ミサイルで、「右往左往」 なんてした?
北朝鮮の「ミサイル」発射関連のニュースによると、日本国内は誤報やら何やらで大混乱、「右往左往」したんだそうだ。
へぇ、そうなのかなあ。私なんか右往左往した覚えは全然ないし、日曜で花見なんかしてた多くの人も、ミサイルが海に落っこちてからしばらくして知ったんじゃないかなあ。
私は花見をしていたわけじゃないが、発射された当日は日曜だというのに、朝から仕事でバタバタしていて、帰宅しようとして車に乗り、カーラジオのニュースで初めて知った。そして「へぇ、そうなんだ」と思っただけである。
ニュースでは日本国中が「右往左往」したことになっているが、本当はそうじゃない。「右往左往」の多くは、「前もって右往左往すべく待機していた人たちが、一応右往左往してみせた」というだけのことじゃあるまいか。
彼らは、何もしなかったら何か言われるに決まっているから、一応何かしてみせたのである。その集積が、「日本中が右往左往した」というニュースになったのである。
元々、北朝鮮のミサイル問題では、マスコミに登場する「有識者」とか「ニュース解説者」とかは、「騒げば騒ぐほど、北朝鮮の思うつぼ」なんて言って、「冷静にやり過ごせばいい」と強調していた。
「冷静にやり過ごせばいい」というのは、そりゃ初めからわかりきったことだが、「騒げば騒ぐほど、北朝鮮の思うつぼ」というのは、今イチわからなかった。日本が騒ぐのをみて、偉大なる首領様が痛く満足されるのだろうか。それで何か得があるのだろうか。
彼らが「日本が騒げば北朝鮮の思うつぼ」と言って水をかけたのは、日本が防衛のためのミサイル迎撃という名目で軍事力増強の方向に舵取りされるのがいやだからである。「迎撃なんかしないでよね」とは、福島瑞穂さんじゃあるまいし言いにくいから、「北朝鮮の思うつぼ」なんていう、わかったようなわからないようなことを言ったのである。
麻生内閣は、このミサイル問題で内閣支持率低下に歯止めをかけようとした。なにしろ仮想敵国があれば国内はまとまりやすい。外敵に対してきちんとした対応を取ったということにして、自らの評価を上げたかったから、必要以上にご大層にミサイル発射を待ち受けた。
で、その必要以上にご大層な態勢が、あまりにも身に付いていなかったので、誤報を出したり、情報伝達が混乱したり、要するにこの国の危機管理体制が決して自慢できるものじゃないということが改めて露呈し、やぶ蛇になってしまったのである。
でもまあ、考えてみれば、誤報が出たというのは、発射されたのに気付かないで、ぼんやりしていたなんていうよりは、ずっとマシな話だし、情報伝達の混乱は、今の体制が役に立たないとわかっただけ、一定の意味があった。
誤報が出た時に、秋田の小中学校では始業式を終えた生徒を体育館に避難させるなんていう、笑ってしまうほど平和な対応をしたそうだ。しかし、その「平和な対応」も、「右往左往すべく待機していた方々」の予定調和的行動の一環とみれば、決して「大混乱」というわけではなかったということがわかる。
前述の通り、何もしなかったら何か言われるから、学校の先生としては、一応何かしてアリバイを作って見せたというだけのことだ。ここが宮仕えのつらいところなのだ。だから、お役所仕事はあまり頼りにしない方がいい。
結局のところ、一番調子に乗って騒いでいたのは政府で、またマスコミも、一方では「冷静に」なんて言いながら、実は「右往左往すべく待機していた人々」の片棒を担いでいたことは間違いない。
フツーの人々は、お花見していたか、お花見したいなあと思っていたかのどちらかみたいなもので、ミサイルで右往左往したなんて人を私は知らない。
というわけで、政府も民主党も「厳重な抗議と国連による非難決議要求」なんて浮かれているが、実はそんなことをして北朝鮮がまたすねてしまって、六カ国協議に出てこなくなったり、そんなこんなで日本はずしになったりしたらそれもまた困るので、水面下では適当な落としどころを探ったりしている。
