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2009年3月 5日

検察も無粋なことをしたものだ

西松建設の違法献金問題に関して、小沢民主党はギリギリのギャンブルに出たようだ。これはものすごくハイリスクの対応である。

私は 2月 18日付の記事で、民主党は少しはリスクマネジメントについて認識が進んでいるかもしれないと書いたが、どうも買いかぶりだったようだ。

昨夜、小沢氏の記者会見の模様をニュースで聞いて、そのあまりの「一点突破」ぶりにかなりの危なっかしさを感じたが、今朝になって案の定、検察サイドからいろいろな情報がリークされているのを聞いて、ますますその感を深くした。

検察側は否定しているが、彼らが非常に政治的な動きをするのは昔から知れたことである。それぐらいは覚悟しておかなければならない。昨年 6月、西松建設の外為法違反容疑が明るみに出た時点で、小沢一郎ともあろうものが、そのぐらい、わからなかったわけがない。

それがわかった時点で、小沢氏は健康問題とか当たり障りのない理由で、代表の座を降りておけばよかったのだ。それができなかったのは、自民党がガタガタなので総選挙をすれば確実に勝てそうだというアグレッシブな雰囲気が、彼のディフェンス感覚を鈍らせたためだろう。

野心が邪魔したのである。昔からこの人、攻めると強いが守りは下手だ。さらに言えば、田中角栄、金丸信と続いた金銭疑惑の系譜を彼もしっかり受け継いでいたわけで、これはもう、「宿業」 なんじゃあるまいかとまで思ってしまう。

まあ、政治家がいろいろなところからいろいろなトンネルを通して献金を受け取っているのは、今回のケースに限らないことだろうが、西松 - 小沢 というラインは、ちょっと目立ちすぎだったのかもしれない。日本という国は、ちょっとだけならお咎めなしだが、調子に乗りすぎると捕まる。スピード違反と同じである。

これで総選挙になっても、有権者としては積極的に投票したいという気になる政党がなくなってしまったわけで、情けないことである。検察も無粋なことをしたものだ。

この「検察も無粋なことをしたものだ」という感覚が日本中で共有され、とくにマスコミがそのへんのことを臭わせたりすると、政権交代の芽は消えずに済むだろうが、どうなるかなあ。

ちなみに私は、積極的には自民党支持でも民主党支持でもなく、いわば「政権交代がないとろくなことにならない」という考えの支持者である。だから、選挙では時々ヒヨる。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

小沢氏が嫌いで民主党には投票できない(かといって麻生総裁率いる自民党も…)と思っていたという人は案外多いのではないかと思います。
そういう人から見れば、小沢氏が辞任し民主党の幹部がより政策にフォーカスした世代に入れ替わるのが一番うれしいということになります。
私自身は、竹下派のDNAもさることながら、氏の近年のあからさまな選挙むけの党派的な政策スタンスに相当嫌悪感を持っていたので、ちょっと面白くなってきたと思っています。
私は、小泉元首相の一番の罪はいわゆる弱肉強食経済の促進などというものではなく、岡田や枝野といった民主党の地味な「選挙向きでない」リーダーをつぶしてしまい、結果として民主党を選挙対策中心の体制(=昔の自民党みたい)にしてしまったことだと考えています。
とはいえ、検察が本件の政治性に関して持たれた疑念に大してしっかりこたえなければならないのは言うまでもありません。手始めとしては、自民党の議員の悪質な違反も本件の一環として摘発すべきでしょう。

投稿: きっしー | 2009年3月 5日 12:35

>この 「検察も無粋なことをしたものだ」 という感覚が日本中で共有され、とくにマスコミがそのへんのことを臭わせたりすると、政権交代の芽は消えずに済むだろうが、どうなるかなあ。

自分の周囲は、概ねそんな受け止め方のようですし、マスコミも今のところ及び腰のようですが、これで追加の事案が発生すれば、今度こそアウトでしょうね。
Takさんのおっしゃったように、リスクマネジメントの初動対応をまずくしたような気がします。(あの記者会見にしても、謝罪の一言もないですし。)

しかし、あのオバマ大統領にすら金に絡むスキャンダルの噂があるぐらいですので、政治とお金は切っても切れない所があって、そこら辺が清濁併せ飲むという度量なんでしょうか?

投稿: 雪山男 | 2009年3月 5日 12:39

 民主党はさっさと党首を交代させて、疑惑を晴らすことに積極的に協力する姿勢を見せて、ついでに今まで検察が知っておきながら暴かなかった事も含め、不当な政治献金の一掃に注力してもいいかもしれないなぁと思います。

 小沢さんが疑惑以上の事になれば、それも呑みつつ、”正義”を盾にして検察の横暴やあるいは政治と検察官僚の癒着について徹底的に闘えば、国民からの信任も得られようというものじゃないかと思うのですがね。


 私もなんらかの形で政権交代は必要だと考えます。

投稿: きんめ | 2009年3月 5日 13:35

私は日本の現在の政治情勢に疎いですが、政党法や選挙法の改正で金権政治の要素は大分改善されたときいています。反面ロビイストは必要悪なもので、これは政治への関与の一つの大きな機能でしょう。ただ贈収賄の発生するような形は禁止されなければいけません。

さて今回の政変は、予想されていた麻生クーデターと一つと思われるのですが、解散権を行使するための選挙への効果を最も注視しているのは最高権力者にその者に他なりません。

