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2009年1月15日

小正月と松の内

今日は小正月。昔から 1月 15日は小正月と言われているが、子どもの頃は、「それって、一体何なんだ?」と思っていた。

関東では幕の内は 1月 7日までというのが慣例だが、関西ではこの小正月までが松の内というところが多く、実はこの方が古来の慣習に則っているようなのだ。

そもそもこの小正月というのは何なのかというと、年が明けてから初めての望月(満月)の日なのである。旧暦では正月に限らず、一日(ついたち)は、「月立ち」から来たというぐらいで、新月の日だった。十五夜は満月という決まりだから、旧暦の 1月 15日も満月になる。まあ、厳密に言えば暦と月齢が正確に一致することは稀なのだが。

そして、この小正月というのは、元々は満月の日を新年の初めの日としていた太古の昔の名残らしいのだ。まあ、確かに満月で歳が始まる方が威勢がよくて気持ちがいいだろう。中国渡りの暦システムで新月の日が歳の初めになったことに対する、ちょっとしたレジスタンスが、小正月なるものを生み出したのかもしれない。

だから、元日から小正月までを「松の内」とするのは、暦の上での新年初日から、精神的な名残としての新年初日である満月の日までを、特別な期間とするメンタリティから来ている。

だから、日本古来の元日は、旧暦 1月 1日(西暦でいえば今年は 1月 26日)であり、それから 15日間(西暦では 2月 9日まで)が松の内ということになる。この頃には立春も十分に過ぎるから、余寒の候とはいえ「新春」というにふさわしい季節感になる。新暦の元日は、新春というには早すぎる。

というわけで、私は年賀状に「新春のお慶びを申し上げます」とか「迎春」とか書くのは、いかがなものかと思っている。例年 1月 5日頃に「寒の入り」になるのに、1月 1日の時点で「新春」とは白々しすぎる。年賀状にどうしても「新春」とか「迎春」とかいう文字を入れたかったら、旧正月に届くように出せばいい。

松の内の話に戻るが、関東では松の内といえば 1月 7日までということになってしまっているが、これは、幕府のお達しによってそう決められてしまったらしい。Wikipedia には、次のように説明してある。(参照

松の内の短縮については、寛文2年(1662年)1月6日 (旧暦)、江戸幕府により1月7日 (旧暦)を以て飾り納めを指示する最初の通達が江戸の城下に町触として発せられており、それに倣った風習が徐々に関東を中心に広まったと考えられる。幕末の考証家である喜田川守貞は、この時同時に左義長(いわゆる「どんど焼き」)も禁止されていることから、松の内短縮発令の理由を注連飾りを燃やすこの火祭りによる火災の予防の一環だとしている。

どうやら、あんまり火事が多かったので、松の内が短縮されてしまったようなのだ。松飾りは本来なら、小正月まで飾っておくものらしい。

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比較文化・フォークロア」カテゴリの記事

コメント

うちもお正月飾りから団子刺しに変わりました。
 ちょっと大仰な歳神様と餅紙から、団子刺しに変わった我が家の神棚も何か素朴な
感じで、これはこれで良い物ですね。
 うちの子供たちも、餅をついて、団子刺しをつくって小正月の行事を楽しんできた
ようです。
 ただ、私の住んでいる地域はニュータウンということもあり、たき火禁止でして
どんと焼きはできません。
 子供たちの生活から、直火がなくなってしまうのは、子供が直火の暖かさや火の
怖さを忘れていくようで、ちょっと残念のような気がします。

投稿: 雪山男 | 2009年1月15日 14:55

夫の実家の伊勢では、玄関に一年中しめ飾りを掛けています。
年末に掛け替えて、一年飾った古い方を大晦日の晩に神宮に持って行って焼いてもらうのが「どんど焼き」なんだそうです。
うどんのつゆといいどんど焼きといい、あの辺は文化のエアスポットみたいな所です。

投稿: karin | 2009年1月15日 23:26

雪山男 さん:

>うちもお正月飾りから団子刺しに変わりました。

「団子刺し」 というのがわからなかったので、ググってみました。
「ほほう!」 と感動です。

庄内地方では、私の知る限りではやらないですね。

どんと焼きは、廃れていきそうな気配ですね。
ただでさえたき火を自粛する傾向にあるのに、心ない人がゴミを置いて行っちゃうそうで。
「燃えないゴミ処理」の行事じゃないっちゅうに。

投稿: tak | 2009年1月15日 23:37

karin さん:

