選挙では浮動票は邪魔もの扱い
私の公職選挙法を批判した記事に関連して、hottokei さんが、ご自身のブログ「繰り言」で興味深いことを書いておられる(参照)。
「公職選挙法における選挙運動関係規定は低投票率を実現するための法律による環境設定、と考えれば、理解しやすい」というのである。なるほど、浮動票って邪魔者扱いなのね。
hottokei さんは、その理由を以下のように書いておられる。
つまるところ、日本における選挙運動とは組織票を積み上げる方式で行われており、その立場から見れば、組織に属していない浮動票、無党派層を掘り起されるのは、迷惑この上ない。政治に対する世論喚起が、選挙運動によって行われることは、奨励されるものではなく、むしろ恐れられている。 「投票率は低い方がいい」という発言が、他ならぬ与党から出ることは、一度や二度ではない。
なるほど。確かに言えてる。だから、総務省は選挙の度におざなりのポスターなどで「選挙に行きましょう」みたいな呼びかけを行なっているが、投票率アップのための実効的な方策を提案・実施した試しがない。
投票率は低すぎるのも問題だが、政権や役所にとっては、高すぎるのも迷惑のようなのだ。せいぜい 50%内外が理想的というところなのだろう。そのくらいだと、組織票を押さえることで、票読みが確実になる。それ以上の要素を加えて、選挙を面倒くさいものにしたくない。投票率が高すぎて浮動票が多いと、票の読みようがなくなるから歓迎されない。
組織票を確保した候補者は、その組織に属する人の住む地域に、選挙カーで「ご挨拶」に出向く。そうでないと「挨拶がない」とか「俺んとこの地域が無視されたとか言って、ヘソを曲げるやつが出てくる。ヘソを曲げられないために、選挙カーで慇懃にご挨拶廻りをする。
どうせご挨拶廻りなのだから、政策なんか訴えても仕方がない。「ほら、私ですよ。おたくんとこにも、ちゃんとご挨拶に廻らしていただいてますよ」というアリバイ作りなので、連呼さえしておけばいい。
どうせ組織票ベースの票固めは既に終わっているのだから、後は、票を入れてくれるべき人が、ちゃんと入れてくれさえすればいい。想定していなかった浮動票が大規模に動いたりすると、組織票の有効性がなくなるから、なるべくならば、投票日は家でテレビでもみていてもらいたい。
既得権がしっかりとある組織に属したり近かったりする有権者達は、選挙カーの連呼にあまり不快感を示さない。逆に、「おぉ、○○候補が俺んとこに挨拶に来てくれとる」ってなもんで、単純素朴にも、なかなかいい気持ちにさせてもらったりしている。
ちょっと人のいい人だと、わざわざ表に出て手を振ったり、駆け寄って握手を求めたりなんかする。これをされると、候補者の方でもほだされてしまって、「選挙カーで廻るのは、有権者との触れ合いの場」なんて思いこんだりする。お互いに誤解しまくってるわけだ。
一部の守旧派への義理立てのために、周囲の住民は騒音としか思えない連呼で迷惑を被っているのである。都議選はもうすぐだし、総選挙もその後ぐらいにやってくる。ただでさえ暑い夏に、うっとうしいことである。
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コメント
現在、県知事選挙の真っ最中です。
選挙カーはあまり来ませんが、候補者を見ただけでうんざりです。
与党は、女性候補を立てています。
「産む機械発言」のY氏の地元なので、女性候補で女性票を何とかゲットしたいのかもしれませんが、あざとい。あざとすぎる!
そこまで女性をバカにしてるのか~と思います。
そして例のY氏の広報ポスターときたら、あの二ヤケ顔の隣にJ党の誇る「ママさん議員」の皆様のお写真を並べて「ワタクシは女性を大事にいたしますですよ~」と言わんばかりで・・・
(しかも、何パターンもある凝りっぷり)
正直、ヘドが出そうです。
対抗候補に投票したいと思っていますが、野党側は候補を一本化できなかったらしいです。
何やってんだよ~って感じです。はぁ~・・・
投稿: karin | 2009年6月29日 16:01
karin さん:
>そして例のY氏の広報ポスターときたら、あの二ヤケ顔の隣にJ党の誇る「ママさん議員」の皆様のお写真を並べて「ワタクシは女性を大事にいたしますですよ~」と言わんばかりで・・・
>(しかも、何パターンもある凝りっぷり)
そりゃまた、ずいぶんなあざとさですね ^^;)
例の 「立木問題」 というのも、わけのわからないお話で、ずいぶんしらけますね。
空港自体が、茨城空港と同じで、本当に必要とは思われないし。
投稿: tak | 2009年6月29日 22:00
はじめまして!
弁護士のまつもとと申します。
背景等まで詳しく掘り下げた濃い内容のブログで大変興味深く拝見させていただきました。
私も公職選挙法についてブログを書いているので、よかったら遊びに来てください
投稿: ミキベン | 2009年8月 7日 16:10
ミキベン さん:
ブログ、拝見しました。
「馬場君」 のあまりの無防備さには、かわいらしささえ感じてしまいましたが、
ちょっと ??? になって改めて調べてみたら、
馬場君の大好きな椎名先生の立候補予定の 「東京26区」 って、一体・・・??
フィクションとしては、とてもおもしろいです。
投稿: tak | 2009年8月 7日 20:29