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2009年2月27日

たった 90日で 「英語がペラペラ」 になるなんて

昨年、高校英語の授業を基本的に英語で進めるという文科省方針で関連記事を書く時に、「英語/ 学習法」 などのキーワードでググっみて、ちょっと気になったことがある。

Google 検索結果ページ右欄の 「スポンサーリンク」 にものすごく魅力的なタイトルのページがいくつか表示されるのである。

スポンサーリンクだけではなく、検索結果の欄にも似たような趣のタイトルがいくつも表示される。

いわく 「正しい英語学習法」 「最速英語学習法 超実践トレーニング」 「3ヶ月ペラペラ英語学習法」 「英語学習法。英語脳を作れ」 「カリスマ英語速習法プログラム!90日間で英語ペラペラになる」 「英語 英会話 喋れない が ペラペラに 」 …… 等々。探せばいくらでも出てくる。

これらのサイトをランダムに覗いてみると、明らかにいくつかの共通点が見いだせる。以下に箇条書きにしてみよう。

  1. 一見して、トップページの造りがやたらと長い。まるで巻紙のようで、延々とスクロールさせられる。
  2. 大抵は冒頭で、「英語が苦手だった 『私』 は、いろいろな学習法を試したが、ことごとくモノにならなかった」 というようなことが語られる。
  3. そしてついに 「私」 は、悪いのは自分ではなく、従来の英語学習法なのだと悟る。
  4. そこで 「私」 は、新しい発想にトライし、そのメソッドにしたがって学習した結果、3ヶ月 (90日とかいう表記もある) で見違えるほどペラペラになった。
  5. 今では TOEIC で高得点が取れるようになり、米国人からも 「ネイティブ並み」 と誉められる。
  6. だが、結局のところ、その 「新しい発想の学習法」 がどんなものなのかというと、最後まで読んでも、さっぱり要領を得ない。糸口さえも語られていない。

とにかく、どのサイトもおそろしくよく似ているのである。同じ人 (あるいはグループ) か、そうでなくても、いくつかの分派が作っているのではないかと、普通の人なら感じてしまうんじゃないかと思う。

これらのサイトのスタイルは、ある意味、とても魅力的である。なにしろ、のっけから 「あなたが英語が苦手なのは、あなたが悪いんじゃない、従来の学習システムが悪かったのだ。あなたはその犠牲だったのだ」 という、堂々たるエクスキューズが与えられるのだから。

そして、従来の学習システムへの批判が延々と展開される。「基本文型を丸暗記しても役に立たない」 「英語を長時間聞き続けるなんて無駄」 「英会話スクールの先生はネイティブ・スピーカーというだけで、教えるノウハウがない」 「海外留学しても、ただとまどうだけ」 等々。

自分以外に向けられた悪口を読むほど気持ちのいいことはない。読者は 「そうだ、そうだ、その通り!」 と思ってしまう。「私がいくら英会話スクールに金を注ぎ込んでもモノにならなかったのも、当然だったのね」 というわけだ。

従来のメソッドを散々けなした後に、ほんのチラリと、一見もっともらしいことが語られる。いわく 「英語脳を鍛えなければならない」 「英語と日本語の発音は 『周波数』 が違う」 「ネイティブの学習法に沿う」 等々。要するに、日本語と英語は根本的に違うので、まったく新しい学習法が必要だというのだ。

しかしそれらの記述はとても漠然としていて、それ以上踏み込んだ説明は非常に注意深く避けられている。基本的に、従来システムの悪口と 「新発想」 とやらのチラ見せのキャッチボールで、トップページの中程は延々とスクロールさせられる。

私はこれらのサイトをみて、はなはだ恐縮ながら、大道芸とか見世物小屋を連想してしまった。

「この袋の中に大蛇が入っているから、今、出してみせる」 と言いつつ延々と口上を述べて、しまいにはちょっとした膏薬を売る大道芸とか、蛇をむしゃむしゃ食ってしまうお姉さんが登場するとかいう触れ込みで客を呼び込み、なんだかわけのわからないうちに 「お帰りはこちら~」 になる見世物小屋とか。

で、最後に、その学習法の 「効果」 についてだが、私はその学習法を実際に試したわけじゃないし、試した人が身近にいるわけでもないので、確かなことは何も言えない。

ただ、英語が苦手で、いろいろな教材を買って試しても、英会話スクールに通っても、ちっともモノにならなかった人が、たった 3ヶ月で 「ネイティブ並み」 にペラペラになるなんて、ずいぶん不思議なことがあるものだと思うのみである。そんなことが実際にあるとしたら、奇蹟以上のものだ。

