ちょっとがっかりだったよ、太田総理
なんだよ、肝心の部分が編集カットされてて、影も形もないじゃないか。昨夜帰宅して録画しておいてもらった日テレ「太田総理」 を見たのだが、ちょっとがっかりだった。(参照)
社民党の保坂氏の発言が一言もフィーチャーされていない。結局、選挙カーの本当のナンセンスさが十分には伝わらなかったなあ。
一昨日の記事「選挙って本当に馬鹿馬鹿しい」で紹介したように、保坂氏はご自身のブログで、以下のように書かれている。(参照)
公選法が求めているのは 「選挙カーの走行中に許されているのは連呼だけ」 というシュールな規定だったのだ。
これは私が "選挙カーの「連呼」は「迷信」から生じているらしい" という記事で、7年も前からその馬鹿馬鹿しさを指摘し続けてきたことである。「選挙カーの連呼はうるさいだけ」 とよく言われるが、そもそも選挙カーの走行中は連呼しかしちゃいけないと、公選法で定められているのだ。まったく馬鹿馬鹿しいことに。
ところが、その馬鹿馬鹿しさを、当の政治家自身が知らなかったらしい。保坂氏はインターネット上で私の記事を見つけて、それを初めて知ったというのだ。何度も選挙運動を経験されているのに。そして、知らなかったのは保坂氏だけではなく、あの番組に出演した政治家全員が知らなかったらしいのだ。
保坂氏は件のブログで次のように証言してくれている。
私が知らなかっただけではなく、番組に出演した政治家全員が 「ホントなのそれ?」 と首を傾げた。
つまり、山本一太氏 (51歳 自由民主党) も、大村秀章氏 (49歳 自由民主党) も、原口一博氏 (49歳 民主党) も、福島豊氏 (51歳 公明党) も、うえまつ恵美子氏 (41歳 民主党) も、下地幹郎氏 (47歳 国民新党) も、選挙カー走行中は、候補者名の連呼しか許されていないということを知らなかったというのだ。
ああ、その場面、見たかったなあ。これ、あんまり問題だからカットされちゃったんだろうなあ。だってその場面を放映したら、政治家が公職選挙法を知らずに選挙運動をしていたというのが、日本中にバレバレになっちゃう。保坂氏のブログのおかげで、一部では既にバレバレなんだけど。
保坂氏は今回の「太田総理」で、選挙カーと選挙ポスターの禁止に賛成されていた。よくぞ、そのような潔い態度表明をしてくださったものである。私ははっきり言って社民党はちっとも支持していないんだけれど、この問題に限って言えば保坂氏と共闘してもいいと、強烈に思ったぐらいである。
いずれにしても、番組の最後では、「選挙カーや選挙ポスターを禁止します」 という太田総理の提案に対して、視聴者からの投票の 88%が「賛成」にまわっていた。これをみてちょっと一安心というか、「当然だよなあ」 という気がしたのである。
選挙カー走行中には連呼しかしちゃいけないなんていう規定があるという事実を、 番組がもっときちんとわかりやすく明らかにしてくれていたら、90%以上が「賛成」に回っていたんじゃないかと思う。
ただ、私の本音は、別に選挙カーを禁止しろというわけではない。そんなことをしたら、ただでさえ下らない制約だらけの公選法にさらに輪をかけることになる。本来は選挙キャンペーンの自由度をもっと上げて (家庭訪問などもできるようにして)、その上で、「これだけはしちゃいけない」 という禁止事項を明確にするという構造に変えるべきだと思っている。
私はこれまえで何度も何度も繰り返し書いているのだが、公職選挙法というのは、第141条の3 の、「選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない」 という条文を読むだけで、いかにナンセンスなものかわかるのである。
ちなみに、一目見ただけで「何じゃ、こりゃあ!」と言いたくなるこの条文の馬鹿馬鹿しさを、日本で最初にインターネット上でやり玉にあげたのは、多分、私だからね。この条文を知っていたのに長年にわたって疑問を抱かなかった選挙関係者は、一体どういうセンスをしてるんだろう。
そりゃ、「選挙カー」 というのは正式な法律用語じゃないらしいから、法律的な文言解釈で言えばこう書かざるを得ないんだろうけど、ということは、この法律の基本コンセプト自体がそもそも非常識なんだと割り切ればいいだけのことである。日本人が半世紀以上もこんな法律に沿って選挙をしてきたというのが、私しゃ、恥ずかしい。
