日本のマスクスタイルが世界に広まる?
私の中では非常に個人的に「トンプルエンザ」という略称になっている(参照)例の病気が、非常に政治的な配慮で「新型インフルエンザ」と呼ばれるようになったのだそうだ。
しかし、これより新しいインフルエンザが出現したら、どうするのだろう。結局「H1N1 型インフルエンザ」に落ち着くんだろうなあ。
この「H1N1」の流行で、にわかに注目を集めているのが、「マスク」である。ただ英語で "mask" と言ってしまうと 「仮面」 というイメージが強いので、日本人が普通に言うところの「マスク」は、"surgical mask"(医療用マスク)と言わないとよく通じなかったりする。
で、朝日新聞じゃないけれど「言葉のチカラ」とはおそろしいもので、"surgical mask" と言い習わしてしまうと、それは本当に「医療用」というイメージが染みついてしまい、普通の人が普通に着用するものじゃないということになってしまうのだ。
MSN産経ニュースに "【新型インフル】「マスクは日本人だけ」 中部空港に帰国の観光客" という記事を見つけて、ちょっと笑ってしまった。(以下引用)
新型インフルエンザ感染確認国からの帰国客らにはマスク姿が目立ったが、「現地では警戒心が思ったより薄く、マスクをしていたのは日本人だけだった」と日本との "温度差" を指摘する声が多かった。
私としては「現地では警戒心が薄い」というわけでは決してないのだと思う。ただ、マスクをする習慣がないというだけのことなのだろう。だから、マスクを着けて街を歩く日本人の姿が、ちょっとだけ奇異に映ったのかもしれない。
昔読んだなだいなだ氏のエッセイに、このカルチャー・ギャップについて触れたものがあった。彼の夫人はフランス人で、日本の大学で講義をするために教室に入ったら、折しもインフルエンザ流行中のことだったので、多くの学生がマスクを着けていた。それを見た夫人は、怒ってすぐに教室から出てきてしまったという。
なだいなだ氏の夫人は、インフルエンザ流行中だからといって普通の人間が医療用マスクを着ける習慣のないフランスから来日したばかりだったのである。だから、多くの学生がマスクをしているのをみて、彼らが「あなたとは話をしたくない」と、理不尽にもコミュニケーション拒否の姿勢を露わにしているのだと誤解したのだった。
とまあ、ことほど左様に、普通の人が普通に医療用マスクを着けるのは、世界では普通のことではないみたいなのである。
ところが、今回の H1N1 の流行で、日本特有のマスクスタイルが、世界にも広まってしまいそうだと指摘した記事が見つかった。"Eight Surgical Masks to Survive Swine Flu in Style" (超訳 = 豚インフルエンザを切り抜ける 8つの医療用マスクがカッコイイ) というものだ。(以下、超訳にて引用)
突然の豚インフルエンザの流行で、メキシコシティから送られてくる映像は、マスクの着用が長い伝統となっている日本の東京などの都市を思わせるものだった。
そして、この記事を書いたスティーブ・リーベンスタイン記者は、日本から発信されたと見られる素敵な 8種類のマスクを紹介している。この 8種類のマスクがなかなか見ものなのだ。マスクの画像は元記事で見て頂くとして、日本語の説明としては、以下のようなことになる。
- とっても魅力的なアニマル・マスク
- 星のプリントのマスク
- 吉田依子デザインのアート・マスク
- 舞妓はんマスク
- 毎日がハロウィーン・マスク
- ゴスロリ・マスク
- メンタル・デンタル・マスク
- USBで風を送って暑苦しさを和らげるけど、決してクールには見えないマスク
そして、このファッション・マスクの源流は、あのマイケル・ジャクソンだとしているところが、「やっぱりね」と言いたくなってしまうところである。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- SNS が「台風 10号が消えた」で盛り上がったらしい(2024.08.31)
- 「お好み焼き」がパリでも人気というのだが(2024.08.03)
- 興奮して叫びながら水に飛び込むと、下手したら死ぬ(2024.07.20)
- 電動スーツケースって、ダッサァ!(2024.06.29)
- iPhone でのやり取りと Gigazine の翻訳にはご注意(2024.06.16)
コメント
私はtak-shonai さんの皮相的なスタンスに、珍しく (笑) ちょっとムカッとしました
