肝心なのは英語教師の力量
「エイゴの時間」というサイトに「remember to do と remember doing」というページがある。2つの言い回しの違いは何かということだ。
正解は "remember to do" は「これからするこを覚えておく」ということで、"remember doing~ は「過去にしたことを覚えている」ということだ。同じ意味じゃないのである。
その昔、学校英語で、不定詞と動名詞というのを教わった。そして不定詞にも名詞的用法と形容詞的用法と副詞的用法とがあって、どーたらこーたらで、名詞的用法の場合は、動名詞を使った場合と同じ意味になるとかいうのであった。実際はそんな単純なもんじゃないのだが。
前述の二つの用法は、どちらも名詞的用法だが、意味が違ってしまう。いや、もしかして "remember to do~" は副詞的用法の範疇 (「~するために覚えている」って感じ)なのかなあ。ああ、わけわからん。こればっかりは、文法なんかで覚えるよりも、できるだけ英語に接して感覚で理解する方がずっと確実だ。
ネイティブ・スピーカーだって、いちいち「これは名詞的用法」とか「これは副詞的用法」なんて考えながら使い分けているわけじゃあるまいし。
昨年 12月 23日に書いた「英語の授業と東京タワー」という記事で、「高校の英語の授業は、原則として英語で進める」という文科省方針に、現場の教師が困惑しているというようなことについて触れた。
高校でそのレベルの授業をするためには、中学できちんとした基礎を身につけなければならないだろう。しかし中学の英語の先生って、本当に大丈夫なんだろうか。大丈夫な教師もいるんだろうが、私は自分の経験から、ちょっと心配である。
私は田舎の中学での 3年間を、英語教師のあまりのお粗末さに呆れて過ごした。昨年のエントリーで触れた上野先生の塾でちょこっと英語を習ったばかりの私が、中学の教師の教える英語のひどさには、毎回がっくりくるのである。そして「この教師を信じたら、とんでもないことになる」 と感じていた。
とくに A という教師は発音から何から間違いだらけなのだが、中学校 2年の年のある日、とても我慢のならないでたらめを我々に教え込もうとした。"I stopped to read a book." と "I stopped reading a book." は、両方とも「本を読むのを止めた」という同じ意味だというのである。
普段は「まったくしょうがねえなあ」と聞き流すことに決めていた私だが、こればかりは我慢がならず、「先生、いくら何でも、それは違う」と注意したのである。「本を読むために止まった」と「本を読むのを止めた」とは、全然違う。
ところが彼は「違わない、同じ意味だ」と言い張る。「不定詞と動名詞は同じ意味だ。文法的にそうなっている」と、しまいには怒り出すのである。私は「それじゃ、先生は勝手にそう思っていればいい。こっちも勝手に本当のことを学ぶから」と、匙を投げた。
この時、クラスメイトはその A という英語教師よりも私を信じた。私の英語の方が使い物になるということは、既に証明済みだったのだ。前述の「英語の授業と東京タワー」の記事で書いたように、中学 2年生の私が米国人と英語で話すのを、クラスメイトたちは目撃しているのだから。教師の A の方が、外国人と英語で会話できそうには到底見えなかったし。
後日 A は私にこっそりと、「あの時は済まなかった。後でよく調べたら、お前の方が正しかった」と詫びてきた。当たり前だ。ただ、それまで何年生徒にデタラメを教えてきたのだ。
私は「それじゃ、授業でもちゃんとそう言ってください。俺たちは嘘を教えられてしまったんだから」と言ったのだが、ついに彼は授業の中では自分の間違いを認めなかった。多分、翌年からはその部分だけは修正されただろうが。
平成の御代の中学の英語教師は、いくら何でもこれほどにはひどくないだろうが、それでも私の不安は消えない。英語の授業は(本当は英語の授業だけではないだろうが)、文科省の方針以前に、教師の力量が大きく左右するのである。
高校の教師が、今さらながら英会話スクールに通って会話を学ぶなんてことがあるらしいが、お笑いぐさである。本来なら街の英会話スクールごときは、英語の教師が参加するには、ちゃんちゃらおかしいレベルのはずではないか。
「本当に英語のできるやつは、学校で子どもなんか相手にせず、自分の商売に使う」と聞いたことがあるが、確かにそうかもしれないと思ったりする。そうなると、ちゃんとした英語を教えてくれる先生に巡り会うのは、よっぽど運がよくなければならないだろう。
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コメント
もう三日になってしまいましたが、明けましておめでとうございます。
>本当に英語のできるやつは、学校で子どもなんか相手にせず、自分の商売に使う
これは、数学や理科に関しても言える事ですね。もっと言えば、よい教師になれる人は民間会社で良い管理職になる素質もあるでしょうし。
要は教員という職業を魅力あるものにしないと人材は集まらないということですね。
良い教師と駄目な教師を区別することは、その重要なステップ(これができないと待遇を良くすることもできない)だと思います。一方、やりがいを持ってもらうという意図と無関係な、単なる教師いじめみたいな制度変更とか締め付けは逆効果でしょう。このへんで、日教組と反日教組勢力がそれぞれ都合の良いところだけ主張し、結局子供たちにしわ寄せが行ってるというのが現状でしょうか。
投稿: きっしー | 2009年1月 3日 14:27
教職課程の資格所得はけっこうむずかしいと聞きましたが、そうなんでしょうか?
