ラニーニャと与謝野さん
TBS ラジオで気象予報士、森田正光さんの話を聞いていたら、この冬はラニーニャ現象が発生していたのだそうだ。東部太平洋の海水温が下がる現象である。
で、このラニーニャが発生すると、日本は、8割から9割の確率で厳冬になるというデータがあるのだそうだ。
ところが、この冬は暖冬だった。1~2割の確率の方に当たってしまったわけである。どうしてこうなったのかというと、いつものラニーニャの年なら、西部太平洋の海水温が相対的に高くなることによって発達するはずのアリューシャン低気圧が、この冬は発達しなかったからなのだそうだ。
アリューシャン低気圧が発達しないと、日本列島に寒気が呼び込まれないので、暖冬になる。で、さらに、このアリューシャン低気圧が発達しなかった要因には、偏西風の経路がいつもの年とやや違っていたからということもあるのだそうだ。
さらにまた、ラニーニャで海水温が下がる海域が、いつもの年より西にずれて、太平洋の真ん中に近かったこともあるという。やたらといろいろな要因が重なり合って、この冬、日本では記録的な暖冬となったわけだ。
森田さんによると、「この冬が記録的な暖冬だった理由は、いろいろな要因が挙げられる。それでもそれらはすべて、現象なので、さらにその現象の要因は何かということになると、気象学者でもわからない。いろいろありすぎるから」ということなのだそうだ。
まさに、この世は複雑系の世界なのである。これだからこうなると、単純に割り切れるほど生やさしいものではないのだ。その辺は、気象も政治も同じである。大局的にはこうすればいいのにと、大方が認める政策でも、いろいろ複雑な利害関係が絡まり合って、こけつまろびつしながら、なかなか先に進まない。
ただ、それだからこそ、政治家にはリーダーシップが求められる。こけつまろびつに任せているだけでは、先に進まないからだ。
財務・金融・経済をまとめて担当することになった与謝野馨さんだが、先日ラジオに出演していろいろ語るのを聞いて、私はちょっと失望した。
この方、「今は大変な時期だ」「政治や経済は、そんなに単純なものじゃない」「よくよく考えなければならない時期に来ている」「私は閣僚として粛々と任務を遂行するだけ」などと、例の口の端からよだれが流れそうな口調で、当たり前の話をもたもたと繰り返すのみで、要するに意味のあることは何も語らなかったのである。
頭がいいけど人間というものをあまりわかっていない人の陥りやすい罠である。ラジオに出たからには、大衆に向かって語らなければならないのである。しかし、彼は目の前にいる察しのいいキャスターとの、広がりのない茶飲み話に終始しただけだったのだ。
複雑系を認識することは結構だが、政治家がその中に埋没したことしか言わないのは、少なくとも時流には合っていない。
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コメント
全く同感です。
財務省的な言説に慣れていると、しばしば氏の言わんとしていること(あるいは言うのを避けていること)がわかっちゃうんですけど。氏が選挙に弱いと言われるのは(既に通産大臣などを務め、自民党内では出世していた2000年に落選している)故なしではないわけです。それでも一部の「通」の評論家やマスコミは彼を総理候補と持ち上げるんですよね…
投稿: きっしー | 2009年2月26日 09:39
物事を分かりやすく国民の前に提示し、国の進む向きを決める。というのがリーダーに求められている才能の一つだと思います。
残念ながら与謝野さんにはそういう資質に欠けていると思います。いわゆる秀才型の人だと思います。
福田前首相もそうでしたが、やはり官房長官で省庁と官邸を仕切る才能はあると思いますが、総理に向いているとは思えません。
投稿: 雪山男 | 2009年2月26日 15:48
きっしー さん:
>氏が選挙に弱いと言われるのは(既に通産大臣などを務め、自民党内では出世していた2000年に落選している)故なしではないわけです。
与謝野さんが総理をやったら、麻生さんより選挙に弱いでしょうね。
>それでも一部の「通」の評論家やマスコミは彼を総理候補と持ち上げるんですよね…
政治の 「通」 は、それだけで、ずれているという気がします。
投稿: tak | 2009年3月 1日 22:53
雪山男 さん:
>福田前首相もそうでしたが、やはり官房長官で省庁と官邸を仕切る才能はあると思いますが、総理に向いているとは思えません。
内向きの実務者タイプと、外向きの情報発信タイプでは、使う筋肉が全然違いますね。
で、内向きの実務者タイプがリーダーになっても、ちっともアピールしません。
民間企業でも、「あの会社は社長の顔が見えなくなってしまった」なんて言われて、ジリ貧になるところが多い気がします。
投稿: tak | 2009年3月 1日 22:56