というわけで、今回の番組は公職選挙法をもっとまともなものに変えるための、そして選挙キャンペーンにウェブを使うという当たり前のことを解禁して、もっと風通しのいいものにするための、ちょっとしたきっかけぐらいにはなったかもしれない。いや、どうかなあ。本当になってくれたんだったらいいんだけど。
こうなったらいっそ、今度の総選挙が 8月になるのか、9月になるのか知らないが、走行中に名前の連呼以外のことを少しでも口走った候補者の選挙カーの証拠ビデオをみんなで録りまくって警察に提出するという、一大国民運動を展開するというのはどうだろう。
そうすれば多分、候補者のほとんど全員が選挙違反になってしまう。そして、それがこの 「連呼しかしちゃいけない」 なんていう馬鹿馬鹿しい法律を変える一番の早道じゃないかと、半分は本気で思ってしまったりする。
とりあえず、こんな馬鹿馬鹿しい選挙から抜け出したいと思う方は、「選挙に Web を使わせろ」という私のサブサイトを、ちょっとだけご覧いただけたら幸いだ。
当ブログの、この問題の関連記事一覧 (だんだん核心に迫っているかも)
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コメント
政治にあまり興味ない家族にもこの話の経緯を伝えてみんなでテレビの前に待ち構えて観たんですが、肩透かし喰らっちゃいましたね。
でも、逆にこれがテレビ番組であり、爆笑問題もそんな程度のモンか〜ということが知れた(太田が編集したわけではないにせよ)という点では、保坂事務所には感謝です。明らかにtakさんの話以上に面白い話というのは一秒たりともありませんでしたモンね。お笑い番組として見たとしてもレベル低いな〜と。
ちなみに自分もその条文知らなかった一人ではあるんですが、仮に番組内で政治家の無知が晒されてもそんなに腹立たなかった気がします。むしろみんながマジ?って感じで顔見合わせてくれた方が無知の現場の共有とでも言いますか、かえって出演者たちに共感持てた気がします。今回の場合、ほとんど映されない保坂さんに共感というか、同情するばかりでしたけどw
投稿: traceraser | 2009年5月30日 02:18
traceraser さん:
>肩透かし喰らっちゃいましたね。
>でも、逆にこれがテレビ番組であり、爆笑問題もそんな程度のモンか〜ということが知れた(太田が編集したわけではないにせよ)という点では、保坂事務所には感謝です。
まさに肩透かし。
テレビなんてものに、少しは期待した私が馬鹿だった ^^;)
でも、本当に保坂さんのブログは、一石投じましたね。
(「ようやく政治家がここに気付いたか」 って感じですけど)
>むしろみんながマジ?って感じで顔見合わせてくれた方が無知の現場の共有とでも言いますか、かえって出演者たちに共感持てた気がします。
その効果、大きかっただろうになあ。残念 (^o^)
投稿: tak | 2009年5月30日 07:44
なあんか、takさんのブログが、番組の宣伝に使われただけのような気がして、悔しい限りです。
「選挙に出ている人が誰であるか、知らない人のためにも、選挙カーとポスターが必要だ。」
という意見が、現職国会議員から出ておりました。選挙に金がかかることは仕方がないというスタンスに、正直ムカッときました。
投稿: 乙痴庵 | 2009年6月 1日 12:29
乙痴庵 さん:
>なあんか、takさんのブログが、番組の宣伝に使われただけのような気がして、悔しい限りです。
まあ、こっちは勝手に書いただけですけどね。
> 「選挙に出ている人が誰であるか、知らない人のためにも、選挙カーとポスターが必要だ。」
言ってることが、当ブログの "「連呼」 って、やっぱり迷信だと思う" という記事に ho さんという方から付けて頂いたコメントに、あまりにもそっくりなので、笑ってしまいました。
選挙関係者は、連呼についていろいろ難癖付けられたら、こう答えるように言われてるんじゃないかなんてことまで思ってしまいました ^^;)
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2007/04/post_a684.html
ちなみに、こうした見解について、私はこうも書いています。
「やっぱり変だよ、公職選挙法」
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2007/08/post_0e9c.html
投稿: tak | 2009年6月 1日 15:01