要するに、必要以上に騒いだ人たちも、「冷静に」なんて言ってた人たちも、それぞれ自分の都合で動いていただけで、ちっともクールじゃなかったわけだ。クールなのは、花見で飲んだくれていた人たちだったという、なかなかパラドックスに満ちた週末だったのである。
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コメント
TAKさんのおっしゃっているとおり、本当に騒いでいる人は一握りですね。
TVで発射を伝えるニュースの横で、解説員が、一般住民の皆さんは普段通りに生活することが一番、みたいな解説をしていていて、思わずつっこみを入れたくなりました。
ただ、あれだけ騒いでいるTVの中で、市ヶ谷のPAC3の背後に美しく桜が咲き誇っているのを見て、「ああ騒ぎとは別に、ちゃんと春が来ているんだなぁ」と妙に感慨深く思いTVを見ていました。
兵器と咲き誇る桜、近代アートのような取り合わせですね。
投稿: 雪山男 | 2009年4月 8日 09:13
雪山男さん:
>TVで発射を伝えるニュースの横で、解説員が、一般住民の皆さんは普段通りに生活することが一番、みたいな解説をしていていて、思わずつっこみを入れたくなりました。
「普段通りの生活」 以外に、何ができるというのでしょうかね? ^^;)
昔、東海村でいわゆる 「臨界事故」 があった時は、2ch なんかで、「なにをぐずぐずしているんだ、死にたくなかったら早く逃げろ」 みたいな書き込みがずいぶんありました。
逃げろったって、どこに逃げろというのか ^^;)
>ただ、あれだけ騒いでいるTVの中で、市ヶ谷のPAC3の背後に美しく桜が咲き誇っているのを見て、「ああ騒ぎとは別に、ちゃんと春が来ているんだなぁ」と妙に感慨深く思いTVを見ていました。
敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花
本居宣長が今の世にいたら、どう感じたでしょうかね。
投稿: tak | 2009年4月 8日 11:18
4/4の結局は発射の無かった日、私は家族と映画館にいました。もしも、出来ることがあるとすれば1日中地下街にでも潜ってって事になるのかもしれませんが、それを8日まで続ける訳にもいきませんし。
実際に日曜の報道でも、テレビでニュースが流れたのは私が見た物について言えば発射後5分ぐらい経過した時間帯でしたから、標的が日本なら、もう着弾してる。
そういう事であるとは思っても、休みであったこともあって、家族と共に過ごしたりした私は”まさか”を懸念してたりしました(笑)
”まさか”で自分の近くにミサイルが落ちたとき、家族の側にいたいと思ったのでした。
投稿: きんめ | 2009年4月 8日 11:56
きんめ さん:
>”まさか”で自分の近くにミサイルが落ちたとき、家族の側にいたいと思ったのでした。
家族サービスの格好の理由ができて、よかったですね。(^o^)
投稿: tak | 2009年4月 8日 14:17
あのときは NHK 教育でテレビ将棋を見ていました。あとで知ったのですが、この時間に通常の番組をやっていたのは NHK 教育とテレビ東京だけだったそうですね。
将棋放送中でもさすがに画面の一番上にテロップが出ましたが、「ああ、そうか」と思っただけで、そのまま最後まで将棋を見ていました。少数派かもしれませんが。
投稿: たんご屋 | 2009年4月 9日 08:51
たんご屋 さん:
>この時間に通常の番組をやっていたのは NHK 教育とテレビ東京だけだったそうですね。
これは「見識」に思えちゃいますね。
>将棋放送中でもさすがに画面の一番上にテロップが出ましたが、「ああ、そうか」と思っただけで、そのまま最後まで将棋を見ていました。
これも、見識だと思います。
投稿: tak | 2009年4月 9日 13:03