たとえ小沢の金権体質やそれに近い政治家も少なくはないとして、裁判員導入への考え方に相当するような行政や司直の手よりも自らの手を行使する有権者の民意と意志が問われています。

これに関しては小沢の今回の「民主主義への声明」は当を得たものでしょう。そこでご指摘のようにジャーナリズムの質が問われる事になると思われます。重要なのは米国の新聞が大統領選挙で採る肩入れ姿勢よりも、まさに「リスク」を相対化して行く作業ではないかと思います。

繰り返しますが、これは一種の政治クーデターであって、マネージメントでダメージを押さえることよりも、こうした権力構造をあからさまにした上で、「民意に問う」姿勢が問われます。守っていては政治は出来ません。一瞬先は予測困難なのも政治です。そもそも政治にセーフティな状態など存在しません。

ただし、そうした権力を持つ為政者が代わるだけで、そうした権力構造の改善が叶うのか?しかしそれは立法府を、民意によって有権者が変える方法以外にはないです。謂わば、為政者次第で、憲法改正もなんでもありなのですから。

世論の動きに注目したいと思います。エキサイティングな展開となってきたようです。今までメディアが好んで使ってきた「政治が流動的」、「緊迫感が増す」などの表現が如何に表面的であったかが良く分かるかと思います。

投稿: pfaelzerwein | 2009年3月 5日 15:07

きっしー さん:

>小沢氏が嫌いで民主党には投票できない(かといって麻生総裁率いる自民党も…)と思っていたという人は案外多いのではないかと思います。

確かに、好き嫌いが分かれるタイプですね。
「好き」 という方が少数でしょう。

>そういう人から見れば、小沢氏が辞任し民主党の幹部がより政策にフォーカスした世代に入れ替わるのが一番うれしいということになります。

そうならないと、民主党の存在意義は、単に 「小沢の怨念はらし機関」 でしかなくなりますね。

>とはいえ、検察が本件の政治性に関して持たれた疑念に大してしっかりこたえなければならないのは言うまでもありません。手始めとしては、自民党の議員の悪質な違反も本件の一環として摘発すべきでしょう。

そうなって、初めて 「望ましいスタートライン」 に立てるのかもしれませんね。

投稿: tak | 2009年3月 5日 18:05

きんめ さん:

>民主党はさっさと党首を交代させて、疑惑を晴らすことに積極的に協力する姿勢を見せて、ついでに今まで検察が知っておきながら暴かなかった事も含め、不当な政治献金の一掃に注力してもいいかもしれないなぁと思います。

ここまでゴチャゴチャになってしまったんだから、もう、正攻法でいくしかないですよね。

余計なことをなんだかんだ言われると、もううざったくてたまりません。
せっかくの大きな政局転換点で、投票率がシャレにならないほど落っこちるのは避けたい ^^;)

投稿: tak | 2009年3月 5日 18:08

雪山男 さん:

.>この 「検察も無粋なことをしたものだ」 という感覚が日本中で共有され、とくにマスコミがそのへんのことを臭わせたりすると、政権交代の芽は消えずに済むだろうが、どうなるかなあ。

>自分の周囲は、概ねそんな受け止め方のようですし、マスコミも今のところ及び腰のようですが、これで追加の事案が発生すれば、今度こそアウトでしょうね。

あまり上等でない綱渡りの政局ですね。
もう少し、すっきり行けないものかなあ ^^;)

投稿: tak | 2009年3月 5日 18:10

pfaelzerwein さん:

>さて今回の政変は、予想されていた麻生クーデターと一つと思われるのですが、解散権を行使するための選挙への効果を最も注視しているのは最高権力者にその者に他なりません。

「麻生クーデター」 というのが、私にはちょっとわかりませんが、どっかで噛んでいないわけはないとは思います。

>たとえ小沢の金権体質やそれに近い政治家も少なくはないとして、裁判員導入への考え方に相当するような行政や司直の手よりも自らの手を行使する有権者の民意と意志が問われています。

有権者の民意と意志ということが言われ続けて久しい割に、何にも変わらない、あるいは変えてこなかった、さらにまた、変わりにくいシステムに邪魔されている …… ので、日本の有権者は世界で一番しらけてるんじゃないかと思うのです。

今回のケースで、エキサイティングになったと捉えるより、さらにしらけてしまう人が多いんじゃないかと、私は危惧します。

投稿: tak | 2009年3月 5日 18:19

「麻生クーデター」という表現は適当でなかったです。

ネットなどを見ていると「検察庁特捜は前総理大臣でも逮捕出来た」からとか、政府要人が「三権分立」とか意味不明な発言をしているようですが、所詮首相を長に頂く行政機関の権力には他なりませんね。

田中逮捕にしても三木首相にしてこそなし得たので、政治的であることには間違いない訳で、それを恰も自然の秩序で機能しているような機構とみるのは誤まりでしょう。

その点からどのような善であれ悪である政治的意図があるのは当然で、そうした権力を敗戦濃厚である最高権力者が行使するのは政治家として当然のことでしょう。

寧ろ、自然には定常的に存在しない秩序を信じる態度こそが、「近代の無知」もしくは「近代社会信仰」と呼ばれるものではないでしょうか。

投稿: pfaelzerwein | 2009年3月 7日 17:18

pfaelzerwein さん:

>田中逮捕にしても三木首相にしてこそなし得たので、政治的であることには間違いない訳で、それを恰も自然の秩序で機能しているような機構とみるのは誤まりでしょう。

ですよねぇ。

投稿: tak | 2009年3月 7日 20:31

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