麻生さんの短歌
新宿御苑の「桜を見る会」で、麻生首相が自作の短歌を披露したというのが、一部で話題になっている。
「ふるさとに はや桜満(み)つ ゆゑ問へば 冬の寒さに 耐へてこそあれ」という歌で、「こそ」の後を已然形の「あれ」で結ぶという係り結びの原則はちゃんと守られている。
麻生さん、漢字の読み方には疎いかも知れないが、いにしえの文法はきちんと理解していらっしゃるようだ。もっとも、無意識に詠んだのが結果オーライという形になったのではないという証拠はないが。
MSN 産経ニュースには、"地元・福岡県の桜が全国で最も早く開花したことを指摘した首相が不況脱出に向けた決意を示したといえ、首相は 「冬の時代にずっと仕込んでいた政策の花が開くのはこれからだ。春と同時に開花していくように、今後も頑張りたい」と語った" とある (参照)。
ところが残念ながら、冬の間に仕込んだ政策が「春と同時に開花」しているようにはちょっと思えない。気象庁の異常天候早期警戒情報によると、4月 26日から 5月 5日にかけて、「平均気温がかなり低くなる確率が 30%以上」という話だ。明日から強い寒気が南下するので、全国的に気温が低くなるんだそうだ。あいにくなことに。
今日はかなり暖かいものの、暖かい春が安定するのは連休明けぐらいからのようで、「もう少し我慢が必要」というメッセージみたいに思えてしまう。
ところで麻生さんの歌だが、桜の花が既に満ちていることの「ゆゑ問へば」とあるのだから、その理由を述べる結句は「耐へてこそあれ」ではなく「耐へてこそなれ」と結ぶのが自然だろう。
こんな場合、もし私だったら
ふるさとの凍ゆる冬を耐へてこそはや咲き満つる桜なりけれ
なんて、当たり障りなくステロタイプに綺麗めな歌にして、煙に巻いてしまうところかなあと思ったりする。まったくおもしろみはないけれど。
ちなみに、当日の夕方、たまたま見たテレビのニュースショー(確か日テレだったと思う)でこの桜を見る会の模様が報じられていて、妙に軽い調子のナレーターが、「麻生さん、ここで一句!」と言ったと思ったら、続いて画面に出てきたのは「一句」ではなく、短歌が「一首」だった。これは見てる方が恥ずかしい。
でもこれは、自分で詠んだくせに下の句の前で詰まっちゃった麻生さんが悪いんだよね(参照)。そのせいで、つい俳句だと思っちゃったんだよね。きっとそうだよね。(皮肉です。念のため)
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コメント
takさんのおっしゃるとおり、麻生さんの短歌を見ると、それなりにいろいろな短歌を見て詠んでいらっしゃるなって感じはしますね。
(自分としては、与謝野大臣の短歌も見てみたい気がします。(笑))
まあ「桜を見る会」なのでしょうがないのですが、寒さに耐え咲く花というと、自分なんかは梅の方を想定しちゃうんですがね。
桜はその後、十分暖かくなってから咲く花のようなイメージがあります。
それにしても「一句」とは。。。
TVも麻生さんを批判する資格無しですね。
投稿: 雪山男 | 2009年4月23日 12:51
雪山男 さん:
>takさんのおっしゃるとおり、麻生さんの短歌を見ると、それなりにいろいろな短歌を見て詠んでいらっしゃるなって感じはしますね。
はっきり言って、不器用で下手ですけどね ^^;)
>(自分としては、与謝野大臣の短歌も見てみたい気がします。(笑))
私も、ぜひ (^o^)
投稿: tak | 2009年4月23日 14:24