もしそうなら、英語の教員のレベルはどうして低いんでしょうか?
(「低い」という前提でものを言ってしまっていますが)
印欧語と日本語の言語的距離は極めて遠いので、漫然と学習しただけでは、英語的発想が身に付きませんね
投稿: alex99 | 2009年1月 4日 01:01
訂正
教職課程の「資格所得」
は
「資格取得」
でした
m(_ _)m
投稿: alex99 | 2009年1月 4日 03:29
運が悪かった生徒だった一人と、自分の学習意欲の無さを英語教師に責任転嫁してしまう私です。
故櫻内義雄氏が外務大臣在任中、レーガン米大統領(当時)と桜舞い散る散歩道すがら、i am cherry!!とのたまったという事実を知って、外交を専門とする部門の親方が英語、たぶん世界の共通語を間違うのだから別に英語出来なくても良いかな。とか思ってしまったのだが、やっぱ、英語知らないと不自由しますね。
そして、出来ない者のひがみですが、山手線車内等で、こっちが、オレンジ色の憎い奴のキャッチフレーズのサンケイスポーツのエッチ紙面でニヤニヤしてる時、Daily Yomiuriをおもむろに広げてニヤニヤしてるおっさん!あんた、それ本当に読めてるの?って思うのです。僻みと妬みが一杯になるのです。
投稿: やっ | 2009年1月 4日 07:37
オレンジ色の憎い奴は、サンスポじゃないですね。夕刊フジですね。失礼しました。
投稿: やっ | 2009年1月 4日 07:45
きっしー さん:
>要は教員という職業を魅力あるものにしないと人材は集まらないということですね。
>良い教師と駄目な教師を区別することは、その重要なステップ(これができないと待遇を良くすることもできない)だと思います。
我が家の 3人の娘が学校に通っていた頃、時々授業参観というのに出ましたが、先生の授業の進め方を見ていると、「この人、よく先生やれてるなあ」 と思うことが度々でした。
教師に対して無茶苦茶を言うモンスター・ペアレントが問題になっていますが、言われる教師の方にも問題ないわけじゃないなあというのが、正直な感想です。
>このへんで、日教組と反日教組勢力がそれぞれ都合の良いところだけ主張し、結局子供たちにしわ寄せが行ってるというのが現状でしょうか。
国の主導で進まないのは教育改革に限りませんが、うっとうしいところです。
投稿: tak | 2009年1月 4日 09:24
alex さん:
>教職課程の資格取得はけっこうむずかしいと聞きましたが、そうなんでしょうか?
教職課程とは無縁でしたので、私も知りません。ただし、実際の教師としての採用に関しては、非常に難しいというのは事実です。なにしろ、親とか近い親戚とかが教師でないと合格できないので。
>もしそうなら、英語の教員のレベルはどうして低いんでしょうか?
教員資格を取っても、親とか親戚とかに教師のいない優秀な子は、教育以外の仕事に就いてしまうからではないでしょうか ^^;)
投稿: tak | 2009年1月 4日 09:34
やっ さん:
>Daily Yomiuriをおもむろに広げてニヤニヤしてるおっさん!あんた、それ本当に読めてるの?って思うのです。
Daily Yomiuri とかは、あんがい読みやすいという印象です。
字面は英語ですが、バックグラウンドは日本人の感覚、つまり日本語直訳調で、日本人にはすらすらと入りやすい気がします。
本当に国際的感覚の情報を読みたいなら、Time とか Newsweek とかを、シコシコ 1週間かけて読む方がいいかも。最近は忙しくてやってませんが。
ただし、ボキャブラリーが最低でも 8,000語ぐらいないとしんどい。できれば 12,000語とか、それ以上。
とくに難しいのはエンタテインメント情報。向こうの新語とか流行りとかがわかってないと、ちんぷんかんぷんだったりします。
投稿: tak | 2009年1月 4日 09:44