フードの縁のファー(毛皮) で考える
前の冬シーズンから、ダウン・コートやパーカのフードの縁に、貧相なファー(毛皮)のくちゃくちゃっとついたのが大流行である。
若い子たちの着ているものを見ると、大抵そんなデザインで、しかもそのファーがいかにもみっともなさげに付いており、見るだにおいたわしやという気になってしまう。
昨年の秋に「ダウン・コートを買うときの注意」という記事を書いた時、「今年もフードの縁に毛皮が使われているタイプが流行りそう」と書いたが、その通りというか、思った以上の流行だ。まるで「フードは安っぽいファーで縁取りするものです」と言わんばかりの「右へ倣え」現象である。やれやれ、何が「ファッションの多様化」だ。
一方では、「毛皮を着るぐらいなら裸で行くわ」と、盛大にヌードを公開してまで毛皮反対運動を行っている PETA (動物の倫理的扱いを求める人々の会)という団体もある。昔は人の着ている毛皮にいきなりスプレーでペンキをぶっかけてしまうなんていう強硬手段をとることもあったようだが、今はそこまで過激じゃないようだ。いろんな噂もあるけど。
確かに、毛皮というのはけっこう残酷である。毛皮に傷つけないために、生きたまま吊した動物の毛皮をいきなり生はぎしてしまう映像が、インターネットで公開されたりしている(リンクは敢えてしない)。少なくとも愉快な映像ではない。
同じ動物を殺して得るのに、どうして毛皮だけが目の敵で、レザーなどの皮革はお構いなしなのかと疑問を呈する人もいる。その答えとして、皮革業界は「皮革は肉を食べる牛などの動物の皮を利用するので、野生動物を毛皮のためだけに殺すのとはわけが違う」と説明している。
野生動物の毛皮だけ取るのも家畜の肉を食って皮まで利用するのも、五十歩百歩という気もするが、まあ、確かに 50歩と 100歩の違いぐらいはあると言っていいだろう。
北極圏などの極寒の地域に暮らす人たちは、昔から毛皮を着て寒さをしのいだ。それは狩りをして肉を食い、残った毛皮を利用するのである。現在の皮革業界の言い分とそれほど変わらないし、彼らにしてみればそれしか生きていく方法がなかったのだから、責められることではない。
しかし現代の毛皮を着る人たちは、別に野生動物を(毛皮のための養殖もあるようだが)殺さなくても、寒さで凍えることはないのである。私はミンク 50数匹分なんていう豪華な毛皮を着ている人をみると、「この人、きっとろくな死に様しないぞ」なんて余計なことまで、ちらりと思ってしまうのである。
ヌードになってまで動物を無駄に殺さないことを訴えている勢力がある一方で、平気で毛皮商品を作って売るメーカーがあり、それを嬉々として買う消費者もいる。情報とは、かくも偏在するものである。いくら強力に情報発信しても、受ける気のないところには決して届かない。
温泉や銭湯に「タオルを浴槽に浸けないように」と、いくら大きく注意書きがしてあっても、湯につかりながら平気でどっぷりとタオルを浸し、ぎゅーっ、ジャブジャブっと絞って顔なんか拭いているおっさんが絶えないのと、その構図は変わらない。
ただ、最近はフェイクファーの使用が増えているようだ。ユニクロで売られているダウンコートのフードの縁は、フェイクファーである。さすがユニクロ、その辺はきちんと考えているようなのだが、それならそれで、もうちょっときちんと訴求しないと意味合いも半減するだろうに。
私個人としては、どうせ毛皮なんてイメージ良くないのに(いいと思っている人も多いのだが)、フェイクファーを使ってまで毛皮みたいにみせなくてもいいじゃないかと思ってしまうんだがなあ。まあ、この考えを押しつける気はないけど。
正直なところ、私は PETA みたいに 「倫理的」 とやらの見地を押しつけるというより、単に「他に着るものがいくらでもあるのに、わざわざ殺された動物の毛皮を着るなんて、夢見が悪くない?」という、かなり個人的な感覚で言っているのだが。
あるいは、これは昨日付で触れた「フルーガリスタ」感覚に近いかもしれない(なんて言っておこうか)。
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コメント
私は肉を食べるのが好きです
魚も肉だと思っています
魚を釣り上げて殺してさばいて食べる方が、動物を屠ってむさぼるより罪が軽いとも思いません
植物は微妙なところですが
そういう原罪を毎日毎日犯している上は、鯨を食べようが、毛皮を着ようが、大差ないと思っています
むしろそうして、日々悔い改める方がいいのでは?
