸って、49の誕生日の前日にショートホープでおしまいにした者です。周囲の方々は「意志が強い」と言いますが、私は「吸いたい意志が皆より弱い」と答えています。
まあ、吸ってた時代は講演会なんかへ参加したときも「どこで吸えるか?」などを優先していたのでしんどかったです。
今、そんなときはとても気楽。
が、某レンタルDVD・CDの袋に吸着している他人のニコチン臭はとても嫌な気になります。
投稿: jersey | 2008年12月10日 00:39
jersey さん:
>19の誕生日にロングホープを初めて吸って、49の誕生日の前日にショートホープでおしまいにした者です。
これは、何かの隠喩ですか ^^;)
>周囲の方々は「意志が強い」と言いますが、私は「吸いたい意志が皆より弱い」と答えています。
そういう人もいるようですね。
「やめようと思えば、いつでもやめられる」とか、「1年間やめてたけど、なんとなくまた吸い始めた」 とかいう人がいるのに驚きます。
ずっとやめときゃいいのに。
吸わない方が楽ですよね。
スモーカーのストレス
1.禁煙スペースが増えたので、気楽に吸えない
2.タバコ切れでイライラするので、常に用意しとかないと不安
3.タバコの値上がりは痛い
4。白い目で見られる
5.健康不安
7.吸い殻の後始末
ノンスモーカーは上記のストレスからは開放されているものの、スモーカーからの煙攻勢が悩みの種です。
投稿: tak | 2008年12月10日 09:06
お久しぶりです。
って覚えてもらってなかったりして(笑)
先日友人を馴染みの店に連れて行ったのですが店内禁煙になってました
食事が終わり、帰り際どうだった?と聞くと
(連れて行った手前、気になります)
喫煙者の友人はタバコが吸えないから嫌だと…
僕自身ヘビースモーカーの部類に入りますがなにか一言(嫌いとか苦手とか)言われれば吸わなくても平気なタイプなので
一時間ぐらいと言うか食事時ぐらい我慢できんのか!
なんて心の声が(笑)
まぁ正直、分煙だ嫌煙だと目くじら立てて騒ぐのもどうかと思いますけど
子供の頃は大嫌いだったんで喫煙者の言い分だ!なんて言わないでくださいね(笑)
投稿: はじ | 2008年12月10日 13:58
はじ さん:
>一時間ぐらいと言うか食事時ぐらい我慢できんのか!
>なんて心の声が(笑)
そのくらい我慢できないと、飛行機に乗れません。
いや、飛行機に乗れば我慢できてるんですから、大丈夫なはずですよね。
ただ、飛行機から降りると、ダッシュで喫煙所に行ってタバコ吸ってるようですけどね。
だから、吸わない方が楽だよっていうんですけど ^^;)
投稿: tak | 2008年12月10日 16:09
>ご自分のブログに書いてありますか?
いや、書いてません(^^; 要は、マナーの問題を法令で規制するな、ということなんですが……。
なんというか、「あの、吸ってもいいですか?」「ええ、どうぞ」(と私はいちおう言います)という礼儀(?)が無くなる損失は、煙害が無くなる利益を上回ってしまうような気がして……。
投稿: 山辺響 | 2008年12月10日 18:47
Just ごもっとも。
僕は煙草をノミマスが周囲の人の肺には気を使います。
オーストラリアより
tai
投稿: tai | 2008年12月10日 22:28
山辺響 さん:
>要は、マナーの問題を法令で規制するな、ということなんですが……。
なるほど。
そういえば私も、2年ちょっと前に 「国旗国歌法」 について、「そんなこと、法律で縛るな」 と書いています。
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2006/09/__52b7.html
山辺響さんとスタンスは違うんでしょうけど (私は右派というポジショニングのようなので ^^;)、、視線の当て方にはかなりよく 「なるほど!」 と啓発されてしまいます。
投稿: tak | 2008年12月10日 23:53
tai さん:
>僕は煙草をノミマスが周囲の人の肺には気を使います。
お気遣い、感謝です。
ノンスモーカーが増えることを望む次に、あなたのような方が増えることを望みます (^o^)
投稿: tak | 2008年12月11日 00:02
お邪魔します。
パブリックスペースで“喫煙所”が設定されていない場所ですと、路上に喫煙者の粗相が発生します。これは極めて重要な問題です。
他人の空気を汚すことも主眼として当然ですが、地球環境を汚していることも、大いに語っていただきたいところです。
海がめの死体からタバコのフィルターが見つかった(しかも死因だったりするし)話とか、排水口が詰まっちゃった話とか、路上のポイ捨てに対して“ポイ捨て者”は自覚がたらなすぎる!
わざわざ注意すると、知らぬ顔のはんべいを決め込んでみたり、「いいじゃないか!ちゃんとどぶに捨てたんだから!」といわば理解不能な逆ギレされてみたり、お前らのようなアンプォンタンがのうのうと社会で偉そうにしているのかと思うと、…(以下略)。
投稿: 乙痴庵 | 2008年12月11日 12:43
乙痴庵 さん:
だいぶ義憤にかられておいでですね。
おっしゃるとおり、タバコには害になることが多すぎます。それは個人的な健康問題に限ったことではありません。
マナーを守る喫煙者という存在も、社会に貢献しているというよりは、社会と環境に垂れ流す害毒を、極力抑えているというだけのことです。
まあ、喫煙者に限らず、人間は生きてる限り環境には害毒を垂れ流しているわけですが、それならばこそ、とりあえずタバコによる害毒ぐらいは、今からでもゼロにできるはずじゃないかと、私は思います。
投稿: tak | 2008年12月11日 13:54
絶縁して十年経ちますが、ファミレスに行くと“たばこはお吸いになりますか”と必ず聞かれますが、返事に窮します。
吸わないと答えると、五月蝿い子どもとオバサンの隣の席に案内されるからです。あの騒々しさには我慢ならんし、たばこの煙もだめ。大人専用の禁煙席作ってほしいなあ。けど無理だろうな。
投稿: 偽浜っ子 | 2008年12月12日 01:22
偽浜っ子 さん:
>吸わないと答えると、五月蝿い子どもとオバサンの隣の席に案内されるからです。あの騒々しさには我慢ならんし、たばこの煙もだめ。
本文にも書きましたが、私の印象では子ども連れは喫煙席に座るパターンが多い (両親のうちどちらかがスモーカーである確率が高いためか) ように思いますけどね。
土地柄によるのかなあ。
投稿: tak | 2008年12月12日 12:21