ファッションと個性
私の「絶好調のユニクロ」という記事に alex さんが敏感に反応して「オシャレという自己表現」という記事を書いておられる。
alex さんはブリティッシュ・トラッドの高級品しか身に付けない人と思っていたが、意外にもユニクロの XL サイズ商品もご贔屓なんだそうだ。いやはや、意外だった。
alex さんは体が大きいので、全ての商品で XL サイズが当然のように供給されているユニクロが、大変ありがたい存在だという。ということは、alex さんは身長は 6フィート (約 183cm) ぐらいあるんだろうなあ。私は日本人としては長身の部類にはいるとはいえ、5フィート 10インチ 1/8 だから、L サイズで十分である。
ちなみに、183cm ぐらいの身長を一言で表現するのに 6フィートというのはとても便利なのでつい使ってしまったが、私の身長を表現するのは、フィート・インチはやたらと面倒くさい。止めときゃよかった。
その alex さんだが、ファッションと個性表現について、次のように書かれている。
Tak-shonai さんのブログのコメントで
「ユニクロの衣類は個性がないのでオシャレが出来ない」
と言う意見があった
これは私にとって「眼からウロコ」だった
実際には、ユニクロ商品の氾濫について、 jeienne さんが 「個性のあるおしゃれができない人達が余計に個性を失っている感じ」とコメントを寄せてくれたのだが、それについて alex さんはちょっと意外な印象をもたれたようなのだ。
alex さんはご自分のファッションを「定番主義、没個性主義」とおっしゃっている。着るもので個性を表現するなんてことは考えたことがなく、むしろ個性を抑える服装を心がけているというのである。それでも、数年前、米国で姪の結婚式に出席した際に、数多い参列者の中で「一番オシャレだった」とみんなに言われたという。
だから、ファッションで個性を表現することと、「オシャレ」ということは、ちょっと別の次元のことのようなのだ。
もちろん、alex さんのようにブリティッシュ・トラッドの高級品が身に付いていれば、それはそれで「個性」と見てもらえるので、まったく別の次元というわけではないのだが、個性表現とオシャレのレベルは正比例ではない。
私も個人的には「敢えて『個性的ファッション』なんてものを志向する気にはなれない」派である。洋服なんて、フツーに着ていればそれでいい。ただでさえちょっと変わってると思われてる気配があるのに、その上ファッションまで無理に個性的にしちゃったら、浮き上がり過ぎてしょうがない。
ファッション業界の中には、さすがに「個性的なスタイル」をしている人が大勢いらっしゃるが、いくらファッションでメシを食っているにしても、「がんばり過ぎ」の人も多い。申し訳ないけど、私の目には「あそこまでやったら、むしろお笑いだね」ってな感じに映ってしまうのである。誰とは言わないけど、あの人とか、あの人とか ……。
とくに今、ファッションで「個性」だの「斬新さ」だのを追いすぎるのは、ファッションも含めたトータルな「トレンド」の中においては、ちょっと外れかかり始めていると思う。ファッションは今、「個性表現」のためのメディアとしては、手垢が付きすぎているんじゃなかろうか。
ファッションというコップの中の嵐に集中しすぎると、コップの外からはむしろ「かっこ悪い」ことのように見えかねない。私は「個性の奴隷」にはなりたくないと思っているのである。
いずれにしろ、意識して表現しなきゃいけないようなのは、「個性」の世界においてもまだ「はな垂れ小僧」のレベルで、それとはなしに自然ににじみ出るぐらいにならないと、お話にならない。
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コメント
ご紹介いただいて、ありがとうございます
ただ軽いのりで書いただけのものなのでお恥ずかしいのですが
実は今日、さらに軽いのりで「あなたは制服が好きですか?」という駄文を書いてしまいました
究極の定番・没個性である「制服と、「個性」について純粋理論的に学術的に論じようとしたのですが・・・」
制服フェチという人種がいるそうですが、書いているうちに、私自身もいちがいにそのような人達を軽蔑できない深層心理の持ち主であることを発見、反省に努めております (笑)
なお私は、シックスフィーターとまではゆきません
投稿: alex99 | 2009年2月25日 09:08
毎日、拝見しています。
今日のエントリーは、なかなか面白かったです。
>「個性の奴隷」になりたくない・・・
うまい表現ですね。
個性は、その人の内側に具わっているものからにじみ出すものだと思います。
そういう意味で、いくら外見を装っても、出ないものは出ないし、逆に出るものは出るのですね。
出て欲しくない個性であっても・・・。