>夫の実家の伊勢では、玄関に一年中しめ飾りを掛けています。

さすが、伊勢という感じですね。
それぞれの家が、それぞれ 「おやしろ」 なのかなあ。

>うどんのつゆといいどんど焼きといい、あの辺は文化のエアスポットみたいな所です。

音に聞く 「伊勢うどん」。
私はまだ食べたことがありませんが、興味津々です。

投稿: tak | 2009年1月15日 23:47

眠たい目をこすりながら・・・。こんばんは。
小正月ですね。宮城県は、全県を挙げて焼きます。大仁田厚も真っ青になるような Fire っぷりです。というのは、どうでも良いことなんです。今日のtakさんのエントリー「小正月と松の内」にタイムリー的なラジオ放送を聴いたので報告いたします。
小正月は、「こしょうがつ」ですよね。ですよね。ショウショウガツじゃないですよね。え?私が間違ってるんですか?。否、そんなはずはない。絶対に「コショウガツ」でしょう!?
それなのに、J-波(英語読みにしてください)の人気番組を担当するDJが、ショウショウガツ!ショウショウガツと連発。その謂れとか事、詳細に、どこかで聞いてきたように語るわけですよショウショウガツの事を・・・。知らぬが仏とは良く言ったもんですが、聴いてるこっちは、なんと馬鹿らしく、由来など詳細に語れても、萎えちゃいます。

って、本当は、ショウショウガツって言うのでしょうか?。某DJも、一応、都の西北を卒業してるわけで・・・。それも、takさんの学部後輩だったりして・・・。日本という国土の狭い経済大国の舵取り、麻生首相も読み間違いがあるから、指摘しても屁の突っ張りにもならないような気がするが、某DJさん、大丈夫?って思ってしまいました。そして、放送ブースの向こうでモニターしてるディレクターも指摘しないのだろうか。NHKの言葉おじさんに尋ねたくなってしまいました。

投稿: やっ | 2009年1月16日 03:21

やっ さん:

>人気番組を担当するDJが、ショウショウガツ!ショウショウガツと連発。その謂れとか事、詳細に、どこかで聞いてきたように語るわけですよショウショウガツの事を・・・。

ハ、ハズカシ …… ^^;)

>某DJも、一応、都の西北を卒業してるわけで・・・。それも、takさんの学部後輩だったりして・・・。

おいおい、ハズカシ~~~ (T_T)

>そして、放送ブースの向こうでモニターしてるディレクターも指摘しないのだろうか。

五木ひろしのレコーディング・スタッフも、誰一人気付かないんだし ^^;)

https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2008/12/post-1b48.html

それに、賑々しい日本料理のお店でも、賑々しく 「しょうしょうがつ」 とフリガナ振ってるし。

http://www.sakuichi.com/seasons/jan.html

投稿: tak | 2009年1月16日 07:13

団子刺しは庄内ではやらないんですね。

あわてて、団子刺しを私も検索したんですが、どうやら山形でも南部置賜のほうでしか
やらないんですね。
そういえば、団子を繭玉に見立てるという話を聞いているんで、養蚕の盛んな地域限定
なのかもしれませんね。

投稿: 雪山男 | 2009年1月16日 08:32

雪山男 さん:

>そういえば、団子を繭玉に見立てるという話を聞いているんで、養蚕の盛んな地域限定なのかもしれませんね。

なるほど。そういうことですか。
でも、おもしろい風習ですね。

投稿: tak | 2009年1月16日 10:08

ではだ、岐阜県から参戦。
『飛騨のはなもち』です。
 http://hana-mochi.jp/index.html
 特に『そのあと喰う』ことには言及されていません。

 まだ、心とお財布に余裕のあった頃は、カーちゃんと小僧を連れて、飛騨高山へドライブがてら、買いに行ったもんです。


 すみません。口に出すことはほとんどなかったので、実害は多分ないと思いますが…。
 『しょうしょうがつ』
 と、思い込んでおりました。勉強になりました。

投稿: 乙痴庵 | 2009年1月16日 12:46

乙痴庵 さん:

>『飛騨のはなもち』です。

へぇえ~、あちこちに似たのがあるんですね。
これは小正月じゃなく、元日から飾るみたいですね。

いろいろな風習があるものだなあと、改めて感慨深いものがあります。

投稿: tak | 2009年1月16日 14:48

>乙痴庵さん

花もち!懐かしいです。
私の実家はそこなので・・・
祖父母が健在の頃は家で作っていました。
あの辺は一年中おもちを食べるんですよね。
他所では正月しか食べないと聞いて愕然としました。
花もちと一緒に、縁起物の飾りを吊り下げた松の枝を玄関や客間に飾る「松飾り」も独特です。
「常緑樹の松を飾って長寿を願う」というもので、理屈はクリスマスツリーと一緒です(笑)

投稿: karin | 2009年1月16日 17:09

karin さん:

「団子刺し」 と 「花もち」 は、しっかりインプットしました。
「花もち」 の方がちょっと華やかっぽいですね。

宇都宮の餃子、飛騨のもち という路線が生じるかもしれませんね ^^;)

投稿: tak | 2009年1月16日 22:39

→karin さん

おおっ!同郷の士。(といっても小生東濃ですけどがぁ)

そういえば、高山市内にて何軒か餅屋さんを見ました。豆餅を売っていたので、帰りの車内で『パクパク』。
ウチの近所だと、(お祝いのときなど)和菓子屋さんで餅を買います。


takさん。
どーも!岐阜県連絡会事務局でした。

投稿: 乙痴庵 | 2009年1月17日 12:44

乙痴庵 さん:

>そういえば、高山市内にて何軒か餅屋さんを見ました。

餅屋という商売が成立するんですねぇ。
(びっくり)

投稿: tak | 2009年1月17日 15:59

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