確かにマスクをすると言う風潮は日本以外では奇矯でしょうが、日本人は間違ったことをしていない、していなかった・・・という確信があります
ただ、昔のスペイン風邪の流行したときには、日本では黒いマスクが流行りました
高価なものだったそうです
一般庶民がたやすく買えないほど
例えば、最近まで、フランスの地下鉄で在住日本人が風邪気味でマスクをしていたら、フランス人の乗客が強烈な嫌悪感を示していたそうです
マスクを日本人の奇妙な風習と断ずるのは勝手ですが、医療的には極めて適切なことで
アホな欧米人もやっとわかったか
と、勝手なことを言わせていただきました
投稿: alex99 | 2009年5月 7日 05:30
alex さん:
>私はtak-shonai さんの皮相的なスタンスに、珍しく (笑) ちょっとムカッとしました
ムカッとさせちゃってすみません。
ただ、私はこの問題については、欧米では "surgical mask" という言葉 (多分、欧米語系では似たような言い回しなのだと思います) に縛られて、「普通じゃない」 という印象があるんだろうという、そのポイントから出発していて、それの是非とか善悪とかまでには踏み込んでいません。
>マスクを日本人の奇妙な風習と断ずるのは勝手ですが、医療的には極めて適切なことで
>アホな欧米人もやっとわかったか
それはまさにその通りで、そのスタンスには賛成です。
ただ私は、冬の寒い間は OK なんですが、春から先にマスクをすると、暑苦しくて耐えきれず、個人的には、正直なところ、勘弁してもらいたいと思っています。
そうした我が儘が通らないくらいにパンデミックになってしまったら、我慢して着用しますが。
投稿: tak | 2009年5月 7日 06:56
あっという間にシンフルエンザになっちゃいましたね(笑)
先日知ったのですが、普通の風邪はほとんどが接触感染なんだそうです。
だからといってマスクが無意味というわけではなく、鼻や喉の粘膜を保護するためにしたほうがいいのだとか。
金粉で皮膚呼吸できなくなるというのがウソだと知ったとき以来の衝撃でした…。
投稿: ぐすたふ | 2009年5月 7日 18:57
ぐすたふ さん:
>あっという間にシンフルエンザになっちゃいましたね(笑)
座布団 三枚 (^o^)
>先日知ったのですが、普通の風邪はほとんどが接触感染なんだそうです。
飛沫感染が多いとは言われてますが、要するに、飛沫に接触することによるのでしょうかね。
だから、手洗い励行ということになるのかなあ。
投稿: tak | 2009年5月 7日 19:54
合唱の演奏旅行で冬にヨーロッパに行った時、現地経験の長い方から
「乾燥しているからマスクで喉を保護したいだろうけど、街中など、人のたくさんいる所ではマスクはしないように」
と言われました。
あちらでは、マスクをしていると「危険な伝染病に罹っている人」と思われるんだそうです。
予防でマスクするという意識がないんでしょうね。
投稿: karin | 2009年5月 7日 20:47
karin さん:
>あちらでは、マスクをしていると「危険な伝染病に罹っている人」と思われるんだそうです。
>予防でマスクするという意識がないんでしょうね。
確かに、「ちょっと変な人」 とか、「アブナイ人」 とかいう感じで見られかねないみたいです。
今回の騒ぎで、マスクが市民権を得るかどうか、注目したいと思います。
投稿: tak | 2009年5月 7日 23:44
街なかでマスクをする習慣は日本発、という記事そのものに違和感を覚えました。
テレビのニュース映像などで、中国や東南アジアの人がしているのをよく見かけるような印象がありますが、どうなのですかね。
もっとも、感染症対策というより粉塵対策なのでしょうが。
投稿: HIRO | 2009年5月 9日 00:48
HIRO さん:
>街なかでマスクをする習慣は日本発、という記事そのものに違和感を覚えました。
>テレビのニュース映像などで、中国や東南アジアの人がしているのをよく見かけるような印象がありますが、どうなのですかね。
>もっとも、感染症対策というより粉塵対策なのでしょうが。
中国、東南アジアでは、欧米ほどにはマスクに対する抵抗感が強くないかもしれませんね。
女性がベールをする中近東ではもっと抵抗感がないか、あるいは逆に、顔を隠すのは男らしくないとして抵抗が強くなるか、どっちでしょうね。
投稿: tak | 2009年5月 9日 15:52