投稿: alex99 | 2009年1月 9日 17:21
歌手の青山テルマさんの影響らしいですね。
白のファー付きダウンジャケット、白のヘッドフォン、ブーツという彼女そっくりなカッコを
している人を、テルマーというらしいです。
私は、ファーとか毛皮とかってなんか鼻がむずむずしそうでいやなんですよね。
そういえば、子供の頃五月の節句の時、飾られていた甲冑の下にウサギ
の皮が敷いてあって、「かわいそう」と大泣きした、そんな頃もありましたが。(笑)
投稿: 雪山男 | 2009年1月 9日 17:34
皮のコートやジャケットに憧れてはおりますが、重くて着たくないって思っちゃうアタクシです。
毛織物は毎日死ぬほど(←大げさな)着てますが(あ、ちょこっと化繊の混ざった安物スーツです)、毛皮の良さは分かりません。(着たことないし)
バブリーな頃に、スキー場に咲いた麗しき花々(女性スキーヤー)のウェアには、これ見よがしに、黒塗り高級車のお供の毛ばたきみたいなモコモコのついたフードがなびいていました。
あのフードつきスキーウェアは、一世を風靡していたと思います。大体スキーショップのウェアコーナーには、あれしか並んでなかった印象もあります。
ケド、髪の毛の長い方の話では、アレとっても邪魔だったんですって!
今お使いの方々は、邪魔とは思わんのだろうか?少なくとも満員電車でアレと密着するのは、精神衛生上よろしくない。(きれいなオジョーサンのなら喜んで!ボカッ!)
実用よりもスタイルが勝る。流行ってすごいね。(なんか投げやり)
投稿: 乙痴庵 | 2009年1月 9日 18:03
alex さん:
>むしろそうして、日々悔い改める方がいいのでは?
日々悔い改めることが多すぎて、これ以上は罪を重ねたくないという気がしてきてるんですわ ^^;)
投稿: tak | 2009年1月 9日 22:14
雪山男 さん:
>歌手の青山テルマさんの影響らしいですね。
知りませんでした。
へへぇ、そういえば、そうなんですね。
へへぇ~~ !
>私は、ファーとか毛皮とかってなんか鼻がむずむずしそうでいやなんですよね。
私もそうです。
混雑した電車の中で、隣に毛皮のおねえちゃんが来ると、逃げます ^^;)
>そういえば、子供の頃五月の節句の時、飾られていた甲冑の下にウサギの皮が敷いてあって、「かわいそう」と大泣きした、そんな頃もありましたが。(笑)
昔は多くの家でウサギを飼っていて、毛皮を売って肉を食ったようです。その名残でしょうね。
毛皮は軍隊が使ったようで、肉の方は、「これは鳥でっせ」 という見立てで、一羽、二羽と数えたもののようです。
どう見ても、鳥じゃないですがね。
投稿: tak | 2009年1月 9日 22:20
乙痴庵 さん:
>バブリーな頃に、スキー場に咲いた麗しき花々(女性スキーヤー)のウェアには、これ見よがしに、黒塗り高級車のお供の毛ばたきみたいなモコモコのついたフードがなびいていました。
ああ、その頃私は、外資系団体にいて、円高のせいで泣いてましたから、そんな華やかなシーンの記憶はまったくないです。
それからずっと、「失われた20数年間」 みたいなものですわ ^^;)
>今お使いの方々は、邪魔とは思わんのだろうか?少なくとも満員電車でアレと密着するのは、精神衛生上よろしくない。(きれいなオジョーサンのなら喜んで!ボカッ!)
