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2009年4月 6日

核拡散を巡る冒険

オバマ大統領が米国大統領としてはおそらく初めて、核廃絶に向けた積極的な姿勢を示した。これは画期的なことで、高く評価されていいと、私は思っている。

その現実化はなかなか難しいのは、誰でも十分わかっていることだが、姿勢だけでも示しておくというのは、やはり意味がある。

単なる理想論だとか、実行不可能だとか、批判はいくらでもあるだろうが、あの核大国である米国の大統領がそうした姿勢を明確に示したということに、画期的な意味がある。無意味であるはずがない。

ただ、こうしてオバマ大統領の姿勢を積極的に支持する私にしても、やはり核廃絶の実現はほとんど不可能だろうと思っているというところに、悲しさがある。そして私が個人的に秘かに悲しんでいる間にも、世界的な核武装への動きは拡大の方向に確実に向かっている。

それだけに、秘かに悲しんでいるだけでは役に立たないので、まったく微力ながらも、こうしてブログで意見表明をするわけだ。何もしないよりは少しはいいだろうから。

北朝鮮などの途上国の核武装化は確実に進んでいる。核爆弾を作る技術なんていうのは、今ではそれほど難しくないことらしいから、あとはコストの問題だ。

そしてそのコストもどんどん安くなるだろうから、私の一昨日の記事にきっしーさんがコメントしてくれたように、「長い目で見てテクノロジーの発達を考えると、北朝鮮を始めとする小国やゲリラ的なグループなどが核武装するは時間の問題」 というのは、残念ながら確かなことだろうと思う。

跳ね返り的な活動をする小国やゲリラ・グループが核武装してしまったら、そしてその核を実際に使うのが確実な状況になってしまったら、あるいは実際に使われてしまったら、世界のマジョリティは、武力によってそれを阻止、または制裁するしか、現実的な道はないだろう。

その抑止あるいは制裁のパワーの決定的な背景となるのは、今のところ、やはり核武装による軍事力でしかあり得ないというのが、またまた悲しいところである。この悲しみが世界中で共有されていないということは、さらにまた悲しい。

この悲しみを世界が共有し、核廃絶の論議が単なる理想論でなく本当に現実的なものになるには、世界がある程度 「満たされた」 状態にならなければならないと思う。富が極端に偏在しているうちは、平和は訪れない。

問題は、富がおかしな方向に流れないような形で経済援助を行い、富の偏在を是正することすらも、またまたものすごく難しいということだ。世界は複雑系だから、いいと思ってやったことの波及効果は、マイナス方向にだってかなり働く。

歴史は馬鹿馬鹿しいほど様々な要素がとぐろをまいて、こけつまろびつ、滑稽に見えるほどの悲しい動きをしながら進展するものである。だから、人間は辛抱強くなければならない。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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