私は、北欧の人たちの個性に対するスタンスに、とても学ぶべきものが多いと思っています。
投稿: Mikio | 2009年2月25日 09:31
alex さん:
>究極の定番・没個性である「制服と、「個性」について純粋理論的に学術的に論じようとしたのですが・・・」
多分、いろいろな視点からの論考がたくさん出ていますよ。
純粋に 「機能性」 で論じたものと、「隠されたエロス」 の視点で論じたものに二分されると思います。
>なお私は、シックスフィーターとまではゆきません
すると、六尺ぐらいですね。
投稿: tak | 2009年2月25日 11:40
Mikio さん:
>そういう意味で、いくら外見を装っても、出ないものは出ないし、逆に出るものは出るのですね。
>出て欲しくない個性であっても・・・。
ただ、最近は 「ぱっと見、一発主義」 が蔓延しているので、外見を装いたがる人もいますね。
テレビタレントは、その 「ぱっと見 一発主義」 が最も有効な世界で生きてますから、そのための装い方をします。
その装い方をして意識している時しか、映らないわけですから、幻想をふりまきやすいわけです。
しかし、フツーのにいちゃん、ねえちゃんがその真似をしても、フレームで切り取られないので、すぐにバレます。
そのことに気付いていない人が多いので、薄っぺらな風潮にはなってしまいますね。
>私は、北欧の人たちの個性に対するスタンスに、とても学ぶべきものが多いと思っています。
彼らの考え方は、かなりこなれていますよね。ただ、そのまま東洋に当てはまるかどうかは別で、多少のモディファイは必要でしょうけど。
投稿: tak | 2009年2月25日 11:46
又お邪魔します。
12こちらも読みました。考えたこと 想い出したこと 読んだ本、こういうディスカッションが生まれる事は嬉しいですね。正直、私の最初のコメントは自分の経験からくるもの以外のなにものでも無く、帰国してまだ5年弱、最初はこの国(日本)の街の風景と色に始まって騒音に戸惑わされ頭痛を覚えたのです。十年以上前には東京に帰ってくると目が疲れて疲れて外を歩くのが嫌になった位です。最近、これはかなり良くなりましたが。
そういう意味でも都市と国とを比較して行けば、その場所の色と空気が有る訳で(それ以上にテンポが有りますが、これはここでは取り上げないことにしましょう)。そこにファッションは大きな役目というのか(?)を果たしていて、それが個性の表現へと繋がると考えるのです。
都会では汚れたきたないファッションは見れないものですし、田舎町に行けば行く程、そこで許されるファッションが有るし、それは職場というせまい環境ででも存在すると思います。しかし、これが日本では時代について行かないルールに左右されている部分がかなり有ると思われるし、その原点は日本人のユニフォーム(学校の制服)が生んでいる悪い部分での依存からくるとも見えます。
テレビを見ない私ですが、たまに見ててチャンネルを切り替えていて思うのは、あんな格好してテレビに出るようになったのだという印象ですが、それらは正直良い意味ではないです。テレビに出演する人達、特に定期的に出演する人達はどこまでスチリストを持っているのでしょうか?最近はジーンズが許容範囲以上に乱入している場面とかが多すぎると思ったりするのですが。アパレル・メーカーはタレントへのスポンサーはやらなくなったのですか?ね。
私の個性表現は単純です。毎日同じものを着ないこと。それでなくとも色のコーディネイトでの部分的な変化を付けること。それには少なくとも前のひねる前には次の日の服装を考えておくこと、等です。
投稿: jeienne | 2009年2月27日 12:15
jeienne さん:
確かに、日本のファッション市場は、ちょっと特殊ですが、どの国にも特殊さはあるので、それについては、議論が分かれますね。
投稿: tak | 2009年3月 1日 23:17
個性を表現するというよりは,いかにファッションで自己満足できるかという風潮だと思います。(まあ,個性なんたらというのがそもそも自己満足の範疇ですが…)
ユニクロはサイズもカラーバリエーションも豊富なので,欲しいものがあった時にサイズ表記や色で諦める必要がないのが嬉しいです。いくら好きなデザインでも丈が足りなくては間抜けですし,ショッキングピンクのような色だったら視界に入れるのもどぎついですからね^^;
私の場合,「好きなもの,着たいものを着る」という気持ちなのでユニクロは一役買ってくれています。
投稿: 抹茶 | 2009年3月 2日 13:57
抹茶 さん:
ファッションにおける個性の表現が自己満足の範疇であるというのは、言えていると思います。
その自己満足に外からも共感してくれる人が、「個性的ファッション」 と思ってくれるんです。
共感要素がないと、単に 「変わった格好してる」 と思われるだけです。
投稿: tak | 2009年3月 2日 21:40