雪山男さんへのレスにも書きましたが、私はきれいなオジョーサンだろうが、逃げます。
(苦手なのよね ^^;)
投稿: tak | 2009年1月 9日 22:24
おや?珍しくtakさんのコメント、聞こし召してらっしゃいますか?
そうでなければ、お忙しい?
現在結構混雑している電車内ですが、フード付き、フード+(あやしい)毛付きの上っ張りパースンがいらっしゃいます。
中にはモコモコ+マフラーの寒冷地仕様の方も…。
アッシも、缶ビール飲みました。ただ今心地よく揺られております。
投稿: 乙痴庵 | 2009年1月 9日 22:37
肉以外の食料も珍しくもない。
動物実験が欠かせない医薬品が増えなくてもそこそこ生きていける。
工業製品のために、原料採掘、生産、流通、その他の様々な過程で様々な動物を様々な形で犠牲にしている(おそらくは毛皮の比ではないでしょう)。
命は、動物にも魚にも虫にも植物にもある。
適切な命の奪いかたとはどんなものかと言う問いに、答えなんて絶対に出ないでしょう。命を尊重し尽くしたライフスタイルなんて夢想です(あえて言うなら原始生活でしょうか)。
投稿: fn.line | 2009年1月10日 02:40
ただ着るためだけに、その時代の流行を追うためだけに、多くの動物が犠牲になっているのは考えものです。
ただ動物愛護団体がもうちょっと落ち着いた活動をしてくれたら風潮も変わるかなあ…とは思いますが。。
投稿: 深海 | 2009年1月10日 04:23
乙痴庵 さん:
>おや?珍しくtakさんのコメント、聞こし召してらっしゃいますか?
>そうでなければ、お忙しい?
もしかして、ナチュラルに酔っちゃってたかも ^^;)
>アッシも、缶ビール飲みました。ただ今心地よく揺られております。
乗り過ごさないようにしてくださいね (^o^)
投稿: tak | 2009年1月10日 10:55
fn.line さん:
>適切な命の奪いかたとはどんなものかと言う問いに、答えなんて絶対に出ないでしょう。命を尊重し尽くしたライフスタイルなんて夢想です(あえて言うなら原始生活でしょうか)。
「全てか無か」 で考えるとそうなります。
投稿: tak | 2009年1月10日 10:57
深海 さん:
>ただ着るためだけに、その時代の流行を追うためだけに、多くの動物が犠牲になっているのは考えものです。
>ただ動物愛護団体がもうちょっと落ち着いた活動をしてくれたら風潮も変わるかなあ…とは思いますが。。
同感です。
あの人たち、ややもすると (あるいは、しないでも)、エクストリームに走りたがるので。
投稿: tak | 2009年1月10日 10:58
tak様
コメントを頂けるとは思いませんでした。ありがとうございます。
ちょっと回りくどかったかもしれません。
生存に必須でないもの、音楽、スポーツ、絵画、テレビ番組、ゲーム、…があふれかえっています。これらを生み出す過程(生産、流通、開催、採掘、…)で壮絶な数の動物を含む命を奪っています。毛皮のコートはたまたま、死体?を被るので目立っているだけです。
先進国の生活をあまり意識せず普通にしている人間に、毛皮のコートを非難する資格があるんでしょうか?
93万を盗んだひったくりが、110万を盗んだ窃盗犯を非難しているようなものではないでしょうか?
投稿: fn.line | 2009年1月10日 13:12
fn.line さん:
>先進国の生活をあまり意識せず普通にしている人間に、毛皮のコートを非難する資格があるんでしょうか?
>93万を盗んだひったくりが、110万を盗んだ窃盗犯を非難しているようなものではないでしょうか?
ある意味では、お前だって 93万盗んでるじゃねえかと、開き直りたくはないなということです。
投稿: tak | 2009年1月10日 23:49