営業妨害なんて言われるのは不本意なので、この程度にしておく。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

昔から雑誌や新聞の広告欄に「15分聞き流すだけ~」などと言う宣伝文句の教材は溢れて不思議に思っていましたが、高校時代のあるとき先生から「そんな勉強法が実在するなら、文部科学省や外国の教育機関がこぞって導入しているはずだが、そんな話は聞いたことがない」と言われて、納得した記憶があります。残念ながら、学問を極めるには地道にコツコツやるしかないのでしょうね。

投稿: naruo | 2009年2月27日 08:26

私の子供の頃の記憶では、米国で現地の小学校に転入した子供は、だいたい3ヶ月くらいでわりあい自由に話せるようになっていました。そういう意味では90日というのはなんとなく「あり得るのかな」と思ってしまいます。
が、あくまでも吸収力の大きな子供の脳、子供のボキャブラリーや構文での話です。娘の塾の宿題を見て冷や汗をかいている現在の私では無理でしょう。わはは。
こういう「やってみないとわからない」「自分に投資」系の商品って、英会話、視力回復、発毛、ダイエット等たくさんありますが、切実なニーズのある人は心の隙間に入り込まれてしまうんでしょうね。

投稿: きっしー | 2009年2月27日 10:16

何度引っかかって電話をとりそうになったことか。(笑)

けれども、今まで最後の一線で踏みとどまり続けていますが、takさんの今回の記事で目が覚めました。
うん、やっぱり努力に勝る勉強法はなしですね。

投稿: 雪山男 | 2009年2月27日 13:29

必要であることが、上達のもっとも近道とも、うかがいました。

 以前のtakさんの記事にもあったような…。
 ネイティヴの思ひ人ができれば、すんなりってヤツ。


 …ダイエットも、地道にコツコツと努力が必要ですねぇ。 ぜんぜんコツコツしてないし…、やせようと思っているだけで、なんらハードな努力(キャンプやコアなリズムとか)してないし…。
 そうだな。ネイティヴの思ひ人ができれば、やせられるかな。(うわぁ~、カーちゃん、言葉のアヤだってば~!)

投稿: 乙痴庵 | 2009年2月27日 18:52

高校のころ友人が「読むだけで背がぐんぐん伸びる!」という本を読んでいるという話を聞いたことがあります。「読むだけじゃ無理だよな」と思いました。

投稿: たんご屋 | 2009年2月28日 08:34

naruo さん:

>高校時代のあるとき先生から「そんな勉強法が実在するなら、文部科学省や外国の教育機関がこぞって導入しているはずだが、そんな話は聞いたことがない」と言われて、納得した記憶があります。

文科省はいざしらず、民間がこぞって導入するでしょうね。確かに ^^;)

投稿: tak | 2009年3月 1日 23:06

きっしー さん:

>こういう「やってみないとわからない」「自分に投資」系の商品って、英会話、視力回復、発毛、ダイエット等たくさんありますが、切実なニーズのある人は心の隙間に入り込まれてしまうんでしょうね。

最近スポーツ新聞の広告欄を賑わしている精力剤とかも、その一つでしょうね ^^;)

投稿: tak | 2009年3月 1日 23:07

雪山男 さん:

>うん、やっぱり努力に勝る勉強法はなしですね。

努力以外に、ちょっとしたコツとかレシピとかはあるでしょうけど、都合のよすぎる極端なアンチョコはないでしょうね。

投稿: tak | 2009年3月 1日 23:09

乙痴庵 さん:

> 以前のtakさんの記事にもあったような…。
> ネイティヴの思ひ人ができれば、すんなりってヤツ。

これは、最も効果的に外国語を学べる方法の一つです。確かに。

でも、万人にオススメというわけでもないし。

投稿: tak | 2009年3月 1日 23:11

たんご屋 さん:

>高校のころ友人が「読むだけで背がぐんぐん伸びる!」という本を読んでいるという話を聞いたことがあります。「読むだけじゃ無理だよな」と思いました。

「読むだけで、背が伸びる運動を自然にしたくなる」 というなら、まだわかる気もしますが ^^;)

投稿: tak | 2009年3月 1日 23:12

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